中長期的に物やサービスが売れる空気をつくる"戦略PR"とは?
PRとはPublic Relations(パブリックリレーションズ)の略語で、「企業が、ステークホルダー(顧客・従業員・株主・取引先・コミュニティ・報道関係者など)と、良好な関係を築くための活動および考え方」を意味します。プレスリリースやパブリシティに留まらず、広告やSNS・セールスプロモーション・企業HPなど・ステークホルダーに向けた、全てのコミュニケーションがPR活動となります。
昨今は、移り変わりが早くなり、トレンドや社会文脈は目まぐるしく変わっています。また、価値観も多様化する中で、企業は存在意義(パーパス)が問われるようになってきました。このような不確実性の高い時代においては、「従来のメディアに取り上げてもらえた、ラッキー」といったお祈りのようなPR広告をうつだけではメッセージが響かなくなってきております。企業が社会と正しくコミュニケーションをとるためのには、PRにおいてもしっかりとした戦略やストーリーが必要です。
戦略PRとは
戦略PRとは「物やサービスそのものを直接的にPRするのではなく、まずは市場に対して関連のある働きかけを行うことで、物やサービスが売れる空気、あるいは話題を作り出すこと」で、内容に"売れる空気づくり"を企画に盛り込むことが重要です。戦略PRを成功させることが出来れば、短期的には物やサービスが売れなくても、長期的にみれば物やサービスを効率良く売ることができます。
戦略PRを成功させるために必要なこと
戦略PRを成功させるためには、下記2点を押さえる必要があります。
1. 話題になる仕掛けづくり
2. 露出を前提とした座組やクチコミの場をつくる
「話題になる仕掛け=パブリシティの話題(ネタ)」をどうやって拡散させるかというのは、人にシェアしてもらえる露出を前提とした企画や、SNSを中心としたクチコミの場(CtoC)にどうやってつなげるかが鍵です。どうすれば拡散してもらえるかをストーリーとして考えることが必要です。SNS等でファンを募り、ファンミーティングを行い、クチコミの場を用意し、自由に意見させることも1つの手段です。
実際に具体的な企業の成功事例として、2つご紹介します。
<事例1.マクドナルド社 ピタマック>
2006年に35周年記念で、「ピタマック タンドリーチキントマト」「ピタマック タンドリーチキン」を発表。商品としては油分が少なく、もちもちとした食感のピタパンに肉・野菜などバリエーションあふれる具材をぎっしり詰め込んだ、新しいカタチのバーガーで、形状が通常のハンバーガーと変わっていましたが、話題(ネタ)としては強みに欠けていました。また、新商品・期間限定商品ゆえ、広告費をそこまで出せないため、商品・プロダクトに+αを行い認知を増やす取り組みを行われました。デリカー1台を作り、プレ販売し、店舗販売より前に食べれる場をつくり、認知を増やす取り組みを行いました。その結果、地方のTV局や生番組に取り上げられ、ブログでのニュース発信もヤフーのネットニュースに取り上げられました。手間はかかるが、費用はそこまでかけずに、うまくPRされた事例です。
※プレスリリース https://www.mcd-holdings.co.jp/news/2006/release-060720.html
<事例2.エクスコムグローバル イモトのWi-Fi>
「イモトのWi-Fi」ブランド認知向上のための20周年記念企画として、"究極アポなし旅"という企画を実施。人気バラエティ番組だった電波少年をプロデュースした伝説のプロデューサーと行く海外企画で、企画の費用としては2名の費用と製作費という比較的低コストで実施できたキャンペーンでしたが、ネット・メディアともに大きく取り上げられました。キャンペーンの裏メッセージとして、"海外でイモトのWi-Fiあって便利"という思いが込めていました。
※公式サイト https://www.globaldata.jp/Tproducer_last/
この2つの事例のように費用をかけずとも知恵を出し、優れたストーリー設定が出来ればPRを成功させることができる好事例でした。
数値を忘れず、PDCAを回す仕組みをつくる
戦略PRを成功させるために、企画ができ、社内承諾も取り、実際進めていく際ですが、KPIを忘れず設定しましょう。WEBマーケティングの世界では一般的ですが、広報・広告の分野ではこの観点が抜けていることが多いです。効果測定が難しい分野ですが、自分たちの目的や目標に対して測定する数字設定を設けるようにしていきましょう。
例:問合せ件数、成約率、WEBへの流入数、現状調査アンケートの結果など
また、同時にPRの実施前・実施後の成果がわかるようにしておきましょう。「何のためのPR施策なのか」「どの数字を動かすための施策なのか」を常に考えるようにしてください。
メディア向けの情報は"大きい物語を持ったメッセージ"が好まれて、記憶に残る
戦略PRを企画し、メディアを巻き込みたいときは、"大きな物語を持ったメッセージ"を持たせることが重要です。"大きな物語を持ったメッセージ"は、例えば下記のような文言が入ったものです。
・世界初・日本一・全国的・統計的・成長物語・視覚的・歴史的・異色コラボ・サプライズ・憧れ・連続性・反復性・エンタメ性・社会性・共感性
わかりやすい事例が甲子園、大河ドラマ、オリコンランキング、紅白です。この事例は上記メッセージが多く含まれています。上記メッセージがなぜ共感されるか、それは自分ゴト化しやすいためです。自分ゴト化されたものはクチコミで広げてもらいやすいです。
ターゲットのペルソナ設定を忘れずに
PRしていく商品の状況、ターゲットにしたい世代・性別・エリアの相関を見ながら、適切なペルソナを決めていきましょう。ターゲットに適したPR手法を使わないと、失敗に終わります。ペルソナに対して、最適な情報を最適な方法で発信を行うためのストーリーを組んでPR手法に落とし込みましょう。昔のようなマスメディア1強ではなくなっており、マスメディアは手段の1つでしかないので、自社・商品にあったリーチを考えるようにしていくことが成功の近道です。
PRのご相談が急増!採用PRについて
戦略PRでターゲットやペルソナ像を決めてPR手法を検討し打ち出すことが重要と書きましたが、PRで最近ご相談が増えている「採用PR」も同様の発想が有効です。
コロナも落ち着き、採用市場も戻りつつある中、大手企業や都心部の企業に人材をとられて...というお話が非常に増加しております。特に地方の中小企業からよく伺います。そこでも戦略PRの思考方法は重要です。まず自社が行う採用戦略は、マスマーケティング型かピンポイント型かを検討いただきたいです。
・採用マーケティング:OO大学の▲▲ゼミ生を1名とる
・採用PR:広く学生にブランディング
会社の採用状況・採用希望数・母集団数・内定辞退率等を踏まえながら、どちらを重視するかを見定めます。そのうえで、採用ブランディングやコーポレートブランディング、インターンの実施、合同説明会への参加、高校・大学挨拶周りの実施を費用・コストと時期、状況を見定めて決めていくようにしましょう。
"戦略PR"が成功するための空気づくりを早めるコツ
戦略RPの成功を早めるには、たくさんの人へ認知を広めることが一番であるため、TVドラマの新番組番宣、期間限定品のようなお金をかけて、瞬間風速的・物理的なメディア露出をとるのが本来は一番早いです。大手企業などの広告費を投下できる企業は、その手段も有効ですが、そのようなことが出来る会社は一握りです。大きな費用をかける代わりに、入念に計画を立てたPRを考え、ブランディング同様、時間をかけて育てていく忍耐が必要です。遠回りではありますが、確実な方法です。
広島の三島食品という会社をご存じでしょうか。どちらかいうと"ゆかり"、"ゆかりペン"という商品名のほうで知っている方も多いふりかけメーカーです。こちらの広報担当者の方にお聞きした話ですが、広報には出来る限りコストをかけずに行っているそうです。ただし、皆様もご存じの通り、非常に認知されています。その理由は、他社のマネをせず、いかにニュースに取り上げられてSNS上でのクチコミを誘発出来るかを考えて企画やPRを実施していることにあります。行った事例を2点ご紹介します。
<事例1. 24時間緊急キャンペーン>
公募から当選結果まで24時間内に行われたキャンペーンを実施。短期間でキャンペーンに参加していることを忘れないで参加者の印象に残ったキャンペーンです。
<事例2. 敬老の日キャンペーン>
SNSを使い写真を公募し、当選者にはオリジナルパーケッジゆかりをプレゼント。普段捨てるパッケージが家族の写真の入った宝物になり、参加者が非常に満足し、SNSでもバズったキャンペーンです。
※三島食品様 広報PRに関する講演https://review.tanabeconsulting.co.jp/studygroupreport/46601/
どちらの企画も非常に好評のキャンペーンで、非常に面白いキャンペーンだと思います。このようにプロジェクトメンバーで知恵を出し合うことで、他社にないキャンペーンやバズる企画を生み出せます。「三人寄れば文殊の知恵」と言うことわざがありますが、知恵をたくさん持ちより、時間をかければ至高のキャンペーンやPRはどの会社でも実施できます。
皆様のPR企画に幸あれ!!