ブランディングと聞くと、主にBtoCの商材や企業について独自の価値を見つけ、そのターゲットやポジショニングを明確にすることで、差別化を図る目的として認識されていることが多いようです。
BtoB企業においては、ブランディングの有効性がまだまだ知られていないように感じられます。それは以下のようにビジネスの範囲が限られていることが多いことと、ブランディングは全ての人(一般消費者)に対して実施するものという誤解があるからではないでしょうか。
- ・いつも決まった顧客と取引しているため、自社のブランドを高める必要はない。
- ・取引先に営業を続けている限り、十分に取引が生まれているので課題感を感じない。
- ・ブランディングは必要だと思うが、喫緊の課題は目の前の売上・利益と考えている。
特に「売上に直結しない」という理由が多くを占めているように思います。しかし、BtoBブランディングには「自社を選んで欲しい人に、競争をせずに選んでもらえる」というメリットがあります。「自社を選んで欲しい人」というのは顧客のことであり、採用においては、求職者のことでもあります。

「顧客に選んでもらえる」というメリット
新規顧客の獲得や販路の拡大ができれば売上に直結します。そして、この役割を果たすのがブランディングです。
新しい顧客となりうる企業が取引先を探す場合、価格も品質も同じ競合他社がいたとしたら、彼らは何を判断材料にするでしょうか。それは、企業の信頼感と安心感です。
もし通販サイトで同じ商品を同じ金額で販売している店舗が複数あった場合、多くの人は「どちらの企業が安心だろうか?」を調べるのではないでしょうか。BtoB企業の場合も同じことが言えるのです。
自社独自の価値を見つけ、それを顧客となりうるターゲットに届けて、自社を選んでもらう。
これによって顧客との関係性は向上し、価格競争の場で戦うことも少なくなるメリットがあります。
逆にブランディングができていないと、価格競争に巻き込まれ、価格を下げることで利益が減り、利益が減ることで人材確保や商品開発の余力がなくなり、競争力が更に低下する・・・という負のスパイラルに陥るリスクはよく知られていることです。
求職者に選んでもらえる、というメリット
BtoBのブランディングが有効なもう1つの大きな理由は、採用面の課題解決にあります。
特に、急速に進歩するAI等の技術や、コロナ禍に見られる疾病や災害など将来・先行きが不透明で予測が困難な時代(VUCA)において、特に重要視されています。
現代の求職者は企業のスペックで判断するだけではなく、今の時代の変化に対応していけるのか?そのための決断や揺るぎない意思や想いがあるのか?といった点を見ています。また、Z世代やミレニアル世代といった若手の求職者は、特にこれらに共感が持てるかどうかを重要視しています。
彼らに共感してもらえるような企業の価値や魅力はどこにあるのか・・・
それを見つけて届けるのが、ブランディングなのです。
BtoBブランディングを始めるときのポイント
最初は「ホームページを新しくしたい」でも良い
いざ「ブランディングを始めよう」と決意をしたとしても、何から始めたらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。はじめは慣れない言葉やフレームワークに戸惑うこともあると思います。
わかりやすい始め方としては「ホームページが古いので新しくしたい」や「50周年の記念ツールを作りたい」など、取り組むイメージが沸きやすいプロジェクトをきっかけにしてみると良いと思います。
その中で、しっかりと自社を振り返り、伝えたいことを整理するように努めていくと、「自社の価値や魅力はどう表現すれば良いのか?」「そもそも自社の価値は何なのか?」「自社の魅力は社内で共通の認識が持てているのか?」という壁にぶち当たることでしょう。
そこでブランディングの必要性をより認識できるかと思います。
マーケティングの視点も必要
ブランディングとは、企業の価値を定義し、それをターゲットから認めてもらうことですが、その価値を伝えなくては始まりません。適切なターゲットに「私たちの価値はこれです」と広めていくのはマーケティングという取り組みです。ブランディングを進めながら、マーケティングの視点でも計画を立てておくことが重要と言えます。
BtoBブランディングの取り組み事例
創業から50年という節目にあたり、周年事業の1つとして自社のブランド力をより強化するための施策をご提案
建設機械、環境リサイクル機械のレンタル事業を中心に、社会インフラを担っているA社。
これまで長年にわたってA社を支えてきた取引先や社員への感謝、自社の未来に向けたメッセージを伝えるため、コンセプトづくりからご支援しました。
周年の記念ロゴマークをはじめ、スローガン、ブランディングムービー、それらをまとめた周年限定の自社紹介ページ(ランディングページ)を制作し、新経営理念やビジョンを社内外へ発信/浸透を促しました。
50th ANNIVERSARY
スローガンから想起したブランドムービーでは、A社をより身近な企業として表現しています。また自社紹介ページ(ランディングページ)では会社の歴史を沿革にまとめ、時代の中でA社がこれまで培ってきた足跡を振り返って紹介しています。
取引先の企業には、メッセージを通じて自社をより深く知ってもらう、社員や求職者にはこれからの挑戦や経営者の想いを知ってもらうことを目的としています。
周年事業を通じてA社の想いを社内外に広く伝えることができ、特に社員の皆様には50年の歴史と重み、そして次のステップへ進む企業の想いを感じていただく良いきっかけとなりました。周年事業のご担当からは、インナーブランディングの効果を感じているとご好評をいただきました。
周年をきっかけにブランディングを強化するBtoB企業が増えています。ぜひこの機会に取り組むことをおすすめします。
AUTHOR著者
ブランドコンサルティングDiv.
安藤 慶太
広告制作会社、ブランディングエージェンシーでコピーライター/ブランドコンサルタントとして企業/製品・サービスブランディングに従事した後、ジェイスリーに入社。ブランドの構築から戦略策定、戦術の展開までをワンストップで対応。 食品/飲料/酒造メーカー、化粧品、化学、物流、航空、観光、不動産、アパレルなど、さまざまな業界のブランディング戦略・マーケティング戦略を支援。

