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人事制度

化学メーカーにおける人事評価制度策定のポイント

業界特性を踏まえた化学メーカーの人事評価制度策定のポイントを、事例を交えて解説

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化学メーカーにおける人事評価制度策定のポイント

高い専門性を長期的な目線でポジティブに評価することが、
風土改革・会社全体の競争力向上へと繋がる

化学メーカーにおける人事評価制度の現状と課題

化学メーカーにおける人事評価制度の現状と課題

昨今、化学メーカーの多くは、環境規制への対応やグローバル競争の激化といった課題に直面している。
これらの課題を乗り越え、事業を持続的に成長させるためには、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、会社全体の競争力を高めることが不可欠だ。
そのための基盤となるのが「人事評価制度」である。
本コラムでは、化学メーカー特有の課題を踏まえ、人事評価制度設計のポイントを解説する。

まず初めに、化学メーカーにおける主な課題としては以下が挙げられる。

1.高い専門性への評価

高い専門性を有している社員が多く、管理適性よりも技術適性を伸ばすことが適している社員が存在する。
専門性に報いることができる環境が整っていない場合、社員のモチベーションの低下を招いてしまう。

2.部門間の評価項目設定

製造部門、研究開発部門、営業部門、管理部門など、部門ごとに求められるスキルや成果が大きく異なることが特徴である。
そのため、全社画一の評価基準を設けることが難しく、適切な評価項目の設定難度が高い。

3.挑戦を恐れる風土

化学メーカーの特性上、業務における安全性が非常に重要となる。
業務を安全に進めるという思考が定着しているため、挑戦すべきところで挑戦し切れないデメリットも生じてしまう。

4.適切な成果指標

特に研究開発部門において、開発成果が現れるまでに数年を要することが一般的である。
そのため、社員の努力や貢献を評価に反映することが難しい。

化学メーカーの人事評価制度策定における5つのポイント

化学メーカーの人事評価制度策定における5つのポイント

上記で挙げた課題を踏まえ、適切な人事評価制度を策定することが必要である。
具体的には、以下の要素を盛り込むことが望ましい。

1.高い専門性に報いる

マネジメント職を目指すコースと、技術職を目指すコースを設ける「複線型キャリアパス」を採用することが効果的である。
複線型を採用することで、高い専門性を有する社員を適切に評価できる基盤が整い、自身のキャリアを柔軟に描くことができる。
評価項目の一例として、以下が挙げられる。
例)・マネジメント職コース:組織運営や部下の育成、事業戦略の推進を評価
・技術職コース:特許取得や技術革新への貢献度、専門知識の深さを評価

2.職種別の評価項目を設定

①全職種共有で評価する項目と、②職種ごとの特性を踏まえた職種別評価項目の2つを用意することが望ましい。
これにより、職種ごとに異なる業務内容や成果を正当に評価することができる。
例)「製造部門:安全管理力」、「研究開発部門:課題解決力」、「営業部門:関係構築力」、「管理部門:規律順守」

3.安全性、挑戦への評価を評価指標に組み込む

上記2にも関係するが、化学メーカーの業務には危険が伴うため、特に製造部門においては安全性を評価指標に含めることが不可欠である。
一方、安全性を重視するが故に、挑戦心が減少することも考えられる。
それを防ぐためには、挑戦した社員を正当に評価し、報いる制度が必要だ。
たとえ結果が失敗に終わったとしても、その過程で得られた学びや新しいアイデアを評価することで、社員が積極的に挑戦できる風土を醸成できる。

4.プロセス評価の導入

特に研究開発部門においては、成果が出るまでに時間がかかるため、短期的な成果だけでなく、プロセスそのものを評価する仕組みが必要である。

これらのポイントを踏まえた人事評価制度を策定することで、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、会社全体の競争力を高めることに繋がる。

化学メーカー・人事評価制度構築の事例

化学メーカー・人事評価制度構築の事例

最後に、化学メーカーでの人事評価制度構築の事例を紹介する。

100年以上の歴史を持つA社では、長く積み上げてきた実績や経験を重視するあまり、新たなことへ挑戦する風土が失われていた。

現状維持を正とする雰囲気が漂う中、売上高の伸びは鈍化し、漠然とした将来への不安感が拭えない状況であったが、経営陣は現状打破の起爆剤として、人事制度を再構築することを決めた。

再構築のポイントは「挑戦の推進」である。
よりポジティブに、失敗すらもプラスと捉えるために、評価制度を一新することとした。
挑戦した社員に対して報いることを公言するとともに、挑戦した社員に対して評価点を加算する仕組みの導入や、評価基準を全てポジティブな表現に変更することで、挑戦の後押しを行った。
その結果、低い評価を取ったとしても、前向きに捉え、次の挑戦へと繋げていく風土を醸成したのである。

まとめ

化学メーカーにおける人事評価制度は、長期的な視点を重視しつつ、専門性をきちんと評価し、社員のモチベーションを高める仕組みを構築することが成功の鍵といえる。
持続可能な成長を遂げるためには、社員一人ひとりの力を引き出す人事評価制度が必要不可欠である。
本コラムが、自社の人事評価制度を見直し、未来へ向けた改革を進めるきっかけとなれば幸いである。

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