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2025.02.25

中期経営計画の策定プロセスと経営企画の役割

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中期経営計画の策定プロセスと経営企画の役割

中期経営計画とは

中期経営計画とは、会社が目指す方向を明確にすることであり、言い換えるなら会社の羅針盤となります。企業の理念や中長期ビジョンを実現するためのロードマップともいえます。不変的な目標である経営理念のもと、中長期ビジョンを描き「あるべき姿」を示し、その達成に向けて3年~5年の具体的な行動や数値目標(KGI・KPI)を設定します。
中期経営計画は、会社の羅針盤だけではなく、そこで働く従業員の行動指針にもなります。

策定した中期経営計画に沿って、各部署・部門がやるべきことを明確にし、更にその実現に向けて各従業員の目標が設定されていくことになります。「あるべき姿」を示すだけでは、絵に描いた餅になってしまうということです。「あるべき姿」と現状とのギャップを認識し、正しい危機感を従業員一人ひとりが持つことが重要です。

中期経営計画とは

中期経営計画の策定プロセス

中期経営計画を策定するステップとしては、以下の通りです。

Step1. 現状分析(現状認識)

まずは、自社が今どこにいるかを徹底的に分析する必要があります。現状を見誤るとその後の設計がどれだけ良いものであっても上手くいきません。どんなに素晴らしい地図を作っても、現在地がわからなければ進むべき方向がわかりません。それと同じように、中期経営計画を作る際には現状を正確に知ることが重要です。

現状分析は多岐に渡ります。ビジネスモデル分析、ポジショニング分析などの事業構造分析、これは内部環境・外部環境ともに分析が必要です。組織・人材分析も次のステップに向けて必要です。そして当然ですが、財務・収益構造分析も実施します。この段階で自社の強み・弱みの現状認識をすることも重要となります。

Step2. 戦略設計(方向性)

次に、現状分析から「目指す姿」を設計していきます。攻めの部分となる事業戦略では、既存事業の拡大戦略や新規事業参入、逆に既存事業がシュリンクするなどのマイナス要因がある場合は、積極拡大はしないなど、現状分析から読み取れる内部環境・外部環境、自社の強み・弱みから戦略を立てていきます。戦略の原則は「選択と集中」です。限られた資源をどこに集中させるのかが重要です。

方向性を設計するにあたり、もう一つ重要なことは「やらないこと」を決めることです。前述の通り、経営資源は限られています。新たな戦略を立てるということはそこに資源を投下しなければなりません。そのためにも撤退戦略を明確にすることは重要です。そして、攻めの経営戦略を設計していきます。組織体制の見直しや戦略実現に向けた人材育成計画や人事制度の見直しなども行います。

さらに、それらを数値計画に落とし込んでいきます。どんなに素晴らしい戦略を立てても収支計画や投資計画が数値として具体的に落とし込まれていなければ、絵空事に終わってしまいます。実際に中期経営計画が進んでいく中で定量的な評価指標となるため、意思を持った数値設計をすることが重要です。

Step3. アクションプラン(具体化)

設計した戦略を実施に進める段階として、アクションプランが必要です。立てた戦略を、より短い期間での目標設定を行い、具体的な行動に落とし込んでいく、いわゆるKPIの設定を行います。各アクションプランに対してKPIを設定することで、進捗状況が把握できます。その進捗状況と計画との乖離を埋めていくことが日々の業務となります。

KPIを管理することで、従業員自身が客観的に自身の業務状況を把握することもできます。漫然と仕事に取り組むのではなく、目標に向かって日々の業務を行うことでおのずと生産性の向上にも繋がります。

中期経営計画の策定プロセス

経営企画部門の役割と責任

(1)従来の役割

経営企画部門は、中期経営計画の立案だけでなく、年度方針の立案や、IR業務、新規事業計画や経営会議の資料準備など、業務内容は多岐に渡ります。経営陣の想いや方針を形にするだけではなく、場合によっては経営陣に提案・提言をすることもあります。経営企画部門は会社のブレーンとして、経営の中枢的役割を担い、各部門との調整役として予算や新規事業など様々な計画の調整も行います。

(2)VUCA時代における経営企画部門の役割

AIを初めとした新技術の台頭やSDGsやCSRの推進が求められるなど現代のビジネスや社会の特徴を表す「VUCA」という言葉があります。これは、変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Complexity)・曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取って社会状況を表し、会社は不確実な環境で効果的な判断や意思決定が求められます。その中で経営企画部門は今まで以上に環境変化を敏感に捉え、対応しなければなりません。

中期経営計画においても、期間中は計画を固定する「固定型」と毎年環境変化に合わせて見直しを行う「ローリング型」があります。それぞれ特徴があり、固定型については目標に対する強いコミットメントが生まれます。但し、計画との乖離が大きい場合や環境変化により前提条件が変わってしまった場合は、計画自体が役に立たない事態にもなりかねません。一方、ローリング型は環境変化に対応しながら計画を見直す点では時代変化への対応が可能となりますが、環境変化を理由にして目標が低くなるなど、設定自体が弱体化する可能性もあります。どちらもメリット・デメリットはあるものの、経営企画部門としては、策定した中期経営計画を実行するだけでなく、環境変化を掴み、計画との比較をしていく必要はあると思います。それは外部環境の変化だけではなく、内部環境変化に対してもいえることであります。

VUCA時代において経営企画部門は会社のブレーンや経営の中枢的な役割だけでなく、今まで以上に「伝達力」が求められます。伝達力は単に伝えることではなく、方向性に対する実行が伴うということです。計画と実務が繋がり目標に向かって進んでいる状況を作る役割を担っていると言えます。

経営企画部門の役割と責任

まとめ

中期経営計画は、中長期ビジョンを描いた「会社のあるべき姿」を達成するための羅針盤であり、経営企画部門は会社のブレーンとして、変化を敏感に捉え、経営を推進していくことが重要となります。常に挑戦と変革が求められる中で、皆さんの柔軟な発想と確かな行動力が、企業の未来を切り開く原動力となります。共に力を合わせ、目標達成に向けて一歩ずつ前進していきましょう。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング
コンサルタント

高嶺 悌

大手小売業発の商業ディベロッパー事業で店舗運営を経験後、当社へ入社。店舗の現状分析・ターゲット・コンセプトの再設定・店舗MD立案から数値計画など一貫した中期計画の策定を強みとしている。 現在は卸売業・建設業などを中心に中期経営計画の策定に従事している。クライアントに寄り沿い、最適解を見つけることを信条とする。

高嶺 悌

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