COLUMN

2023.09.13

事業戦略を推進する組織デザイン~賃金を上げ、生産性を高める組織とは~

本コラムはタナベコンサルティングのTCG REVIEWにて掲載している記事を転載したものです。

2023年春、多くの企業で賃上げが実施されました。労働力人口が減少する中、企業は「賃上げ=コスト増」ではなく、人材・組織への戦略的な投資と捉える必要があります。こうした経営環境を踏まえ、タナベコンサルティングは2023年5月25日、「組織構造変革フォーラム」を開催しました。
事業戦略を推進するための組織再編、間接部門のミドルオフィス化、無形資産への投資、コーポレート機能の企画化など、組織構造を変革することで生産性を高める方法について、特別ゲスト2名およびタナベコンサルティングのコンサルタント3名による講演をリアルタイムで配信しました。

※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。

事業戦略を推進する組織デザイン~賃金を上げ、生産性を高める組織とは~

生産性を高める4つのアプローチ

タナベコンサルティングが2022年12月に公表した企業経営者へのアンケート結果によると、「中期経営計画や長期ビジョンを定めているが推進できていない」企業は37.2%に上りました。また、未来に取り組むべき経営テーマとして最も多く挙がったのは「戦略的組織再編」(33.8%)でした。

つまり、4割弱の企業がビジョン・中計を構築できておらず、3割以上の企業が戦略に合わせて組織を変えられていないということでした。理由は人材不足やノウハウ不足などですが、企業は限られた条件の中で成長しなければなりません。

厳しい条件の中で成長していくには、生産性の向上が欠かせません。しかし、新しい戦略に基づく新しい役割を既存の組織に割り当てるだけでは、現場の業務にゆがみが生じ、生産性が低下してしまうことも少なくありませn。そこで本フォーラムでは、事業戦略を推進し、生産性を高めて成果を出す「組織構造変革」の進め方を解説します。

組織構造を変革する際のアプローチ方法は4つ(【図表1】)。

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図表1

組織構造変革の4つのアプローチ
出所:タナベコンサルティングにて作成

①制度の見直し
②業務の見直し
③マネジメントの見直し
④組織戦略の見直し

です。これらの実行が、事業戦略の推進、バリューチェーンの強化、生産性の向上につながっていきます。

組織構造の変革による生産性アップのポイント

(1)組織形態と役割分担のバランスを考える

組織の基本形態として、「ファンクション(機能別)組織」「ビジネスユニット(事業部制)組織」「マトリクス組織」があります。また、水平分業の基本パターンとして「フルプロセス分業」「パートプロセス分業」があります。(【図表2】)

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図表2

水平分業の基本パターン
出所:タナベコンサルティングにて作成

どの組織形態と分業の仕方が良いかは各社異なりますが、分業の仕方は組織の生産性を左右する大きな要素です。そこで、自社に適した「人的構成比目標」(【図表3】)を設定し、フェーズをいくつかに分けて少しずつ組織を変えていくことをお勧めします。

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図表3

人的構成比目標の例
出所:タナベコンサルティングにて作成

(2)間接部門のミドルオフィス化で直接人員比率を上げる

1人当たりの付加価値額の目標を決めることも、生産性の向上に役立ちます(【図表4】)。

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図表4

生産性基準の現状と目標設定
出所:タナベコンサルティングにて作成

ある商社の生産性改善の事例を紹介します。この商社では、直接人員比率が87.0%、労働分配率が45.8%でした。
同社の社長は「社員の個人年収を500万円にする」ことを目標に掲げ、直接人員比率90.0%、労働分配率45.0%の達成を目指すことにしました。
つまり、1人当たりに必要な限界利益額は1234万6000円(現状の11.4%アップ)となります。(【図表5】)

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図表5

生産性改善の目標設定の例
出所:タナベコンサルティングにて作成

この目標達成のため、同社は直接人員数を増やすだけでなく、間接部門の「ミドルオフィス化」(【図表6】)で直接人員比率を高めました。

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図表6

ミドル機能による生産性向上
出所:タナベコンサルティングにて作成

人事部、経理部、総務部、営業事務といった従来の間接部門に「企画」という新しい役割を付加し、直接部門のサポート機能を担ってもらうことが、ミドルオフィス化の成功の秘訣です。
そのためには、ミドルオフィスのメンバーがフロント(直接部門)や経営陣の業務と価値のポイントを理解すること、ミドルオフィスメンバーとの情報共有をリアルタイムで行うこと、フロント業務と戦略担当のタスクを分解してミドルオフィスの業務範囲を明確にすることが必要となります。

経営者・リーダーの皆さんには、自社の事業戦略推進に最適な組織構造の実現によって、社員一人一人の生産性を高めていただきたいと思います。

オンデマンド配信を実施中です。講演の詳細はこちらからご視聴いただけます。

組織構造変革フォーラム(オンデマンド配信)
https://www.tanabeconsulting.co.jp/vision/webinar/detail14.html

著者

タナベコンサルティング
執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部

土井 大輔

大手システム機器商社を経て当社に入社。2016年より“物流が世の中を支えている”と物流経営研究会を立ち上げ、物流業のサステナブルモデルを開発。”荷主側“の経営課題を把握した上で物流会社の事業戦略構築を得意とする。また、製造・卸売・小売・サービス・建設業の経営支援も数多く手掛け、熱意あふれるクライアントファーストの姿勢でのコンサルティング展開で多くのファンを持つ。

土井 大輔

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