CASE 事例
ホールディングス化による企業成長を目指し財務研修を実施したA社の事例
企業を成長させていくための代表的な経営手法の一つに、ホールディングス化があります。資本と経営の分離が進むことで、事業を成長させやすくなるなどメリットの多い経営手法です。企業グループを統括する持株会社だけではなく、その傘下に並ぶ複数の事業会社にも必然的に経営者を置く形となるため、経営に必要なスキルを保有した人財が多く必要となる組織形態です。
そのため、ホールディングス化のために人財育成に取り組まれる企業が多くあり、その事例の一つとしてA社をご紹介します。
1.ホールディングス化を検討時に見落としがちな課題
A社はニッチ分野における製造卸を行う企業です。卸売業として創業されたのち、時代の変化に合わせて製造業へ進出されました。
近年は自社の工場を閉鎖しファブレスメーカーへと変化させるなど、時代の流れに合わせて業態を変化させてきました。その結果、3つの事業が柱となるまで成長し、A社の経営を支えています。
そうした中で次の経営手法として目を付けたのがホールディングス経営でした。A社がホールディングス経営に舵をきった理由は大きく3点です。
①3つの事業を社長ひとりで見ていくことの限界を感じたこと
②事業ごとに成長戦略や課題が異なり、会社運営に苦慮していたこと
③外部環境の予期せぬ変化に対応すべく、新規事業開発や事業撤退を柔軟にできる組織体制を望んだこと
そうした状況下でホールディングス化に向けたTo Doの整理やロードマップの策定などを目的に弊社に声がかかり、
コンサルティングの支援をすることとなりました。そのコンサルティングを進めていくうえで課題として見えていたことが、事業会社の経営者候補の方のスキル不足でした。
特に不足していたスキルは以下のものです。
①経営理念や社長の想いの理解
②リーダーシップ
③経営に必要な財務スキル
ホールディングス化に向けてTo Doやロードマップの策定は外部の支援で作成できますが、人材育成については最終的には社内の人材が変わらなければなりません。ホールディングス化に向けた取り組みで意外と見落とされていることが多いのが人材育成です。
今回はA社で③「経営に必要な財務スキル」の習得のためのどのような研修をしたのかをご紹介します。
2.経営者に必要な財務スキル
経営者に必要な財務スキルは平たく言うと、「自社の数値を見て何が問題かを理解し、対策を考えることができる能力」と「数値計画を立てられる能力」だと考えています。そのためにはインプットと実践的なワークが必要です。
最低限必要なインプットとして講義を行った項目は以下の通りです。
①なぜ計数理解が必要か
②貸借対照表、損益計算書の基礎知識
③決算書や財務諸表の見方
④管理会計と財務会計の違いと損益分岐点
⑤キャッシュフローと利益の違い
⑥計画策定で押さえるべきポイント
また、実践的なワークとして以下の取組みを実施しました。
①自部門の業績分析
②3カ年の数値計画の策定
企業の抱える課題や受講者のスキルによってカリキュラムを見直す必要がありますが、経営者に求められる財務スキルは、業種業態に関わらず全ての企業において同様です。正しい数字の把握が正しい現状認識に繋がり、正しい判断に繋がっていくのです。
3.財務スキルの習得のポイント
財務スキルを習得するために抑えるべきポイントは大きく2つあります。
一つ目はインプットの場だけではなく、アウトプットの場を提供することです。
単に講義をするだけでは、伝えた内容が伝わっているのかや理解することができているのかがわかりません。確認テストを実施するだけでもよいですが、学んだ内容を使ったケーススタディを実施することが出来ればなお良いです。
例えば貸借対照表や損益計算書の基礎知識の講義を受けた後に、スターバックスコーヒーとドトールコーヒーの決算書を比較するワークを行うといった具合です。アカデミックな知識が仕事で使える実用的な知識として昇華されるはずです。
二つ目は実践的な教育を行うことです。
実践的な教育を行うには、自社をモデルに検討することが最も手っ取り早く有効です。つまり先ほどのケーススタディやワークを、自社の数値や事業を用いて実施するということです。実際には製造や卸など複数の業態に事業がまたがっていたり、詳細な数値を出すことが出来なかったりと難易度が高くなることが多いため、モデル企業を用いたケーススタディと併用した研修を行い、最終成果物を自社をモデルに検討すると上手くいくことが多いです。
また、実践的な教育として経営を疑似体験させることも有効です。A社では実施してはいませんが、別の企業の財務研修では、Management Experience Onlineというタナベコンサルティングが開発したアプリケーションを用いて経営の疑似体験をする企業戦略ゲームを実施することが多いです。
このワークでは、受講生自身が架空の企業の経営者となり競合や市場の動きを予測し戦略策定を行うことで、経営指標や資金繰りの重要性や、計画立案・意思決定の難しさを体験します。財務スキルを習得していない受講者ではついていけないプログラムとなっており、研修の集大成として将来の経営者候補の方が取り組むには格好の題材となっています。
4.研修実施の成果
研修実施の成果として、A社の現経営幹部の方から、「財務指標を用いて参加メンバーと同じ視座で会話ができるようになった」や「各担当者から上がってくる与信判断の精度が格段に上がった」「事業部で数値計画を策定できるようになった」との声が上がっています。さらに、研修に参加したメンバーから3人の新たな事業部長が生まれ、それぞれ執行役員に昇格しています。A社としても4年後のホールディングス化を目指し、準備を進めています。
ホールディングス化はメリットの大きい経営手法である一方で、各事業会社に経営を任せる性質上、経営者スキルを有した優秀な人材が複数必要となります。成長エンジンとしてホールディングス化を活用しようとした際に、人財不足がネックとならないように計画的な人財育成を進めていくことが求められます。
タナベコンサルティングの「財務・アカウンティング研修」では、財務会計や管理会計、経営分析の基礎的な知識だけでなく、それらの手法や考え方を体系的に習得できます。さらに、ケーススタディやグループワーク、ビジネスゲームなどの実践的な方法を通じて、実践的なアカウンティング・ファイナンススキルを身に付けることができます。
貴社の課題にカスタマイズしたカリキュラムをご提供しておりますので、ファイナンス思考の人材育成にご興味がございましたら、ぜひ「財務・アカウンティング研修」サービスをご検討ください。
担当コンサルタント
タナベコンサルティング
コーポレートファイナンスコンサルティング事業部
チーフマネジャー
阿部 崚人
地方銀行で法人融資や個人の資産運用、宅建資格を生かした不動産投資アドバイスのほか、資金繰りが悪化した企業の再生支援を経験し、当社に入社。コーポレートファイナンスコンサルティング事業部にて、ホールディング体制構築に向けた条件整備や、新規事業立ち上げ、業務改善、ブランド構築など幅広いプロジェクトに携わる。
会社プロフィール
業種 | 製造加工業 |
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所在地 | 大阪府 |
売上高 | 100億 |
従業員数 | 160名 |
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経営に関する相談会
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- ・問診票(経営バランスチェックリスト)による自社の現状認識と課題の明確化
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SERVICE
タナベコンサルティングのコーポレートファイナンス支援コンサルティングサービス
コンサルタント紹介
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上席執行役員
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執行役員
北陸支社長番匠 茂
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執行役員
東北支社長藤井 健太