COLUMN

2023.07.11

組織改革とは?定義と組織開発との違い、進め方のコツを解説

組織改革とは?

組織改革の定義と組織開発との違い

組織改革とは、事業戦略を推進し、企業生産性を高める組織に進化することです。 "組織は戦略に従う"ため、長期ビジョン・中期経営計画を実現するために必要な事業戦略、そしてその事業戦略を推進するために必要な組織となります。 そのため、人事制度の改善や退職率抑止、人材の教育は組織改革のうちの1つの手段と言えます。

類似した表現に「組織開発」という名称があります。 これは、組織で働く人と人との関係性を高め、組織を活性化させる取り組みや支援を実施することであり、主に"人材"にフォーカスした取り組みとなりますので、組織開発は組織改革を満たす充分な要素とは言えません。 人材不足を懸念し新入社員および中途採用の採用強化や人材流出を防ぐための退職率対策など様々な対策を講じる企業が昨今は非常に多いです。

しかし"生産性"という視点からみると、人員数の維持もしくは人員数の拡大は売上高の維持・拡大には直結するものの、"企業生産性の向上"にはなかなか直結しません。 企業は人材で成り立っているため、"人材"にフォーカスした取り組みは必要ですが、組織改革の定義となる"事業戦略を推進し、企業生産性を高める"視点では人材にフォーカスした取り組みは中長期での対策になりがちだからです。

外部環境変化のスピードが速いVUCA時代である現在は、「収益率の改善」「中期経営計画の達成に向けた事業戦略の推進」は経営者が継続して認識している経営課題の1つと言えます。 組織改革とは事業戦略を推進し、企業生産性を高める組織に進化することでありますが、そのためのポイントを4つ紹介します。

組織改革とは?

組織改革で重要となるポイント

ビジョンと3つのアプローチで組織改革を実現する

組織改革で重要となるポイントは主に4つです。

①長期ビジョンの構築もしくは中期経営計画の策定
②事業戦略的アプローチ
③技術・構造的アプローチ
④人材マネジメントアプローチ

繰り返しとなりますが、組織改革は組織開発よりも広義となり、かつ人材にフォーカスした取り組みに限定していません。企業の生産性を向上するために必要な様々なアプローチを実行していくことにあります。

①長期ビジョンの構築もしくは中期経営計画の策定について

何よりも重要なことが長期ビジョンの構築もしくは中期経営計画の策定であり、将来の目標・方向性を決めているかにあります。 短期視点での課題解決だけではなく、目指す会社の姿に向けて組織改革を行っていきます。 昨今の働き方改革をはじめ、2030年問題、2040年問題に対して会社全体がどのように社会貢献価値を維持・向上させ、発展していくかの指針があって初めて組織改革を実行する"基準"となります。

②事業戦略的アプローチについて

代表的なアプローチとして、機能別組織、事業部組織、マトリクス組織、ホールディングス体制など組織の形は様々ですが、事業規模・従業員規模など企業の成長段階に応じて組織を進化(変化)させていく組織デザインが不可欠です。

また直接人員と間接人員の比率や直接人員における一人当り売上高や粗利益をKPIとして設定します。 直接人員とは、営業人員や工事現場社員といった企業の売上に直接影響を与える部門のことを指します。 間接部門は、その直接人員を支える管理部などバックオフィス人員を指します。 どちらの人員も大切ですが、生産性を向上させるためには直接人員と間接人員のバランスが重要です。

新しいチーム組成としてミドルオフィスを設置することで、企業全体の生産性を向上させていく取り組みも挙げられます。 特に労働集約型事業においては人材の人数やレベルによって収益が上下する傾向にあります。 ミドルオフィスメンバーによる業務標準化および生産性の底上げに帰結します。

③技術・構造的アプローチについて

例として、ERPやRPAの導入、原価マネジメントの強化など業務効率を向上させていくアプローチとなります。 DX戦略と類する部分がありますが、DX戦略において重要なことは、ラインメンバー(現場人員)からの要望で都度対応すべきではない、ということにあります。 導入までの流れを紹介しますと、長期ビジョンおよび中期経営計画に連動したDXビジョンや計画を策定し部門最適視点ではなく全社最適視点で意思決定をします。 機能別組織である企業は社長、事業部組織であればどの事業部に投資するかを取締役会や経営会議などの重要会議で決定した後に対象となる事業部長が推進する、という流れになります。

④人材マネジメントアプローチ

人事制度の改善、人材育成の仕組み化、エンゲージメント向上施策(退職抑止)などHR領域全般のアプローチとなります。 留意したいことは、人事制度の改善などの人材マネジメントアプローチは中長期視点での対策および効果になりがちであることです。 短期・中期視点での施策は、①長期ビジョンの構築もしくは中期経営計画の策定、②事業戦略的アプローチ、③技術・構造的アプローチとなります。

組織改革で重要となるポイント

組織改革の進め方のコツ

企業生産性を高めるために一人当りの生産性を高める

組織改革とは、事業戦略を推進し、企業生産性を高める組織に進化することですが、そのための経営数値の基準が必要です。 企業は人材で成り立っているので、企業生産性を高めるためには一人当りの生産性を高めることにスポットします。 その際の生産性を高める数値指標を紹介します。

①直接人員の1人あたり粗利益(事業単位の粗利益÷直接人員数)
②全従業員の労働分配率(一人当り人件費÷一人当り限界利益)

それぞれの組織改革の進め方のコツを併せて紹介します。

①直接人員の1人あたり粗利益について

計算式は事業単位の粗利益もしくは全社の粗利益と直接人員数のバランスとなります。 人数を増やすことで売上高が上昇しても一人当りの粗利益が低下であれば仕組みを見直す必要があります。 たとえば、販売費および一般管理費の科目にある、広告宣伝費・開発費・ソフトウェアなどへの投資をする、直接人員:間接人員の考え方を刷新し、ミドルオフィスの設置による、フロント・ミドル・バックの3者連携の組織を構築していきます。 「ミドル機能がフロント機能のサポートを担う事で"フロント機能の生産性を高め、バック機能の一部業務を『顧客価値志向』で再設計し、ミドル機能に担当させる事で生産性を高める」、このような組織の考え方が重要です。

②全従業員の労働分配率(一人当り人件費÷一人当り限界利益)

労働分配率は、一人当り人件費÷一人当り限界利益にて算出できますが、一人当り人件費を下げるということではありません。 労働分配率は一部の業種を除外して、60%以上で危険信号、70%以上で労務倒産の可能性ありという指標になります。 そのため労働分配率を重要経営指標として捉え、目標数値を設定することで、企業生産性を進捗管理することが重要です。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

名倉 克明

教育業界で統括業務、事業戦略の立案・推進担当役員を経て、当社に入社。中長期経営ビジョン策定・組織開発・人材育成を強みとし、経営計画立案と推進を支援する。多くのクライアントの業績を改善してきた経験を持つ。

名倉 克明

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