COLUMN

2024.04.25

「会社はつぶれるようにできている」…それでも生き残る企業、そのまま終わる企業の“分岐点”【経営コンサルが解説】

  • 事業承継

「会社はつぶれるようにできている」...それでも生き残る企業、そのまま終わる企業の

本コラムは『THE GOLD ONLINE』の寄稿原稿です。

企業経営の本質は「経営を未来に繋ぐための取り組み」

「会社はつぶれるようにできている」。この命題に、筆者らは経営者とともに長年向き合ってきた。

現在、日本国内には約367万社の企業があるといわれている。その中で、100年企業の割合は1.2%、200年企業は0.04%である(タナベコンサルティング調べ)。企業存続がいかに難しいか、この数字が物語っている。

では、なぜ企業存続が難しいのだろうか。一般的に、企業における事業の寿命は30年と言われてきた。いわゆる「事業30年説」である。そして、現在では事業そのもののライフサイクルがさらに短くなっていると言われており、少なくとも100年企業になるためには3回以上の事業ポートフォリオ転換に成功しなければならない。

企業が持続的に成長発展するためには、①新たな成長エンジンとなる事業と、②それを実行する人材が不可欠である。この2つの要素を承継のタイミングでしっかりと具備することこそが、企業の承継の難しさと言える。事業の寿命が企業の寿命になってはいけない。そして、経営者の寿命が企業の寿命になってはいけないのである。

現実、昨今の後継者不足で、日本企業の125万社は次世代へ経営を繋ぐストーリーが描けていないと言われている。すべての企業において選択できる道は、「存続コース」、「廃業コース」「売却コース」「倒産コース」の4つしかない。当然、経営者が選択する道は「存続コース」である。我々が目指す経営の承継とは、「ファーストコールカンパニー 100年先も一番に選ばれる会社」の実現に向けて未来へ経営を繋いでいくことである。その観点から言えば、「売却コース」を選択して企業という公器を次の世代に残していくことも一つの選択肢になる。結果的には企業や従業員の雇用を守ることになり、社会貢献に繋がる選択であると言える。

このことから、企業経営の本質は、「経営を未来へ繋ぐための取り組み」と捉えることができるのではないだろうか?

生き残るには「企業変革」が必要...好機となる3つのタイミング

今、「次代に会社をどのようにして残していくか」を真剣に考えている経営者の皆様へお伝えしたい。会社という公器を、価値を高めながら次代に引き継いでいくことこそが何よりの社会貢献だということである。

そのためには、企業を存続させるべく、激しい環境変化への対応が不可欠である。つまり、変化に合わせて、企業自身が変革しなければ生き残ることはできない。

企業が自ら変わるチャンスは3つある。1つは赤字のときで、利益が出ていると思い切った変革は難しい。赤字のときだからこそ、企業を変革する大胆な施策を決断、実行する覚悟が生まれ、企業を変革することができる。

2つ目は不況のときである。昨今のコロナ禍においても社会が大きく変化し、それに対応した企業は成長している。不況のときだからこそ新たなビジネスチャンスも生まれ、そのチャンスを生かすべく会社を変革することが成長に繋がり、持続的成長が可能になる。

そして、最後は承継のタイミングである。経営者が次世代に変わるときこそ、会社も変わるチャンスである。なぜなら、企業経営はトップの意志で決まり、企業変革ができるのも新しい経営者の意志だからである。単に会社資産の承継だけではなく、いかに成長できる基盤を創りながら経営を次世代へ引き継いでいくかを考えなければならない。

まず取り組むべきは、今後10年のロードマップを設計すること

経営を未来に繋ぐためにまず取り組まなければならないことは、今後10年のロードマップを設計することである。このように申し上げると、「将来どうなるかわからないので意味がない」と言われることが多いが、発想が逆である。経営者は預言者ではないし、誰も将来はわからない。だからこそ、自身が今考えうるすべての情報を投入して設計図を創っておくべきである。将来の予測が合っているか、間違っているかの問題ではない。将来は予測するものではなく創るものであるという発想を持つことが大切である。

そして、事業承継は一般的には最低10年スパンで考えなければならない。ヒト・モノ・カネすべてを引き継いでいくことは、一朝一夕でできるものではないからである。また、次世代に譲って終わりではない。10年間、伴走しながら次世代経営者をサポートしていく役割も担わなければならない。10年の内、7年間で次世代に経営を譲り、3年間並走して完全に任せていくのが理想的である。

ロードマップを設計するうえで大切なことは、バックキャスティングで考えるということである。前述した通り、描いた10年後のあるべき姿の実現をいつに設定するのかによって、これからの取り組みが変わってくる。あるべき姿になるために、どのような課題に対して何年目から準備し、意思決定していくのかを逆算的に決めていくことである。我々はこれを「承継カレンダー」として経営者と一緒に作成することが多い。将来の姿を簡単でいいので見える化することから始めていただきたい。

具体的には、縦軸に経営者、後継者、経営幹部を置き、横軸は1年ごとに時系列で年齢や役職を記載できるようにする。まずはこの一覧で組織人材が見える化できる。この一覧の下段に、項目としてビジネスモデルから見た実施事項を置く。すでに戦略として策定していれば時系列に置く。たとえば、「新たな事業を立ち上げる」や「エリア展開をする」といったことである。するとその時に、どのような役割を誰が担うことができるのか、リーダー人材との関連性も合わせて考えることができる。

また、事業戦略面ばかりでなく、事業戦略に合わせた組織再編、たとえば事業部制やホールディングス体制への移行、その際の事業部長や事業会社の経営者候補を誰にするか、本社機能強化やデジタル投資までを時系列で設計してみると、今後のなりたい姿と取り組まなければならないことが客観的に見えてくる。

ここで、特に経営者が共通して感じることがある。それは「何をやるかも大事だが、誰がその役割を担うのか、人材をどのように採用・育成していくかが大きな経営課題になる」ということである。人材に関してはやはり時間がかかることが多いため、企業経営を未来視点で俯瞰的に捉え、客観的に判断できる設計図を作成し準備していただきたい。

変化と成長を促す「新しい経営ソリューション」が必要

企業を取り巻く環境が目まぐるしく変わるなか、今までの経営手法では通用しなくなってきている。企業の未来を創るためには、企業に変化と成長を促す新しい経営ソリューションが不可欠である。

企業経営の課題に対してトータルで取り組み、そのなかで培ってきた筆者らの多面的ノウハウを、メソッドとして今後の連載で紹介していく。紹介する経営ソリューションを参考いただき、持続的成長、そしてファーストコールカンパニーの実現に向けて、経営を未来へ繋いでいただきたい。

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