親族内承継における後継者に必要な能力とは?
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事業承継を取り巻く環境と実態
企業にとって事業承継は大きな変革を実行する機会であり、会社を成長させるチャンスです。一方、事業承継は何度も経験できないものであり、危機に陥れるリスクタイミングでもあります。
事業承継を成功させるためには、政治的・経済的・社会的・技術的な経営を取り巻く環境変化に適応する後継経営者・経営体制をつくることが必要です。
その中でも、事業承継を取り巻く環境を見てみると、様々な実態が見えてきます。
【事業承継を取り巻く環境】
1.社長の平均年齢は60.4歳。この30年で6歳上昇。
2.社長の引退年齢は68.8歳。新社長の平均年齢は51.5歳。
3.50歳以上の社長は全体の80.2%を占め、この割合は5年前より3ポイント上昇している。
4.後継経営者難による倒産は、過去最高の487件(2022年度)。
5.事業承継の計画があり、進めている企業は 18.7%。事業承継の計画はあるが、進めていない企業は 21.1%。
事業承継の計画がない企業は 34.8%。
6.事業承継を終えた・進めている企業の、「苦労したこと」の上位は:①後継経営者の育成 ②相続税・贈与税などの税金対策 ③自社株などの資産の取り扱い ④後継経営者の決定 ⑤後継経営者への権限の委譲
後継経営者の決定が遅れれば、当然、育成も遅れます。
事業承継の成功は、後継経営者を計画的に育成していけるかにかかっていると言っても過言ではありません。
【事業承継を取り巻く環境の出典】
出典:全国「社長年齢」分析調査(2022年) 調査対象約147万社 帝国データバンク
出典:全国企業倒産集計2022年度報 別紙号外レポート:「後継経営者難倒産」(2022年度) 帝国データバンク
出典:事業承継に関する企業の意識調査(2020年) 調査対象23,689社 帝国データバンク
後継経営者として必要な現状認識
親族内で事業承継を行うにあたり、後継経営者が新入社員として承継予定の会社へ入社するケースは珍しく、他社で経験を積んでから入社するケースは多いです。
将来的には他社で積んできた経験た知見を活かして後継経営者として成長することも重要なことですが、まずは後継経営者自身が事業承継に向けて会社の現状を正しく把握するこが重要です。
その後継経営者自身が押さえるべき現状認識のポイントは7点です。
1.経営理念・目指すべき姿・行動規範
会社はなぜ、そのビジネスを行っているのか、創業の原点は何か?ビジョンは何を目指すのか、ミッションが実現された先に、会社が目指すべき理想の姿とはどういう姿か?ミッションやビジョンをどのように目指すのか、会社が大切にする価値観や行動規範は何か?を改めて認識することです。
2.会社の強み・弱みを知る
他社より優れた自社の「強み」は何か?自社が考えている強みは本当に「強み」なのか?常に問いかけ、強みを持ち続けることが必要です。
3.会社の歴史を知る
企業の成長段階が変われば価値判断の基準が変わります。創業期には創業期の、伸び盛りの成長期には成長期の、事業が安定する成熟期には成熟期のやり方があります。成長段階でどのような判断をしてきたのか、また、その判断基準は何だったのかを知ることが重要です。
4.人材・組織を知る
組織は人でできています。人材構成や組織風土はどうなのか、社員間のコミュニケーション、協働意欲(貢献意欲)、共通目的が充分かどうかを押さえる必要があります。
5.取引先を知る
品質、価格、対応力(納期等)、商品力が良い仕入先や外注先、相互にメリットがあるビジネスパートナーを有しているかを正しく押さえることが今後の事業競争力を高めることにも繋がります。
6.お客様を知る
特に、主要なお客様を知ることが重要です。ここで言う主要なお客様とは、自社の売上・利益に対し貢献度が高い顧客を指します。
7.財務内容を知る
B/S、P/L、CFから、財務内容を"量(金額)"と"質(構成比、生産性、経営指標等)"で自社を分析し、伸ばすべき点・改善すべき点を明らかにします。
タナベコンサルティングにて作成
後継経営者に必要な「5つの素養・能力」
「事業承継」は、先述の通り、いい意味でも悪い意味でも変化のタイミングです。別の捉え方をするならば、このタイミングで変革ができない会社は、以後もなかなか成長できないとも言えます。事業承継を成功させ、企業を持続的に成長させていくためにも、後継経営者自身が「真の後継経営者」に成長していくことが必要であり、そのためにも、以下の素養と能力を高めていく必要があります。
1.経営哲学(経営理念とパーパスを磨く)
後継経営者は「志」を継ぐ人です。経営理念や創業の精神、現社長の考えを吸収し、そのうえで自身が「社長になって何をやりたいのか」という志を明確にしなければなりません。単に経営を勉強したり、ビジネスセンスを磨くだけでは手に入らない志に向き合うことで成長します。
2.事業センスの発揮(会社の真の強みの理解とビジョンデザイン)
後継経営者は未来を創る人です。未来を創るために求められるのが「事業センス」ですが、一朝一夕では身につかないものであり、最新事例・異業種・異業界のビジネスモデルを研究しながら事業センスを磨いていくことが必要です。
3.人を動かすコミュニケーション力(感謝と報恩の精神と長所連結主義)
後継経営者に卓越した能力があろうと、人をまとめ動かすことができなければ会社は成長できません。後継経営者は「すでに作られた組織」の中で上に立たなければならないため社員への共感、働きがいを生む出す、トップとしてのコミュニケーション能力を高めていく必要があります。
4.財務力(キャッシュフロー・投資判断・中期経営計画への展開)
会社はつぶれるようにできています。会社の歴史は会社の存続を約束しません。また、会社がつぶれるのは赤字ではなく、キャッシュフロー・資金繰りによってです。そして、投資判断に対する借入金であり、その回収です。会社存続は経営者の財務力にかかっていっているといっても過言ではなく、後継経営者が学び・身に付けるべき能力です。
5.自己革新力(克己心と主体性の錬磨)
後継経営者は絶えず成長していく人です。会社は経営者の器以上に大きくなりません。だからこそ自分自身を革新し続け、実行することが重要となります。高い志を持ち、会社を存続させる経営技術を学ぶことで経営者としての「実行力」にも繋がります。
最後に
「後継者不足の時代」において、親族内承継における後継者候補は貴重な存在です。
5年・10年先の承継を見据え、いまから、事業承継を成功させるための計画的な後継者の育成・準備を進めていきましょう。
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