COLUMN

2023.07.26

人事・組織戦略とは?策定のポイントを解説

人事・組織戦略とは?策定のポイントを解説

MVV・経営理念を起点に、体系的な組織・人事戦略設計を実現するポイントについて解説します。

中期経営計画策定の参考事例を紹介

組織・人事戦略設計の必要性とその背景

人材の価値を最大限に引き出し、企業価値向上へと繋げる

企業価値を向上する源泉として「無形資産」が注目される中、特に人的資本は企業の製品・サービスを差別化する新たな価値を提供する主体として最重要視されています。ステークホルダーが関心を持つのは、「中長期ビジョン・戦略の実現」であり、そのために必要な人的資本をどのように確保していくのかが多くの企業において課題となっています。要は企業の持続的な成長を実現するために「何をやるのか」という戦略だけではなく、その戦略を「誰がやるのか」、そしてその人材を「どうやって確保・活躍させるのか」を示すことが求められているということです。その証拠に、ここ数年企業が掲げる中長期計画においては、上場・非上場問わず人的資本について触れていない例はほぼ見られず、内容もより具体性を増してきています。しかしここで間違えてはならないのが、単に人的資本に関する「指標」を開示すれば良いということではなく、企業価値向上を図り持続的成長につなげる「ストーリー」を明確化し、それらを正しく伝えることが重要であるということです。タナベコンサルティングでは経営の原理原則として、「組織は戦略に従い、戦略は理念に従い、理念は組織で経営されてこそ成果となる」を提唱していますが、自社の経営理念やパーパスを起点とした組織・人事戦略をいかに設計するかが、企業の持続的成長を支えるといっても過言ではありません。

戦略策定において重要視すべき「バックボーンシステム」という考え方

企業戦略の向上において鍵となるのは「自社の経営理念やパーパスを起点とした事業・経営・人材戦略の連動」であることは前述の通りですが、そのストーリーを可視化したのが「経営のバックボーンシステム」です。企業の成長戦略に対して、必要なリソースとしての組織・人材をどう供給していくのか。これを組織戦略と連動させていくためには、企業経営の根幹である経営理念・パーパスを起点に、事業・組織・人材戦略から人材マネジメントシステムまで一気通貫で連動させていくことが必要であり、その考え方の一つとなります。

戦略策定において重要視すべき「バックボーンシステム」という考え方

図1:経営のバックボーンシステム:タナベコンサルティング作成

①出発点は経営理念・パーパス
企業経営の根幹であり、自社の存在意義として表現される理念やパーパスの明確化が、競争力の高い(差別化された)戦略を生み出します。また、それらの戦略を推進する組織・人材に発展することで、戦略推進力の強化に繋がるだけでなく、魅力的な理念・パーパスが社内外の人材を惹きつけ人的資本の増強にも繋がります。

②事業・経営戦略を実現する組織戦略の設計
中長期ビジョン・経営計画の実現に最適な組織デザイン(組織構造)の確立や組織毎のミッションづくりも重要なポイントとなります。組織戦略とは「事業・経営戦略を推進するために社員の力を最大限活かすための組織の姿をあらわすもの」であり、組織デザインは事業戦略と連動します。

※詳細は下記コラム参照
https://www.tanabeconsulting.co.jp/vision/column/detail84.html

③自社の成長戦略をけん引する人材像「人材ビジョン」
経営環境の変化に対応するべく、企業には変革が求められています。既存ビジネスを継続するのみならず、新規事業やグローバルへの展開等、変革の幅が大きいほど、既存の人材では対応できないケースが多く見られます。自社のパーパスを起点とし、事業・経営戦略の実現に必要な人材像を再定義することがポイントとなります。 上記に加えて人材ポートフォリオの設計も必要です。新たに描いた組織デザインに対して、現在どのような人材がどの程度不足しているのか、又は過剰なのかを把握し、人材の育成・調達方針を定めることができます。

④組織・個人の生産性を正しく評価し、活躍を促す「人材マネジメント施策」
組織戦略と人事戦略の連動を最大化するためには、人事制度の再設計も必要です。最近の潮流としていわゆる「ジョブ型」を中心とした制度設計が注目されていますが、組織戦略との連動を前提にするとこれは必然とも言えます。しかし、留意しなければならないのはジョブ型やメンバ-シップ型という種類に優劣はないという点であり、自社の経営環境や採用環境、業種・業態特性を考慮した上で選択をすることが大切です。人材ポートフォリオを描いた上で、自社に最適なマネジメント施策を検討していきましょう。

人材を投資対象として捉える

組織・人事戦略の連動を考える上では、人材を投資対象として捉える必要があります。中長期ビジョンを実現する組織戦略を描いたとしても、既存人材のみで対応できる企業は数少なく、先行投資として費用を投じて拡充していく必要があります。しかしながら、この人材投資を適切に行えている企業はまだまだ少数派であり、企業経営の三大投資として挙げられる「市場開発投資」、「製品・サービス開発投資」、「人材開発投資」の中でも「人材」に関する部分は投資対効果の検証ができていない企業が大半です。設備投資に関しては精緻な投資・回収・返済の計画を作成して管理する一方、人材投資では、育成・回収の計画を作成せず、放置している現状があります。

貴社が実現したいビジョンに基づく事業・組織のあり方を明確化し、けん引する人材がどの程度必要で、どのようにして育成・活躍させるかを、部分的ではなく一つのストーリーの中で考えることが、組織・人事戦略の設計において最大のポイントとなります。

著者

タナベコンサルティング
執行役員
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部

石丸 隆太

金融機関にて10年超の営業経験を経て当社へ入社。クライアントの成長に向け、将来のマーケットシナリオ変化を踏まえたビジョン・中期経営計画・事業戦略の構築で、「今後の成長の道筋を作る」ことを得意とする。また現場においては「決めた事をやり切る」じりつ(自立・自律)した強い企業並びに社員づくりを推進し、クライアントの成長支援を数多く手掛けてきた。

石丸 隆太

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