COLUMN

2026.05.27

建設業のROA改善策3選
総資産回転率・売上高利益率を高める
実践法

  • 資本政策・財務戦略

建設業のROA改善策3選|総資産回転率・売上高利益率を高める実践法

目次

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ROA(Return on Assets:総資産利益率)は、企業が保有する全資産(負債および純資産)を用いて、いかに効率的に利益を上げているかを示す指標です。数値が高いほど効率的に資産を活用していることを示し、計算式は当期純利益÷総資産です。この指標は、企業の包括的な収益性や経営効率を測る、代表的な財務指標です。借入金を含むすべての資産を分母とするため、会社全体でどれだけ効率的な経営ができたかを把握できます。一般的に5%以上が目安とされますが、業種(資産の多い製造業などは低くなりやすい)によって大きく異なります。改善するには、利益率の向上または総資産回転率の向上が必要です。
※総資産回転率とは、企業が保有する全資産(総資産)をどれだけ効率的に活用して売上高を生み出しているかを示す経営効率の指標です。売上高÷総資産で計算され、数値が高いほど少ない資産で大きな売上高を上げている、つまり資産運用が効率的であると判断されます。

海外企業(特に欧米企業)がROE(自己資本利益率)と並んで、あるいはそれ以上にROA(総資産利益率)を重視する主な理由は、負債を含むすべての資産をどれだけ効率的に活用して利益を上げているかを純粋に測定できるためです。ROEは負債を増やす(財務レバレッジを効かせる)ことで相対的に高めやすい一方、ROAは企業の真の収益力を映し出す指標として、投資家や経営陣に重視されています。日本の企業は売上高利益率で収益性を判断する傾向が強いですが、収益性の改善に向けて、この視点をより意識することが重要です。

スーパーゼネコンの収益性比較

スーパーゼネコンの売上トップ5のROAは以下のとおりです。
※分子は親会社株主に帰属する当期純利益を使用

(1)大林組 4.8%(売上高純利益率5.6%×総資産回転率0.86回)
(2)大成建設 5.1%(売上高純利益率5.7%×総資産回転率0.89回)
(3)鹿島建設 3.6%(売上高純利益率4.3%×総資産回転率0.84回)
(4)清水建設 2.6%(売上高純利益率3.4%×総資産回転率0.77回)
(5)竹中工務店 2.7%(売上高純利益率3.5%×総資産回転率0.76回)

出典:2025年3月末時点の有価証券報告書、決算短信を基にタナベコンサルティングにて作成。

上記のとおり、ROAは3〜5%です。総資産回転率の差は上下で0.13回にとどまる一方、売上高純利益率では上下で2.4%の差が生じています。つまり、総資産回転率の横並びから脱却し、遊休資産の圧縮や業務の効率化などにより同指標を高められれば、ROAは改善します。
加えて、売上高純利益率が最も高い大成建設と最も低い竹中工務店の各種利益率を比較すると、以下のとおり、売上総利益率の差が収益力の差に直結していることが分かります。

大成建設 竹中工務店 差異
粗利率 10.7% 9.1% 1.6%
営業利益率 5.6% 3.3% 2.3%

事業構造や組織形態の違いは措くとして、あくまで数字から見ると、価格競争力がある独自価値と原価管理力により収益性やROAが左右されると言えます。

全国の総合建設業(ゼネコン)の収益性比較

貸出審査辞典の調査対象企業情報より、主要指標を全企業と黒字企業に分け、以下のとおりです。

全企業 黒字企業 差異
ROA 2.8% 3.9% 1.1%
総資産純利益率 2.1% 3.1% 1.0%
総資産回転率 1.3回 1.3回
粗利率 22.0% 21.9% 0.1%
営業利益率 3.4% 4.7% 1.3%

出典:貸出審査辞典

上記のとおり、黒字企業の特徴は、営業利益率が平均値と比べて1.3%高い点です。つまり、販売費および一般管理費の比率の差によるもので、黒字企業では営業や管理業務の効率化が進んでおり、生産性が高いと推察されます。これは、建設機械やDXへの投資の差にも起因していると考えられます。
なお、上述のスーパーゼネコンとのROAの数値に大差はありませんが、仮説として、企業規模が大きくなるほど、売上総利益率と総資産回転率は低下し、相対的に販管費率も低下すると言えます。

ROA改善のポイント

(1)総資産回転率を高める

建設業はものづくりであるものの、一般的な製造業とは違い、工場を持ちません。つまり、製造業に比べて総資産(固定資産)を低く抑えられます。とはいえ、まずは資産を棚卸して、収益を生まない資産を削減することが第一歩です。また、決算期を変更するという選択肢もあります。多くの企業が3月決算ですが、建設業では未成工事支出金などの影響で、3月は最も流動資産が増える月でもあります。したがって、流動資産が少ない月に決算期を変更することも、総資産回転率の向上に寄与します。

(2)売上高純利益率を高める

ポイントは前述のとおり、以下の三点です。

①価格競争力のある独自価値
価格決定力を持つ独自性の高い技術を磨くことです。その過程では価格競争からの脱却を目指しましょう。これは決して簡単ではないテーマですが、自社の強みを棚卸ししてみましょう。得意分野や勝てる条件はあるはずです。

②原価管理力
多くの建設企業では徹底できていないのが原価管理です。実行予算は作成したが、月次の予実管理を実施しておらず、結果、収益が安定しないケースが散見されます。特に3か月を超える工事については、進捗管理を怠らず、原価をコントロールすることを体質化することが重要です。

③建設機械やDXへの投資
IoT建設機械など、現場に行かなくても遠隔操作できる機械も増えており、中堅や中小企業でも徐々に導入が増えています。また、各種書類作成や出面管理を紙で行っている企業もまだ多いです。紙をデジタルにすることに取り組んでみましょう。月に3時間の業務時間削減でも、積み上げれば利益率の改善に寄与します。

これらは建設業だけに限りません。自社の業種に置き換えて、小さな改善を積み上げましょう。その積み重ねが三年後、五年後のROAの改善に必ずつながります。まずは小さな一歩から始めてみましょう。

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