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組織改革を行う必要性
事例に先立って、組織改革を行う必要性はどのような点にあるかを整理してみましょう。
大きく分けて外部環境の変化と内部環境の問題、そしてコミュニケーションの3種類に分けられます。
- ● 業績不振が続いている
- ● 市場が変化し、今のままでは時代遅れになる
- ● 1つの体制が長く続いた(若返りの必要性)
- ● 自らの経営手腕を問い直す時期にある
- ● 経営者が問題を指摘していても現場の意識が変わらない
- ● 経営層と社員とのコミュニケーションに支障がある
組織改革の失敗5つの事例
組織改革が失敗する要因としてよくあるものを、事例として挙げています。
経営を主導するのは経営者であり、社員に全責任があるわけではありません。経営者の主体性が乏しいことや、コミュニケーション不足に起因するものも多くあります。
① 経営者に意欲がない事例
経営者に意欲がなくて失敗する事例として、次のようなケースがあります。
- ● やる気(本気度)が社員に伝わらない
- ● 経営者が独断で方針を決めている
- ● 専門家の意見を聞かない・相談しない
- ● 改革を継続できない・途中で頓挫する
- ● 現場任せにする・経営者が責任を持たない
経営者は孤独といわれますが、周囲への必要な問いかけをしていないだけかもしれません。
社員と一緒になって改革するという、強い意志に欠けているおそれがあります。
② 組織改革の目的・意義が不明確な事例
組織改革の目的や意義が不明確なことが原因で失敗する事例として、次のようなケースがあります。
- ● 改革の目的があいまい
- ● 共有できる意義はあるが説明不足
- ● 改革することが目的になっている
- ● 名目だけになっている
「全社一丸となる」という言葉がありますが、全社が動くためには共有できる意義がなければなりません。目的や意義があいまいであったり、経営者の思い込みであったりすると、誰も共感できません。
また世の中でいわれていることの受け売りで、形だけの組織改革を実施しようとしている場合もあるでしょう。
③ メリットを社員が感じていない事例
組織改革のメリットを社員が感じていないことが原因で失敗する事例として、次のようなケースがあります。
- ● 経営層からの押し付けになっている
- ● 社員の自発性・主体性が阻害されている
- ● 改革が社員にとってどのようなメリットがあるか明確でない
- ● 具体的な目標が示されていない
- ● 減点主義の評価
- ● 過去の改革の失敗を想像してしまう
- ● 現状変更に不安を感じる
社員のメリットのために組織を改革する、という視点が抜けているおそれもあります。
④ 目的・意義が社内に浸透しない事例
組織改革の目的や意義が社内に浸透しないことが原因で失敗する事例として、次のようなケースがあります。
- ● コミュニケーション不足
- ● 目的の違うコミュニケーションになっている(飲み会・イベント)
- ● リーダーシップの欠如
- ● 社員が上司や上層部に遠慮(敬遠)して望ましい行動をしない
- ● 「現場に問題がある」と経営層が決めつけている
- ● 現場の生の声や事情を聞かない
「飲みニケーション」という言葉が以前からありますが、ざっくばらんに話すためにお酒やレジャーの力を借りるという捉え方は必ずしもよくありません。
とくに組織改革のような重要な問題は、目的を明確にして真正面から話し合う必要があるでしょう。そのために、話しやすい場を設けることが必要です。
⑤ 知識・能力が欠ける事例
知識や能力が欠けることによって失敗する事例として、次のようなケースがあります。
- ● 全社的に新しい情報システムを導入する必要がある場合(DXなど)
- ● 現場の知識・能力が乏しい
- ● 新しいことに抵抗のある社員が存在する
- ● 業務が特定の人材の能力に依存している(属人化)
ノウハウの共有や標準化ができていない場合、知識・能力のボトムアップがスムーズに進まないでしょう。新しいことには、抵抗があるのが普通です。
抵抗をなくすための意義・メリット・ベネフィットが共有されていないおそれがあります。
失敗事例から学ぶべき6つのポイント
上記のような失敗事例から学ぶことは、多々あります。それらを組織改革の各段階での取り組み・行動に落とし込もうとするならば、次のようなポイントとして整理できるでしょう。
① 現状を把握する
組織改革を進めるにあたって、現状把握は非常に重要です。
次のような点を、しっかりと把握しましょう。
- ● 社員の不満点(仕事のしにくさ・居心地の悪さ・評価のされ方など)
- ● 各部署のリーダーが感じている問題点
- ● 現場で起きている問題のある現象
現状把握の方法として、社員同士・社員と経営層とのディスカッションや意見交換を行う場を定期的に設けることや、アンケートを実施して本音を探るなどがあります。
② 問題点・課題を抽出する
組織の問題点や課題を抽出して社内で共有するために、誰が見ても理解し納得できる指摘をする必要があるでしょう。
- ● 問題点を言語化・数値化する
- ● 整理・体系化(系統化)する
たとえば人材配置の問題、能力や技術の問題、組織体制の問題というように、いくつかの系統に分類します。
分かりやすい言葉で表現したり数値化することによって、解決すべき課題を明確にします。
③ 組織改革の目的・意義を明確にする
前述したように、全社が動くためには共有できる意義がなければなりません。
以下のような点について、明確にする必要があります。
- ● なぜ改革をするのか(目的・意義)
- ● どのようになりたいのか(ビジョン)
社員が共感できる意義を全社で共有し、さらに進むべき方向性や将来像を示します。
経営理念をミッション・ビジョン・バリューで捉えるのと同様に、組織改革の理念を作って示す必要があるでしょう。
④ 組織改革に必要な情報を集める
これまで組織が体験したことのない世界へのチャレンジが組織改革であるといえます。そのため、情報収集やリソースの調達は欠かせません。
- ● 改革に適した人材をキーパーソンにする
- ● 社員の知識・能力を高める教育を行う
- ● 外部の専門家からの指導を受ける
- ● 専門的な能力を持つ人材を採用する
注意点として、組織改革プロジェクトのリーダーや主要な構成メンバーを決定する際、優秀な人材はすでに重要なルーチン業務を任されていることが多いため、業務に支障が出る場合があります。専門家の活用、新たな人材の採用を検討しなければならないケースもあるでしょう。
意識改革など、既存の組織に理解を浸透させる方法でルーチンに組み込むことも効果的です。
⑤ 企業内のコミュニケーションを活性化させる
組織改革が失敗する原因として、コミュニケーション不足がよく挙げられます。コミュニケーションを活発にするだけで、自然に解消する問題もあります。
組織改革の目的や意義の浸透のために、各組織のリーダーの意識を変えることが真っ先に必要です。社員への意義の浸透は根気強く、継続的に行う必要があります。
現場に近いキーパーソンによる雰囲気作りや社内報の活用によって、社員が改革を身近に感じられる情報提供を行うとともに、研修による明確な方向づけや表彰などの評価体制作りも効果的な手段です。
⑥ リーダーシップを持続させる
どのような試みも、持続させることが最も難しいといわれます。リーダーシップを持続させるためには、意義に基づいた熱意が必要です。
- ● 組織改革プロジェクトを率いるリーダー(推進責任者)を配置する
- ● 1つの施策で終わらず継続的なPDCAを回す(会議体での定期的な報告などを含む)
- ● 根気強く課題と社員に向き合う
- ● 外部環境の変化に柔軟に対応できる人材を育成する
なにより組織のトップが意義と情熱を持って、改革を推し進める強力なリーダーであり続ける必要があるでしょう。
まとめ
組織改革を失敗させないためには、明確な目的や意義が必要です。
社員が改革を自分ごととして捉えるように、継続的に対話やディスカッションを行います。
組織改革についての社外の情報を収集することも重要で、他社の動向調査や外部専門家の意見を参考にすることも、大きな失敗を防ぐためによい方法です。
そしてなにより、経営者が情熱を持って組織改革の意志を社内外に伝え続けることが重要です。
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