企業が商品やサービス、コーポレート全体をブランディングしていくにあたり、必要不可欠である「ブランドコンセプト」。ブランドコンセプトの作り方に課題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。今更聞けないブランドコンセプトの重要性や作り方のポイントをあらためて本コラムで考えていきます。
ブランドコンセプトとは、ブランドが持つ価値や企業が果たすべき役割を言語化したもの
ブランドコンセプトとは、顧客やブランドターゲットに対してどのような価値・ベネフィットを提供するかを明確に示したものであり、「我々は○○なブランドで、○○なベネフィットを提供します!」と他社と差別化し価値を表現したものになります。伝えたいターゲットに対し、ブランドが与える価値(ブランドベネフィット)をわかりやすく言語化したものとも言えます。ブランドコンセプトが明確になれば、顧客やターゲットに対しブランドの価値を知ってもらい、長期的に愛されるブランドへ成長させることができます。
ブランドコンセプト開発にあたるステップ
顧客やブランドターゲットに対し魅力的かつ、そのターゲットに対してのブランドベネフィットや自社・ブランドの存在意義を明確にし、価値創造ストーリーを組み上げていくことが重要になります。組み上げるステップは大きく5つのステップで考えられます。
1.現状認識・市場、競合分析
2.自社ブランド価値の棚卸と強みの発見(専門価値・人材価値・社会価値)
3.ブランドベネフィットの整理
4.ブランドターゲットの設定
5.ブランドコンセプトの策定、言語化
各ステップについて見ていきましょう。
ステップ①:現状認識・市場、競合分析
まずは、現状認識として現状の把握と市場・競合分析を行います。市場において自社ブランドが目指すべきポジションを定めるうえで、現在地点の確認をすることも大切です。例えば、ブランドリサーチとして自社・取引先・一般消費者などに対するブランドイメージ調査を行うことや、実際にインタビューを入れるなど、定量・定性調査を入れながら、ベンチマークすべき競合他社についても洗い出し、比較する要素を抽出してポジショニングマップを作成することで、自社が本当に目指すべきポジションを確認することも重要です。
ステップ②:自社ブランド価値の棚卸と強みの発見(専門価値・人材価値・社会価値)
ブランドの目指すべき方向を明確にするために、3つの観点から自社が強みを発揮できるブランドの素材を発見していくことをお勧めします。
1.専門価値...商品・技術・サービスにおける価値
2.人材価値...社員や社風の良さで信頼を得る価値
3.社会価値...世の中の役に立つことで選ばれる価値
3つの価値にまずは分類してブランド価値の棚卸をし、優先的に磨いていくブランド価値を見つけていきます。その中で競合他社との比較をしながら、コアコンピタンス(他社に真似できない自社ブランドの付加価値を生み出す格となる強み)を見出していきます。手段の一つとしてバリューチェーン(※企業における各事業活動を価値創造のための一連の流れとして捉える考え方。原材料調達→製造→流通→販売→アフターサービス)の中で整理することも有効です。それぞれの事業活動の中で得られる独自性のある役割や機能から競争優位性を見つけ出すことも重要です。
ステップ③:ブランドベネフィットの整理
前述までの整理、分析をもとにしながら、自社のブランド価値やコアコンピタンスを踏まえ、独自性のある価値として顧客やターゲットに対して約束できる価値であるかどうかを見極め、ブランドベネフィットの整理をしていきます。「自社だけが提供できる価値」を発見し、シンプルに表現するための姿がこの段階で少しずつ見えてくると、ブランドコンセプトに落とし込みしやすくなります。
ステップ④:ブランドターゲットの設定
ブランドの価値を棚卸し、コアコンピタンスの発見と、顧客側の視点に立った時のブランドベネフィットを整理したあとに、ターゲット設定をしていきます。自社のブランド価値を届けたい相手、自社の商品やサービス、あるいはコーポレートブランドの考え方そのものに共感をし、価値を感じてもらえる顧客やコアターゲットはどこか、あらためて検討をしていきます。検討項目としては、以下のような属性をあげていき、集約をすることで向き合うべきターゲット像を明確にしていきます。BtoB企業のターゲットの場合は、
・業界、業種
・企業規模
・企業名
・役職や予算、決定権限者etc.
の属性が考えられます。BtoCでターゲットが消費者にあたる場合は、
・年齢
・性別
・居住地
・職業
・家族構成
・年収
・価値観
・ライフスタイル
・趣味、嗜好etc.
などが考えられます。ここでポイントなのが、現実的な目線でターゲットを設定できているか、「絵にかいた餅」にならないよう検証しながら定めていくことが重要です。
ステップ⑤:ブランドコンセプト策定、言語化
今までのステップの中で定めてきたブランドの価値や強み、ベネフィットやターゲット像などの独自性をもとに、ブランドコンセプトに落とし込んでいきます。この一連のステップで整理をした内容をどうストーリーにまとめていくかが重要ですので、洗練された格好良いキャッチコピーにこだわる必要もありません。定めたターゲットに対し「どのような価値のあるブランドで、どのような価値を約束し提供してくれるか、何を実現してくれるか」を正確に伝え、伝わりきることが重要となります。スターバックスコーヒーの「サードプレイス(第3の場所)」や、ダイソンの「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」、ユニクロの「LifeWear(ライフウェア)」など、できる限りわかりやすく、一言でシンプルにつくることを心掛けていきましょう。記憶に残りやすく、インパクトがあるものであれば、なお効果的になります。
独自性があり、かつ魅力的なブランドコンセプトを作るためには
前述の通り、どんなに洗練されて格好良いコンセプトを作ったとしても、ブランド価値やターゲットが感じるブランドベネフィットと多少でもブレが生じてしまうなど、ターゲットに対しまっすぐに伝わらなければ意味のないものとなります。また、競合との差別化がなされており、埋もれてしまわないかも重要です。
1.独自性かつ、シンプルでわかりやすい表現を追求していくこと
2.自社満足のブランド価値ではなく、顧客の潜在ニーズを救い上げたブランドベネフィットであること
上記をポイントにぜひ自社に最適なブランドコンセプトを策定いただき、そこを軸にアウターブランディング、インナーブランディングに活用していきましょう。