「コーポレートブランディング」の定義とは?
「コーポレートブランディング」と「プロダクトブランディング」の違い
「ブランディング」と聞くと、商品やサービスなどのプロダクトブランディングを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
コーポレートブランディングは「企業そのもの」のブランド価値の確立と向上に向けた取り組みのことを言います。
企業が社会に対しての存在意義や貢献価値を明確にすることで、消費者・株主・社員などのステークホルダーから共感や支持を得るための取り組みとも言い換えることができます。
プロダクトブランディングが、ターゲットとする消費者に向けて個々の商品やサービスの「持ってもらいたいイメージ」の刷り込み活動であることに対し、コーポレートブランディングは、消費者だけでなく株主や社員などすべてのステークホルダーをターゲットとし、共感や支持を得ることによって、自社のファンになってもらうことを目的としています。
「コーポレートブランディング」は何のために行う?
4つの目的が鍵になる
まずは前提として企業としての考え方、経営理念、パーパス(存在意義)やミッション(果たすべき使命)、ビジョン(目指すべき姿)、バリュー(価値観、行動基準)を明確化させることが重要です。
何か起きた際にも、社員が「立ち返る場所」としての共通認識を持ったうえで、コーポレートブランディングの目的を整理していきましょう。
1.市場競争力の優位性
コーポレートブランディングにより、まずステークホルダーからの認知度を上げることができます。企業認知→理解が進めば、商品やサービスに対する安心感や信頼を獲得することができるため「指名買い」にも繋がり、他社との差別化や価格競争からも脱却することができます。企業自体のファンが増えることで、LTV(顧客生涯価値)の向上も期待できるでしょう。
2.資金調達の優位性
コーポレートブランディングを通して、信頼度・将来性を示すことで安定した業績や経営姿勢が伝わり、銀行や株式市場からの資金調達が行いやすくなります。資金調達が行いやすくなれば、新規事業展開や採用活動など、新たな先行投資に繋げることも可能です。
3.リクルート活動における優位性
企業としての認知度、イメージを確立することで「自社で働くことの意義やイメージアップ」「働きやすい環境」を明確にすることもできるため、優秀な人材の確保にも繋がります。昨今、人材確保の競争が激化する採用市場においても、他社との差別化を図ることが非常に重要です。自社の理念やビジョンに共感する優秀な人材が増えることによって、社内活性化や環境改善により社員のエンゲージメントやモチベーションが向上し、離職率の低下にも繋げることが可能となります。
4.インナーブランディングの強化
コーポレートブランディングを行う上で土台とも言えるのが、インナーブランディングの強化です。アウターブランディング活動前の不可欠な準備項目とも言えます。ここが確立されていないと、すべてのブランディング活動の軸が定まらず、崩れる可能性があります。社内の意識改革や組織体質の改善にも繋がりますが、3.のリクルート活動に関する項目でも述べた展開にも繋げることができます。
目的は整理できた。何から始めたら良いか?
「コーポレートブランディング」の進め方
1.実施時期を決める
コーポレートブランディングは社内外への影響力が大きいこともあり、適切なタイミングを見計らい実施することが重要です。例えば、経営計画策定・中長期ビジョンの発表前後や企業の周年記念、社長交代、M&Aや事業拡大など変革のタイミング、それによるリブランディングのタイミングなどが挙げられます。タイミングを逃すと、実施の意図やメッセージが社内外に浸透しきらず、中途半端に終わってしまうリスクもあるため、見極めと実行の意志を明確にすることも重要です。
2.プロジェクトチームを結成する
企業によっては、経営企画部内でチームを組むこともあれば、全社全部署からプロジェクトリーダーを選定し、横断型で進めることもあります。コーポレートブランディングを推進するためには、いかに企業の考え方やビジョンの理解浸透度が高く、かつ能動的・主体的に取り組めるメンバーを選任するかも重要です。企業規模や社員数に応じて適切に運営・推進可能なチーム編成をバランスよく組み上げましょう。
3.現状認識をすること
まずプロジェクトを進めるにあたり、コーポレートブランドの現状認識を行うことが重要です。自社の目指すべき姿(ブランド確立)と現状のギャップを正確に把握すべく、自社トップへのヒアリングや、社員をはじめステークホルダーへのアンケート調査、競合他社調査の実施等、多角的に分析資料の収集と情報整理をしていきましょう。
4.「コーポレートブランディング」の手法・施策の検討
目指すべき姿と現状認識の後は、いよいよギャップを埋めるための手法と施策を決めていきます。
情報収集・把握はしたが、どのような視点で手法を決めたら良いかわからない、という疑問点も出てくるかと思いますので、その場合はそもそもの目的に立ち返って考えてみましょう。ターゲットとするステークホルダーからの共感・支持が得られ、ファンになってもらえるか?関係各社や投資家の信頼関係は構築できるか?目指すべき企業ブランドの姿になっていけるのか?など、1つ1つを解消しながら進めていくことが重要です。
主に実施される、コーポレートブランディングの施策
4つの具体的施策
1.社名、ロゴデザイン開発、トンマナ設定
企業の経営理念やパーパスなどを一言集約したコンセプトやコピー、ロゴデザインなどステートメントやブランドメッセージを具現化するものとしてコーポレートデザインを設計していきます。そのうえで、情報発信と認知、浸透を図ることが重要です。
2.ブランディング広告の検討
TVCM、動画制作・配信、Web広告、SNS、雑誌、新聞、イベント等さまざまな媒体を目的やフェーズに応じてミックスさせ、展開していきます。
3.自社Webサイト(オウンドメディア)活用
(1)IR、広報活動情報
(2)採用活動における施策事例
(3)CSRへの取り組み等PR事例
(4)お役立ちコラムの定期的な掲載 etc.
ただし、運営面等を加味し、更新ができない等リアルタイムな情報提供ができないとなると、コーポレートブランディングにも悪影響を及ぼすことがあります。できる範囲を決め、段階的に実施・運用することでブランド品質を安定化させていきましょう。
4.オフィスデザインの開発
機能的でデザイン性のあるオフィス環境は、社員のモチベーションやエンゲージメント向上に繋がること、コミュニケーションの活性化や業務効率向上にも繋がります。開発したデザインやトンマナに合わせたオフィス空間はPRにも有効なため「こんなオフィスで自身も働きたい」という採用活動の活性化にも繋がります。
コーポレートブランディングは短期的に行えるものでもなく、定期的に見直し、PDCAをまわしながら実行し続けることが重要です。じっくり、時間をかけながら理想の「コーポレートブランド」を大切に育てていきましょう。