近年、企業価値はバランスシートなどで計れる「財務資本」だけではなく、人的資本やブランド価値などの「無形資産」も企業の戦略的資産として重要視されるようになってきています。特にブランド価値は、生活者の行動変化・デジタル化・競争激化の中で、競争力を維持し、持続的な成長を達成するための、非常に重要な要素と考えられています。
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図1:<調査設計全体像イメージ>
出所 : タナベコンサルティング作成
ブランドエクイティを向上させる重要性
ブランドエクイティ(Brand Equity)=消費者の心の中に形成されるブランドの価値
前段で説明したとおり、ブランドの価値を向上させることにより、企業価値自体の向上に繋がっていきます。ここでは、具体的にどのような効果があるのか、少し触れてみます。
まずは、ブランド価値の高いサービス・商品をもつ企業は、価格競争に巻き込まれることなく、価格設定の柔軟性が高まり、利益率が高まります。そして、顧客ロイヤルティが高まり、安定した売上の確保を可能にします。また、マーケティング活動の効率化にも影響を与え、ブランド力により新規顧客の獲得や既存顧客の維持に有利に働きます。結果として、長期的なコスト削減と収益増加に寄与します。
このようにブランドエクイティの構築と維持は大きなメリットがありますが、簡単なことではありません。
企業には、戦略的に長期的な視点で一貫性と継続性をもった取り組みが必要とされます。しかし、結果として企業価値が向上し、競合他社に対する持続的な競争優位性を実現し、長期的な成長へと繋がります。また、就職活動者への認知や信用から、採用への好影響や上場企業においては、投資家の信頼を得やすくなり、株価の安定や上昇が見込まれ、好循環に寄与します。
ブランドエクイティを向上させるためのポイントとは?
最重要ポイントは、一貫性のあるブランドビジョンを長期的な取り組みで、継続性をもって取り組めるか
ブランドエクイティを向上させるための、重要なポイントをここでは説明します。
まずは、ブランド価値の整理を実施することです。社内外のブランドイメージ調査や認知度調査、競合分析から製品の特長・デザイン・価格・ブランドの歴史や価値観など様々な要素から、ブランドの強み・弱みを正確に把握し、競合他社と差別化する独自価値を明確に設定します。注意点は、社内の調査だけ、社外の調査だけなど、情報に偏りが無いようにしていくことが重要です。
つぎに、前段で整理したブランド価値を目指していくブランドビジョンへ落とし込んでいきます。そして、正しく伝えるためのブランドメッセージへ展開していきます。ここで重要なのは、ブレない一貫性のあるブランド価値を作り上げていくことです。WEBサイトやパンフレット・広告・顧客接点など全てのブランドコミュニケーションのタッチポイントで、統一されたメッセージを展開することが、ブランドの認知と信頼を築きます。
最後のポイントは、長期的なブランディング活動により継続性をもった取り組みにしていくことになります。顧客とのブランドコミュニケーションにより、認知度やエンゲージメントなどKPIを設定し、定点調査を行いながら改善を推進し、更なるブランドへの信頼感を高めていくことが重要です。
これらのポイントを総合的に実践することで、ブランドエクイティを向上させ、長期的な競争優位性と企業価値の向上をはかることが可能になります。
ブランディングを推進するための優先順位は?
アウターブランディングにも繋がるインナーブランディングの重要性
ブランドエクイティ向上に向けたブランディングにおいて、まず取り組まなければならな活動はインナーブランディングです。
従業員にブランドの価値観やビジョンを共有し、ブランドの重要性を教育し、情報共有を通じてブランドへの共感を醸成していきます。自分ゴト化を推進し、ひとりひとりがブランドのアンバサダーとして活躍することが、ブランディング活動における最も重要なポイントとなります。
従業員が理解、共感できなければ、顧客やステークホルダーにブランド価値が伝わることは絶対にありません。トップからのブランドメッセージを伝えるタイミングを作り、理解浸透を図るワークショップを実施するなど、社内でも役職関係なく一貫したブランド理解を深めるための環境を整えていきましょう。
これらの取り組みが、アウターブランディングに繋がるだけではなく、従業員のモチベーション向上やエンゲージメント向上にも繋がっていきます。
アウターブランディングに関しては、設計したブランドメッセージを広告やキャンペーン・PR活動・ソーシャルメディア戦略などを通じて展開していきます。注意点は何度も記載している一貫性になります。顧客と、どのタイミングのコミュニケーションであっても、同様のブランドイメージを思い描いてもらえるように発信していきましょう。ブランドコミュニケーション手法は、ターゲットのニーズやトレンドに合わせた展開を実施し、従業員同様にターゲットにも共感を持っていただく体験を提供し、ブランドとのエンゲージメントを高め、ブランドエクイティを向上させます。
本コラムを参考に、ブランドエクイティ向上をはかるブランディング活動を実施いただき、企業価値向上に繋げてください。
AUTHOR著者
執行役員
ブランド&PRコンサルティング事業部
竹綱 一浩
ブランディング戦略パートナーとして、SNSなどのデジタル活用や動画活用を得意とし、ブランド構築からコミュニケーション設計までリアル×デジタルでブランド価値を最大化するコンサルティングを実行。戦略策定から、実行推進を並走しトータルでサポート。特にブランドストーリーに沿った企画とその推進マネジメントを通じた人材育成で、クライアントから高い信頼を得ている。