COLUMN

2026.09.29

中堅企業が実装すべき財務戦略
~企業存続の最大の危機は「事業承継」~

  • 事業承継

中堅企業が実装すべき財務戦略~企業存続の最大の危機は「事業承継」~

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本コラムは、ダイヤモンド社発行の「コーポレートファイナンス戦略」の第6章の抜粋記事です。

企業存続の最大の危機は「事業承継」

世間一般では、企業がつぶれる原因は社長が欲に目がくらんでとんでもない間違いをおかすからであって、無理をせずにおとなしくしていれば自ずと存続するはずだと思われているフシがある。また、「優秀な社員と一流の顧客を持つわが社がつぶれるはずはない」と豪語して、戦略と方針を現場任せにして社員の前にほとんど姿を見せない社長もいる。そのため日本では、会社を倒産させた社長がまるで社会の落ちこぼれであるかのような扱いを受けることも珍しくない。
だが実際は、何もしなければ企業はつぶれるのである。気まぐれな顧客、隙をうかがうライバル、浮き沈みの激しい景気、進化が著しいデジタル技術など、経営環境は目まぐるしく変化する。経営に絶対安泰はない。企業を次代へつなぐことがいかに難しいか―この事実にTCGは1957年の創業以来、正面から向き合ってきた。「企業はつぶれるようにできている」というのが私たちの経験則である。だからこそ、つぶさせないように社長は新たな〝挑戦投資〟を絶えず繰り出して自ら変化し続け、企業を持続的に成長させていく必要があるのだ。
東京商工リサーチの調べによると、日本には創業100年超の老舗企業が4万5189社(2024年)あるとされる。現在、日本国内には約368万社の企業があるといわれており、「100年企業(創業100年超企業)」の割合は1.2%にすぎない。企業の存続がいかに難しいかを物語っている数字である。
企業の存続を脅かす最大の危機は、販売不振でも過剰投資でも債務超過でもない。「事業承継」である。柱と梁、パイプライン、交差点、オリンピックの陸上リレー競技など、たいていの物事は「継ぎ目」からほころびやすいが、企業もそうである。創業者や先代社長の後を継ぐ者が、経営をうまくバトンタッチできなければすべてが崩れてしまう。「事業に成功して50点、承継ができて100点」といわれるように、経営を後進に託すまでが社長としての重要な仕事なのである。
国税庁の「令和4年度会社標本調査結果」によると、日本の全法人数の98%は同族会社(オーナー企業)である。したがって、事業承継をめぐる問題のほとんどはオーナー企業に関するものと考えていい。オーナー企業は事業承継において2つの立場から検討を迫られることになる。1つ目はオーナー株主個人としての立場であり、2つ目は会社の代表取締役社長としての立場である。
オーナー株主個人の立場としては、節税のための株価抑制もしくは株主利益(創業者利益)確保などの「資本の承継」が主な検討事項となる。一方、会社の社長としての立場であれば企業価値を向上させるために、経営戦略や組織体制(後継者や次世代のボードメンバー)が主な検討事項になる。そして、この両者は一般的にトレードオフの関係になることが多い。節税のための株価抑制を検討するなか、選択肢によっては節税のため企業体質が毀損してしまう恐れもある。反対に、企業価値が高まれば一般的に株価は上がり、オーナー株主個人としては相続税の負担が大きくなる。このトレードオフの関係性のなかで、企業価値を毀損させることなく、承継をさらなる成長のステップにすることが求められる。
承継の選択肢が増えていることに鑑ると、「何が最良の選択肢か」「承継の価値判断基準は何か」をあらためて考え、可能性を広げて準備することがオーナー社長の責務といえる。

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