COLUMN

2025.11.20

ビジネスモデルを構成する収益モデルとバリューチェーン

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ビジネスモデルを構成する収益モデルとバリューチェーン

競争優位の源泉や、コスト削減や効率化の可能性を明らかにするフレームワークとして重視されるバリューチェーン分析。顧客への提供価値や競合が模倣できない競争優位の源泉を特定し、収益モデルを強化するバリューチェーン分析は、ビジネスモデルの構築や分析において欠かせない存在です。ここでは、ビジネスモデルの構築においてバリューチェーン分析が重視される理由、分析のステップ、付加価値創出のポイントについて解説いたします。

バリューチェーンとは

バリューチェーンは、1985年にマイケル・ポーター氏が提唱した経営戦略のフレームワークであり、企業が製品やサービスを顧客に提供するまでの一連の活動を体系的に分析する枠組みです。企業活動を「主活動」と「支援活動」に分け、それぞれがどのように価値を生み出し、収益に貢献しているかを明らかにします。

主活動

製品やサービスの直接的な創出に関わるプロセスであり、具体的には以下の5つに分類されます。

購買物流

原材料や部品の調達、保管、配送管理。

オペレーション

製品やサービスの製造・加工。

出荷物流

製品の保管、配送、流通。

マーケティングと販売

顧客への製品・サービスの提供と販売促進。

サービス

製品やサービスのアフターサポート。

支援活動

主活動を支える間接的なプロセスであり、以下の4つに分類されます。

調達

資材やサービスの購入。

技術開発

製品やプロセスの改善。

人事管理

人材の採用、育成、管理。

全般管理

経営戦略、財務、法務などの管理業務。

バリューチェーンの目的は、これらの活動を分析し、どの部分で競争優位性を発揮できるか、またどの部分でコスト削減や効率化が可能かを明確にすることです。
自社が付加価値を発揮しやすい機能に資源(ヒト・モノ・カネ)を集中投下し、新たなビジネスモデルを展開していくことが求められます。(図1)

バリューチェーンとは

※タナベコンサルティング出典

ビジネスモデルの構築・分析でバリューチェーンが重視される理由

バリューチェーンがビジネスモデルの構築や分析において重視される理由は、企業が競争優位性を確立し、持続可能な収益モデルを構築するための基盤を提供するからです。以下にその具体的な理由を挙げます。

競争優位性の源泉を特定できる

バリューチェーン分析を通じて、企業は自社の強みや他社との差別化ポイントを明確にすることができます。生産プロセスの効率性、独自の技術、優れた顧客サービスなど、競争優位性の源泉となる隠れた要素を特定することで、戦略的な意思決定を実現します。

コスト構造の最適化

バリューチェーン分析は、各活動におけるコスト構造を詳細に把握する手段を提供します。これにより、無駄を削減し、コスト効率を向上させる具体策を講じることができます。

付加価値の最大化

顧客が求める価値を創出するためには、どの活動が最も重要であり、どの部分にリソースを集中すべきかを理解する必要があります。バリューチェーン分析は、顧客にとっての付加価値を最大化するための指針を提供します。

収益モデルの強化

バリューチェーンを活用することで、収益モデルの中核となる要素を明確にし、収益性を高めるための戦略策定を可能にします。たとえば、サブスクリプションモデルやアフターサービスの強化など、収益を多角化するための新たな機会を見出すことが可能です。

ビジネスモデルの構築・分析でバリューチェーンが重視される理由

バリューチェーン分析のステップ

バリューチェーン分析を効果的に行うためには、以下のステップを踏むことが重要です。

活動の特定

まず、企業のバリューチェーンを構成する主活動と支援活動を洗い出します。これには、製品・サービスが顧客に届くまでのすべてのプロセスを詳細にマッピングする作業が含まれます。

コストと価値の分析

次に、各活動におけるコストと価値を分析します。どの活動が最もコストを要しているのか、またどの活動が顧客にとっての価値を最も生み出しているのかを明確にします。

競争優位性の評価

各活動が競争優位性にどのように寄与しているかを評価・検討します。他社と比較して優位性を発揮している活動を特定し、さらにそれを強化する方法を検討します。

改善策の策定

分析結果に基づき、バリューチェーン全体の効率を向上させる具体的改善策を策定します。これには、新技術の導入、外部企業との連携強化などが含まれます。

バリューチェーン分析のステップ

他社に負けない付加価値を創出する

バリューチェーン分析を活用して他社に負けない付加価値を創出するためには、以下のポイントに注力する必要があります。

顧客視点の徹底

顧客が求める価値を深く理解し、それに応えるための活動を強化します。たとえば、顧客満足度を向上させるためのアフターサービスの充実や、製品のカスタマイズ性を高める取り組みが挙げられます。

イノベーションの推進

技術開発やプロセス改善を通じて、他社が模倣できない独自の価値を創出します。たとえば、製造プロセスの自動化やAIを活用したデータ分析による効率化が考えられます。

サプライチェーンの最適化

購買物流や出荷物流の効率化を図ることで、コスト削減と顧客満足度の向上を同時に実現します。たとえば、在庫管理システムの導入や配送ネットワークの最適化が有効です。

パートナーシップの活用

外部パートナーとの連携を強化し、バリューチェーン全体の価値を高めます。たとえば、サプライヤーとの協力による原材料の品質向上や、販売代理店との連携による市場拡大が挙げられます。

他社に負けない付加価値を創出する

まとめ

バリューチェーンは、企業が競争優位性を確立し、持続可能な収益モデルを構築するための強力なフレームワークです。主活動と支援活動を体系的に分析することで、コスト削減や付加価値の創出、収益性の向上を実現することが可能です。
特に中堅企業においては、限られたリソースを最大限に活用し、競争の激しい市場で生き残るために、バリューチェーン分析を活用することが重要です。顧客視点を徹底し、サプライチェーンを最適化することで、他社に負けない付加価値を創出し、持続的な成長を実現します。
バリューチェーンを重視した経営は、単なるコスト削減や効率化にとどまらず、未来を切り拓くための戦略的なアプローチです。企業規模や業種を問わず、バリューチェーンの視点を取り入れることで、経営の質を高めることができるでしょう。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
アソシエイト

杉野 嵩悟

新規事業戦略支援やマーケティング戦略支援の業務に従事し、マーケットデータの分析やビジネスモデル分析、成功事例分析などを通して、クライアントサクセスに貢献している。信頼され、親しまれ、長期的な成功に導くコンサルタントを目指し、日々業務に励んでいる。

杉野 嵩悟

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