COLUMN

2025.11.20

バリューチェーンとサプライチェーンの違いとは?
それぞれの役割と事業戦略の進め方

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バリューチェーンとサプライチェーンの違いとは?それぞれの役割と事業戦略の進め方

バリューチェーンとサプライチェーンは、企業の価値創出と効率性向上に欠かせないフレームワークであり、相互補完的な関係です。バリューチェーンが価値創出のプロセスに焦点を当てているのに対し、サプライチェーンは原材料調達から消費者の手元に届けるまでの一連の点に焦点を当てています。レジリエンス強化や環境配慮型のサプライチェーン構築が重視される近年では、サプライチェーンは事業継続性や競争力、社会的責任に直結する経営戦略の根幹をなすようにもなっています。
これを事業戦略に活かす際には、自社の成長ドライバーを見極めたうえで両者を連携させる全体最適を目指す視点や、市場や技術の変化に対応できる柔軟な再設計を前提とすること、事業特性に応じたポートフォリオごとの設計が肝要です。

バリューチェーンとサプライチェーンについて

バリューチェーンとサプライチェーンそれぞれの役割

事業戦略を構築する上で、バリューチェーンとサプライチェーンは異なる役割を担います。バリューチェーンは「提供価値創出のための内部活動の連鎖」、サプライチェーンは「原材料の調達から製品が顧客に届くまでの外部プロセス」を示します。経営資源の戦略的な配分や競争優位性の確立のためには両者の理解と使い分けは欠かせません。

バリューチェーンとは?

バリューチェーンとは、企業が製品やサービスを顧客に提供するまでの一連の活動を「価値の連鎖」として捉えたものです。経営学者マイケル・ポーターによって提唱され、主活動(例:物流、製造、販売、サービス)と支援活動(例:人事、技術開発、調達)に分けて分析されます。また、このフレームワークを用いることで、自社の強みや収益性の源泉、競争優位性の要因を可視化し、どの活動に注力すべきかの戦略的な判断を可能にします。たとえば、サービスに強みがある企業は、アフターサポートの差別化に経営資源を集中させて付加価値を高める戦略とします。このように、バリューチェーンは、企業内の活動を再定義し、どの価値を顧客に届けるかを明確にする羅針盤となります。

サプライチェーンとは?

一方、サプライチェーンは「供給網」と訳され、原材料の調達から製品の製造、流通、販売、そして顧客に届くまでの一連の外部プロセスを指します。サプライチェーン・マネジメント(SCM)は、全体最適の視点で物流・在庫・調達・販売計画を連携させ、コスト削減と納期短縮を同時に実現することを目的としています。
近年では、地政学リスクや自然災害、パンデミックなどの影響を受け、サプライチェーンのレジリエンス強化が重要視されています。また、脱炭素社会への移行に伴い、環境配慮型サプライチェーンの構築も企業戦略上の大きなテーマとなっています。サプライチェーンは、単なる物流や調達の効率化ではなく、事業継続性・競争力・社会的責任に直結する経営戦略の根幹をなしています。

バリューチェーンとサプライチェーンについて

バリューチェーンとサプライチェーンの活用方法

バリューチェーンとサプライチェーンの関係性

バリューチェーンとサプライチェーンは、企業の内外で価値を生み出すプロセスであり、相互補完的な関係にあります。前者が企業内の価値創出に焦点を当てるのに対し、後者は企業を取り巻く外部環境における効率やスピードを最適化します。両者を同時に俯瞰し統合的に設計することは、持続可能な事業成長につながります。

事業戦略を組む上でのバリューチェーンとサプライチェーンの使い分け

事業戦略を策定する際には、自社の成長ドライバーがどこにあるのかを見極めたうえで、バリューチェーンとサプライチェーンを使い分けることが重要です。たとえば、製品やサービスそのものの価値向上が差別化要因となる場合は、バリューチェーン分析を通じて価値の源泉を深掘りします。一方、コスト競争力や納期対応力が競争優位のカギを握る業種では、サプライチェーンを見直すことが成果に直結します。
また、複数の事業や商品群を展開している企業においては、それぞれのポートフォリオごとにバリューチェーン・サプライチェーンの設計を最適化することを中長期の成長戦略として求められます。

バリューチェーンを活用した事業戦略事例

建設重機メーカーA社では、バリューチェーン分析を通じて「製品開発」と「アフターサービス」が自社の強みであることを再認識しました。従来は製造工程や営業活動への投資を重視していましたが、顧客からの信頼や満足度がリピート受注に大きく寄与していることがわかり、アフターサポートを強化する方向へ戦略を転換しました。
具体的には、保守・メンテナンス体制の全国展開、IoT技術を用いた故障予知システムの導入などのサービス部門への投資を強化し、顧客満足度の向上と解約率の低下を同時に実現させLTVを飛躍的に向上させました。バリューチェーンは、単なるコスト分析ツールではなく、どの価値活動を基軸に競争力を高めるかを明確にするための戦略思考を促します。

サプライチェーンを活用した事業戦略事例

食品メーカーB社は、原材料の価格高騰と納期遅延によって製品供給に課題を抱えていました。そこで、サプライチェーンの見直しを掲げ、複数の調達先の確保、需要予測の高度化、物流業務の内製化などに取り組みました。加えて、情報連携システムを刷新し、需要~調達までのリードタイムを40%短縮、欠品リスクを大幅に低減することに成功しました。
この際、原材料の調達ポリシーを、サステナビリティを意識したものへ刷新し、環境・社会に配慮したこの取り組みをマーケティングに活用、ブランド価値向上にも成功しました。
これは、サプライチェーンの見直しが、単なるコスト削減に留まらず事業の継続性や社会的評価を高めることに大きく貢献した事例で、戦略領域のフレームとしても有効であることを物語っています。

バリューチェーンとサプライチェーンの活用方法

まとめ

今後抑えておくべき3つのポイント

今後、バリューチェーンとサプライチェーンを事業戦略に活かすためには、以下の3つを抑えることが重要です。

全体最適の視点を持つ

部門最適でなく、企業全体の価値創出と効率性を俯瞰する。

柔軟な再設計を前提とする

市場や技術の変化に応じ、チェーンの見直しを継続的に行う。

ポートフォリオごとの設計を行う

複数事業を持つ企業は、事業特性に応じたチェーン設計が求められる。

最後に

事業戦略の高度化が求められる今、バリューチェーンとサプライチェーンの活用は、単なる理論にとどまらず、実践的な経営判断の指針となります。自社の提供価値と経営資源の最適配置を見直すことで、変化の激しい経営環境下でも確かな成長軌道を描くことが可能です。今こそ、チェーンの再構築を通じた価値創造型経営への転換が問われています。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
コンサルタント

林 祐太

営業コンサルティング会社にて、IT・製造・人材・WEBマーケティング業界などへ新規事業開拓のコンサルティング及び、営業戦略・戦術の立案に従事したのち、当社に入社。前職の経験から、業界や規模を問わず、営業面の業績改善や新規事業の立上げなどを得意とする。

林 祐太

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