人事コラム
人的資本経営

人的資本経営におけるダイバーシティの重要性とは

ダイバーシティが企業の人的資本を強化し、企業価値向上の要となる

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人的資本経営におけるダイバーシティの重要性とは

ビジョンと整合性のあるダイバーシティ×人的資本を推進

人的資本経営とは

人的資本経営とは

人的資本が注目される昨今、経営における人材を「人件費(コスト)」と捉えるのではなく、投資により生産性を高められる「資本」として考える動きが活発化している。経済産業省が公表している定義によると、人的資本経営とは『人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方』とある。つまり、人的資本経営の本質は「人材価値向上による企業価値を高める」ということだ。
ただし人材が重要であることの認識は過去もあった。その一例として現パナソニックグループを築いた松下幸之助が「事業は人なり」という言葉を残したことは有名な話である。とはいえ、過去を振り返るとこれまでの日本企業は設備投資を含む事業投資には積極的であったが、人材投資は事業投資の結果として生産性が向上した後に行われるものとしての認識が強かった。ゆえに、実際には人材投資は二の次という企業が多かったのが事実である。そして今過去の考え方が時代の変化と共に大きく変わりつつある。

ダイバーシティ経営とは

人的資本と同じくして「ダイバーシティ」への関心度が高まっている。経済産業省によると、ダイバーシティ経営とは「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義づけられている。最近では、単なるダイバーシティに加えて、インクルージョン・エクイティ・ビロンギングを加えた「DEI&B」を目指す姿として掲げる企業も増えてきた。ただしグローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2022によれば、ジェンダー・ギャップ指数ランキングで日本は146か国中116位、主要先進7か国で比較すると最下位という結果である。ダイバーシティの観点で日本は後進国と言わざるおえないが、人的資本経営の浸透と共に改善へと着手する企業が増えている。

ビジネス環境におけるダイバーシティの重要性と役割

ビジネス環境におけるダイバーシティの重要性と役割

ビジネス環境が劇的に変化している。新たなビジネスの活路を求めて多くの企業がグローバル化しており、IT技術の発展がその流れを加速させた。ヒト・モノ・カネ・情報の流通スピードはグローバル単位で増しており、比例して顧客ニーズもグローバル単位で多様化している。企業は様々なニーズへの対応が迫られると共に、ビジネススピードの加速化で一度対応したニーズから新たな別のニーズへの対応も求められる。多様なニーズに応えながら、常にイノベーションを起こすことが期待されているのが現在のビジネス環境と言える。
そこで重要になるのが「ダイバーシティ」である。
多様なニーズに応えながらイノベーションを起こすには、同質的な属性や志向を持ち合わせた人材のみが集まる組織では実現できない。例えば、旧来の日本企業を象徴した「男性・大卒・終身雇用」のような同質化した組織だと同じ考え方から脱却しきれず、新たな発想・アイディアが創造しにくい傾向にある。一方で、ダイバーシティとは「異質性の受容」であるため、個々の考えをぶつけ合い、その過程でこれまで想像しえなかった新たなアイディアが生まれる。
このように経営環境が変わり、イノベーションが求められる現在のビジネス環境下で変化に対応していくためにはダイバーシティな組織や経営手法の導入が必要不可欠となるのである。

ダイバーシティが人的資本を強化する理由

イノベーションを起こし、ダイバーシティ溢れる組織へ変革していくためには、必然と人的資本を強化していくこととなる。観点は三つある。

(1)人材採用に伴う人的資本

多様性かつイノベーションある組織とするには、これまでとは異なる人材へのアプローチが必要になる。新卒採用のみを行っている企業は中途採用であったり、海外人材の採用へもチャレンジすることになるだろう。そうすると採用チャネルの多角化が進み、採用予算も引き上げの方向で見直さなければならない。採用に関わる人的資本が強化されていく。

(2)人材処遇に伴う人的資本

多様性かつイノベーションある組織とするには、旧来の日本型組織の特徴である「年功序列的処遇」では対応ができない。長期雇用という時間軸ではなく、変化に対応しながら成果を残した人材への処遇を厚くしなければ人材活躍が進まない。金銭的、非金銭的の両面での処遇を抜本的に見直し、個々の成果、能力に見合った処遇システムが求められる。そのような処遇システムが、処遇に関する人的資本が強化される。

(3)人材開発に伴う人的資本

多様性かつイノベーションある組織を構成する人材を開発・育成することも企業の人的資本を強化するには重要だ。これまで通用してきた知識や技術・スキルは時代の変化と共に陳腐化されていくため、常に新たなトレンドを吸収していかなければならない。それらの仕組みとして、自己啓発支援やリスキリングを含めた社員教育の充実化など教育投資を強化することが求められる。

以上のようにダイバーシティ推進と人的資本の強化はセットであり、「採用・処遇・開発」の観点での人材投資が進んでいくことが望ましい。

ダイバーシティ推進のための戦略

最後に押さえておくべき観点がある。
そればダイバーシティも人的資本も経営機能の一つに過ぎないということである。経営機能の導入や推進自体が目的なのではなく、企業が目指すビジョンや中期経営計画の達成のために推進されていくべきである。つまり、ダイバーシティ推進のためにはまず自社のビジョンを描き、それらの実現のためにダイバーシティや人的資本の推進を位置付けることが重要である。
戦略整合性を取りながら、ダイバーシティ×人的資本溢れる組織を構築していただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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