中堅企業が実装すべき財務戦略
~事業承継の手段として注目されるM&A~
- 資本政策・財務戦略
![]()
閉じる
本コラムは、ダイヤモンド社発行の「コーポレートファイナンス戦略」の第5章の抜粋記事です。
事業承継の手段として注目されるM&A
(1) M&Aの4つのフェーズ
MBOとは異なり、社外の第三者に会社を譲渡するのがM&A型資本承継である。株式の全部、または一部を売却、事業を譲渡することで後継者不在という経営課題を解決する。
他社の傘下に入ることになるため、仮に大企業のグループに入ることができれば経営や雇用は安定する。また、オーナーが持つ株式は時価での買い取りとなるため、保有株式の現金化が可能となる。
以前のM&Aは「乗っ取り」というネガティブなイメージがあったものの、現在では事業承継の課題を解決する経営手法として再認識されている。
次に、M&Aによる承継スキームを解説する。M&Aのスキームはさまざまであるが、大きく4つのフェーズで構成される。
① フェーズ1:意思決定・準備
通常、M&Aは半年~1年超の期間を必要とするため、必要に応じてファイナンシャル・アドバイザリー(FA)やM&A仲介事業者などの支援機関に相談しつつ、整理すべき事項を洗い出したうえで、最終的には経営者自らが明確に意思決定することが重要である。この段階では、支援機関のサポートの下で買い手企業の選定を行い、自社の企業価値算定などを行う。
② フェーズ2:打診・交渉
売り手・買い手企業のトップ面談は、互いの経営理念や風土、経営者の人間性などを直接確認するための場であり、その後の円滑な交渉のためにも重要な機会である。真摯な態度で臨むとともに、相手企業の本質を見極める必要がある。
特に、交渉の際には希望条件の優先付けを行い、絶対に譲れない点と譲歩可能な点を明確化しておくことが望ましい。
③ フェーズ3:クロージング
両社がおおむね取引条件に合意した場合、M&Aのスキームや譲渡対価、役員・社員の処遇など、主要な合意事項を盛り込んだ基本合意を締結する。その後、デューデリジェンス(企業の実態調査)による調査工程を挟んだのち、最終締結や株式などの譲渡、譲渡対価の支払いを経てM&Aは完了となる。
④ フェーズ4:PMI(経営統合プロセス)
M&Aが完了したのち、PMIが行われる。PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)とは、M&A後に行われる経営の統合プロセスのことである。PMIの実施例としては、売り手企業側の取引先への報告や業務フローの見直し、金銭消費貸借契約などに関する名義変更・経営者保証解除、人事制度・その他労務関係の統一化、システムの統合などがあり、3カ月~1年程度の時間を要することが多い。ここも支援機関の協力を得ることで円滑に進めることができるプロセスである。
(2) M&Aによる外部承継
M&Aによる外部承継は、後継者不足に悩む企業にとって新たな希望である。買収する側の企業は、新しい市場への進出や既存事業の拡大をスピーディーに行うことができ、買収される側の企業にとっても、経営資源の充実や技術の向上、さらには経営の安定化を期待できる。このように、M&Aによる外部承継は双方にとってメリットが大きい。
しかし、M&Aによる外部承継には慎重な検討が必要である。企業文化の違いや経営方針の不一致が問題となる場合がある。また、社員の不安や反発も考慮しなければならない。成功するためには、両企業間での十分なコミュニケーションが不可欠であり、事前の準備と綿密な計画が求められる。
M&Aによる外部承継を成功させるためには、買収後の統合プロセスにおいて、企業文化の融合や経営戦略の統一を図る必要がある。また、社員への丁寧な説明と対話を通じて、不安を払拭し、組織全体としての一体感を醸成することが重要だ。
結論として、M&Aによる外部承継は、企業に新たな機会をもたらし、経営の持続可能性を高める有効な手段である。しかし、その成功には企業間の深い理解と綿密な準備、そして統合後の努力が不可欠である。適切に実施された場合、M&Aによる外部承継は、多くの企業にとって価値ある選択となるだろう。
MBO型資本承継・M&A型資本承継の双方とも、後継者不在の中小企業にとって有効なスキームである。しかし、資金調達におけるスキーム検討やPMIなどは、初めて取り組む企業にはハードルが高いため、コンサルタント会社やFA、M&A仲介事業者のような専門機関に支援を受けることが望ましい。
関連記事
-

中堅企業が実装すべき財務戦略~ジュニアボードによる経営者・幹部人材育成~
- 資本政策・財務戦略
-

中堅企業が実装すべき財務戦略~ファイナンス理論における持続的な企業価値向上~
- 資本政策・財務戦略
-

-

-

-

-

中堅企業が実装すべき財務戦略~MBOのメリットとポイント~
- 資本政策・財務戦略





