CASE 事例
ビジョン・中期経営計画達成のための財務研修
世間では大企業を中心に円安による業績向上や賃上げなどのニュースで賑わっていますが、日本企業の多くは輸出企業ではなく輸入企業です。
つまり円安で恩恵を受けている企業よりも業績を圧迫している企業の方が多いということです。実際に私がコンサルティングをしているクライアントのうち何社かは昨今の円安で苦しんでいます。
しかし、苦しんでいてそこで立ち止まってはいけません。状況に応じて適切に値上げするなどの足元の業績対策をすると同時に、将来のありたい姿(ビジョン)を目指して社員を一致団結させる必要があります。
今回はこのような外部環境下だからこそ、ビジョン・中期経営計画達成に向けて財務研修を行った企業の事例を記載いたします。
座学で終わらない財務研修となるためのポイント
A社は業界トップクラスの卸売業でありますが、設立まだ10年余りの若い会社です。社長は創業者であり、トップダウンによるワンマンコントロールによりこれまで成長を遂げてきました。
しかし、昨今の急激な成長・規模拡大によって社長が会社の全てをなかなか見ることができなくなったこともあり、将来を見据えて社員全員のレベルアップの必要性を感じられて社員教育のご相談がありました。もともとA社の長期ビジョンや中期経営計画は弊社と一緒に作成したこともあり、ビジョン・中期経営計画を達成するためのマネジメント研修と財務研修を行うことを提案し、実際に両方の研修を行いました。財務研修では主に損益計算書、貸借対照表、管理会計といったテーマで1年間ケーススタディも交えながら徹底的に繰り返し研修を行いました。
また途中でも何度もわが社のビジョン・中期経営計画の定量目標を振り返ることで財務研修の学びと実務をリンクさせることにも注力いたしました。良くあるパターンとして研修中はしっかりとできるが、研修が終われば忘れて元に戻ってしまうということがあります。それを防ぐために財務研修で学んだ内容を踏まえて、実務で何をするのか受講生が徹底的に考えて実行することをサポートしたり、ビジョンや中期経営計画を講義に入れたりすることでなぜ財務研修が受講生に必要なのかを常に説いてきました。
あるべき姿と現状のギャップを数字で押さえる
ところでビジョンや中期経営計画の定量目標を振り返るということですが、具体的にどのように振り返ったのかを説明いたします。
先述した通りA社のビジョンと中期経営計画は弊社と一緒に作成したため、なぜこのようなビジョンと中期経営計画になっているのかも全て弊社で把握することができておりました。そこでビジョンや中期経営計画を説明する前に、A社および受講生の現状を数字で理解することの重要性を説いたうえで、ビジョンと中期経営計画を説明しました。
具体的に売上高と売上総利益率という指標で例を出すと、2023年度の売上高が約45億円・売上総利益率が25%であるのに対して、2030年度の定量ビジョンの売上高が80億円・売上総利益率が30%であれば、売上高のギャップとして35億円・売上総利益率のギャップが5ポイントあるといったようなことです。
このように受講生自身が長期的な視点で目標とのギャップを数字で捉えることができたので、現状の延長線上の業務を行っているだけではこの数値目標を達成することが難しいことを理解できるようになりました。特にA社の営業メンバーは年度予算必達のために動く力はありますが、将来を見据えた営業活動がなかなか出来ていないという課題がありました。
しかし今回の財務研修を通じて将来を見据えて売上総利益率の高い商材への販売活動に時間をより配分するようになりました。
会社としてすべきことを自身の行動に落とし込む
また数字でのギャップを説明する際は説明だけで終わるのではなく、数字のギャップを解消するために会社として何をしなければいけないのか、自身として何をしなければいけないのかを徹底的に受講生が考えるという研修にしました。A社に実施した財務研修でも他責にするのではなく、自身の行動計画への落とし込みを行うことを徹底して指導した結果もあってか数字に対する意識が格段に向上しました。
ここでのポイントは他責にするのではなくということです。要するにできないのは環境が悪い、あるいは会社が悪いと発言する方が社員の中によくいますが、それでは前に進むことができないので、できるために自身は何をしなければいけないのかという思考に変えるということです。
このため研修期間中以外でもWEBで毎月個別面談を行い、業務での悩みを聞きながらマインドセットも同時に行うことで社員の意識レベルは研修前と比較して改善いたしました。
成果を数字で測ることでPDCAサイクルを稼働させる
行動計画を立てた後はしっかりとPDCAサイクルを回すことが必要になってきます。ただしその際には必ず成果を利益で測ることが重要です。つまりPDCAサイクルのCの部分はどれだけ利益があがったのかでチェックするということです。
財務研修の講義の中でも成果を利益で測り、その成果によって次の行動計画を立て直す必要性を説明しました。このPDCAサイクルの徹底によって、従来は実質的に営業だけが意識していた売上・利益について、全部門で意識して動くように意識が変革しました。自身の行動によってどれだけの利益貢献ができるのかが分かると、管理部門の方々のモチベーションも向上し生産性も向上しました。
またこれまで放置されていた長期在庫に対しても、受講生が自発的に社内会議を設定して対策を検討するようになりました。わが社の課題を利益で捉えて各人が課題解決のために動くようになったということです。
以上がビジョン・中期経営計画を達成するために、いかに実務に落とし込むかに注力した財務研修を行ったA社の事例です。財務研修はあくまで会社が成長するうえでの手段の1つでありますが、全社員の意識を変えるうえでも非常に重要な研修です。またこのような研修は単発ではなく、継続して行うからこそ効果が出てきますので、皆様もぜひ参考にしてください。
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担当コンサルタント
タナベコンサルティング
コーポレートファイナンスコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー
上田 裕貴
金融機関で法人営業、海外進出支援や海外駐在を経験し、当社へ入社。コーポレートファイナンスを中心に新しい経営技術で企業価値向上の実現に取り組んでいる。企業再生や、海外展開している中堅・中小企業の中期経営計画策定コンサルティング、業績管理体制強化コンサルティングを強みとしており、顧客に寄り添うコンサルティングスタイルに定評がある。
会社プロフィール
業種 | 卸売業 |
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所在地 | 大阪府 |
売上高 | 45億円 |
従業員数 | 70名 |
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