売上・利益が上がらない、人材が思うように採用できない、従業員のエンゲージメントが高まらない、といった課題に直面している企業も多いのではないでしょうか。これらの課題は、貴社のブランディング活動に原因があるのかもしれません。
ブランドとブランディング
ブランドは「ブランディング(活動)」により築かれます。
ブランディングとは、「ブランド」を確立するための長期的・組織的な取組み(活動)です。
ブランドとは、消費者(顧客)が、ブランド体験により作り上げられるイメージです。商品を区別するための印やマークがブランドの始まりと言われていますが、今では単なる識別マークを超えて、企業や商品の価値を表現する重要なものとなっています。
ブランディングとは、ブランドに対して消費者(顧客)が抱くイメージや共感性を高め、他社との差別化や付加価値を高める活動です。
原材料・人件費の高騰による原価負荷の増加、人口減少、少子・高齢化、インフレ基調での値上等による課題の表面化、コモディティ化の加速による付加価値・企業収益性の低下など企業が直面する課題も多い中、環境変化のスピードは速く、市場環境はますます一層厳しいものとなります。
このような環境の中で、顧客から愛され、他と明確な差別化を図られているブランドが存在しています。
その企業は、なぜブランドの付加価値を有し、差別化を実現できているのか。
企業が勝ち抜くための「ブランド」。そのブランドを高める「ブランディング成功のカギ」となるのが、「専門」「人材」「社会」という3つの視点(図表①)で企業価値をとらえることです。
自社が強みを発揮できるブランドの素材を発見し、それを磨くことでブランディングの方向付けが明確になっていきます。
図表①ブランドの3つの視点
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出所 : タナベコンサルティング作成
本質的価値(ブランド)の確立、真の顧客とのコミュニケーションによる長期的な信頼関係の構築(ブランディング)が、この厳しい環境下で「勝ち抜く、突き抜ける」ための条件となります。
ブランディングのあるべき姿
ブランディング実現のための「ブランドビジョン」。
ブランドビジョンを明確にすることで「ブランドの一貫性」を実現します。
ブランドビジョンとは、ブランドのコンセプト、パーソナリティー、目指すべき未来像、価値創造ストーリーを言語化したもの(ブランド実現の旗印となるもの)です。
ブランドビジョンに基づく戦略検討・事業推進・デザイン(インナー/アウター)など、「ブランドの一貫性」があるアウトプットにより、ブランドを「正しく魅力的に伝える」ことができるのです。
その一連の流れが、ブランド構築の3つのステップです。
図表②ブランド構築3つのステップ
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出所 : タナベコンサルティング作成
ステップ1:
ストラテジーフェーズ(分析・構想/ブランドビジョン策定)
ステップ2:
デザインフェーズ(戦略策定、施策検討/ブランド戦略、ブランディング施策設計)
ステップ3:
クリエイティブフェーズ(施策実行/ブランディング活動)
ブランド構築のステップに入る際に、長期計画(未来ビジョン、めざす姿)からのバックキャスティングで計画化・具現化し、連動させて取り掛かることも大切です。
図表③バックキャスティングアプローチ
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出所 : タナベコンサルティング作成
ブランドビジョン策定、ブランド戦略設計
ブランド資源の棚卸、本質的価値を整理し、ターゲットを最適化して、ブランドビジョン(ブランドの目指す姿、価値創造ストーリー)を策定する。
ブランド価値を最大化するブランディング活動を行うための、ブランドビジネスモデルとブランド戦略を再設計する。
自社のめざす姿・提供したい付加価値・実現したい未来像を、不易である「経営理念」に基づき、自社のブランドベネフィット(資源)を整理し、パーパス・MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に基づき戦略化し、ブランド構築の基盤となる「ブランドビジョン」を明確化する。
ブランディング活動を行うためのブランドビジョン・ビジネスモデル・ブランド戦略を設計し、その上で具体的なインナー・アウターのブランディング施策の計画に入っていきます。
「ブランドビジョン」策定のステップとして、ブランドのポジション・コアコンピタンス・現行のブランディングプロセスを分析・整理する「ブランドバリュー分析」。ベネフィット・ターゲット・パーソナリティーを絞り込み、設定する「ブランドキュレーション」。その上で「ブランドビジョン」を策定します。
構成要素は「ブランドのめざす姿」「ブランドコンセプト」「ブランド価値創造ストーリー」などです。
「ブランド戦略」設計のステップとしては、ブランドアイデンティティ(ネーミング・ロゴ・キャッチコピーなど)だけではなく、「ブランドビジネスモデル」も見直す必要があります。既存のものでは、ブランドビジョンが実現できない場合が多くあるからです。
次に、ブランドプロミスバリュー・コアファンクション・コアタッチポイント・ブランドコミュニケーション・ブランドマネジメントシステムで構成される「ブランディングプロセス設計」。そして、具体的なインナー・アウターのブランディング施策を設計することとなります。
ブランディングの効果、メリット
企業価値の源泉となる非財務資本
企業のバランスシートに表れる財務資本だけでは、企業価値は図れません。
非財務資本の中核をなす人的資本に始まり、ブランドも無形資産として企業価値の源泉となります。
アウターブランディングの効果、メリット
-顧客、取引先、株主他(ステークスホルダー)への発信・共感・意識-
- ・企業価値の向上。独自の価値で他者との差別化ができる
- ・価格競争に巻き込まれない
- ・取引の継続率(リピート率)が高まる
- ・企業の信頼性が高まる
- ・広告予算の削減
インナーブランディングおよび採用ブランディングの効果、メリット
-従業員、採用(求職者、学生)他への発信・共感・意識-
- ・企業文化の醸成、会社の存在意義・やりがいを感じることができる
- ・エンゲージメント、チーム力を高めることができる
- ・優秀で自社にマッチした人財が採用できる
- ・自信、モチベーションが高まる
- ・日常業務での判断基準が明確化され、業務効率の改善
ブランディングは、売上向上や利益率改善だけでなく、アウター・インナーとあらゆる側面において企業価値を向上させ、利益をもたらすことにつながります。
コーポレート・商品・サービスに関わらず、ブランド構築は長期的な取り組みであり、短期的に構築することはできません。だからこそいち早くブランディングに取り組み、持続的なブランド育成を行うことで、本質的価値を形成し、他社との差別化を図る必要があります。ブランディングでは表面的な要素を整えるのではなく、ブランド構築のバリューチェーンをしっかりとデザインすることが大切です。
ブランディング実現のために、まず「ブランドビジョン(コンセプト)」を明確にする。
その上で、ブランドの核となるイメージを設計し、ブランド戦略を創り、アウター・インナーそれぞれのブランディング活動の具体的な目標(KPI)を実装することで、企業の価値向上につなげていただきたい。