COLUMN

2023.09.28

承継後も企業価値向上を実現する
次期経営内閣の育成の重要性とは

  • 事業承継

承継後も企業価値向上を実現する次期経営内閣の育成の重要性とは

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近年、人口減少に伴う後継者不在の企業は増加傾向にありましたが、コロナを皮切りにトレンドが変わりつつあります。
帝国データバンク:全国企業「後継者不在率」動向調査(2022年)」によると2020年は後継者不在率が65.1%であったのに対し、2022年は57.2%と不在率が減少傾向にあります。このような結果なった要因は3つ考えられます。
1つはコロナを皮切りに自社の現状や将来性を考えるきっかけとなった企業が多いという点、2つ目は全国の事業承継の相談窓口が整備されたという点、3つ目はM&Aや事業譲渡、ファンドを経由した経営再建型の承継スキームが増加した点である。以上の背景から後継者不在率が急速改善したと考えられます。承継スキームが多様化しても変わらず大事なことは、承継後も自社の持続的成長を実現させるための経営内閣の組成です。

親族内承継から社内承継へ

近年オーナー家での承継(親族内承継)が多く割合を占めていたのに対して、直近は内部昇格つまりプロパー社員の経営者登用が増加しています。同族内承継と内部承継が同じ割合水準まで来ており、今年は逆転する可能性が高いです。この結果が何を指しているかというと、少子高齢化の中で純粋な親族内承継者候補が減少していることはもちろんですが、M&Aを含み、優秀なプロパー社員を登用する事で迅速な企業成長を遂げるためには有効的な戦略であるという見方が強まっているという背景があります。
従来の親族内承継では、当事者であるオーナー家の従業員や役員はいずれ経営を担うという意識や覚悟を持って自社に入社し、育てられることになるので、自然と経営者育成がなされる事が一般的なケースでありました。しかし、プロパー社員の登用ともなると誰が・いつ経営者として指名されるかわかりませんので、計画的に育成・選抜を行う仕組みづくりを行う必要があります。一担当者から課長・部長・執行役員・取締役そして社長とステップを踏んで育てる事、階層ごとで対象人材をプールしていく事が継続的な経営者人材の輩出を行う仕組であり、このようなサクセッションプランの設計・運用が事業承継後の企業成長を支えるメソッドの一つであります。
上記のようなプロパー社員の経営者登用には育成体系の策定や運用という手間はありますが、メリットもあります。それはプロパー社員の経営に関する意識向上やモチベーションアップです。誰でも経営者になれる可能性があるとなれば、従業員の立場からすると従来のオーナー承継では生まれなかった、経営に関する意識向上や、頑張れば経営者になれるという自主性や積極性が生まれやすくなります。オーナー企業では後継者が経営者に適している人材でなくても経営者となり、結果的に企業が衰退、最悪の場合倒産するということもしばしばあったかと思います。大塚家具の事例がその最たるものです。その様な事にならないように、自社の経営に最適な人材をプロパーという大きなプールから選抜・育成する事が、何十人もの経営者候補が生み出されることになりますので、効果的である事は間違いないです。

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図①出所:帝国データバンク:全国企業「後継者不在率」動向調査(2022年)」図①出所:帝国データバンク:全国企業「後継者不在率」動向調査(2022年)」

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図②出所:タナベ作成図②出所:タナベ作成

経営者人材育成が企業価値向上に繋がる

事業承継は数十年に一度到来する経営者にとっては最大の戦略であります。企業が新規事業投資や中期経営計画を策定する際には事業戦略・組織人材戦略・財務戦略を立案し、実装までのロードマップを策定するかと思います。経営者人材も組織人材戦略の1つであり、サクセッションプランを基にプロパー社員から絶えず経営者人材を輩出するプール体系や育成計画を立案する事は、戦略実装の上では重要なメソッドです。企業のビジョンやミッションを実現する継続的な経営内閣の組成を行うためには人的資本投資を行う必要がありますが、これは直接的に企業価値向上に繋がってきます。
事業承継の最大目的は企業を維持させることとよく言いますが、維持するだけでは高速的に変化する時代の中では、衰退するも同じ意味であると考えます。図③では企業価値の考え方を示してます。従来は企業がどれだけ売上・利益を上げられたかという経済的価値が企業価値であると解釈されてました。しかし、現状は経済的価値に加え、人的資本や社会資本、知的資本等の非財務価値への評価も合わせて企業価値であると解釈されるようになってます。こうなった背景はグローバルトレンドやステークホルダーの企業への見方が変わったという事が大きな要因です。海外では非財務資本への投資戦略や考え方、社会貢献価値を企業がどう考えているかを重視している事が図④からも読み取れると思います。海外では企業価値に占める無形資産(非財務資本)の割合が大半であるのに対し、日本国内はまだまだ割合は少ないです。しかし、コーポレートガバナンスコード上でも発信があるように、サクセッションプランや人的資本投資への取組を強めていく事は必須であり、経営者人材育成においても例外ではないという事です。

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図③出所:タナベ作成図③出所:タナベ作成


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図④出所:経済産業省データをタナベ加工図④出所:経済産業省データをタナベ加工

経営承継×資本承継=真の事業承継である

従来の株式を誰に承継するかという資本承継も承継上での重要なポイントであることは間違いないです。ですがそれだけでは事業承継を実施出来たというにはほど遠いです。組織や人、祖業の想い等経営に関する全てを承継して初めて事業承継が成功したと言えます。次期経営内閣の組成や育成を行うためには、事業と経営に対する基本的なスキルを学ぶ事は基本的必須事項ですが、もっと大事なのは祖業の想いや会社が持つ熱意を承継していく事がとても重要であると考えます。
自社の事を理解し、愛し、成長させようという気概やそれを自身が実施するという熱意を持った経営者人材を絶えず生み出すことが経営承継の上ではとても重要です。口だけ出す評論家幹部ではなく、自身が主体的・積極的に経営を担うという経営者人材を育成して行くためには、こういった考えに共感できる社内人材や外部専門家と連携して、取り組むようにしてください。私と同じような想いで経営者育成並びに企業価値向上を実現させる人が多く生まれる事を期待します。

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