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2025.01.07

物流業のホールディングス化におけるポイント

  • ホールディング経営

物流業のホールディングス化におけるポイント

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国土交通省の調査によると、1990年から2010年の20年間でトラック運送事業者数は約4万社から約6万3千社に急増し、6割近く増加しました。ただ、輸送量は20年間で約1割程度しか増えず、事業者間で熾烈な貨物の取り合いが始まりました。また、2019年4月から働き方改革の導入によって、労働時間の上限が短縮されたことでドライバーが不足し、思い通りに貨物を運べなくなるなど物流業界を取り巻く環境は厳しい状況にあります。
そこで今回は、環境変化の激しい物流業界において増えているホールディングス化のポイントをご紹介いたします。

ホールディングス化とは

ホールディングス化とは、親会社であるホールディング会社(持株会社)を中心に複数の子会社(事業会社)が事業ポートフォリオを形成し、グループで成長する経営体制を指しています。ホールディング会社が各事業会社の財務リスク管理や戦略立案などを担う一方、各社に権限移譲を進めることで効率的なグループ運営が行えます。また、企業買収や不採算部門の譲渡がしやすく、事業ポートフォリオの最適化(多角化や再構築)をスムーズに行えるほか、親会社が戦略策定や資金調達、人材配置など各事業会社の運営をサポートすることによって、各事業会社は事業に集中できます。併せて事業会社の経営を任せることで、次世代の経営を担う後継者や幹部などの人材育成につなげられるといった利点もあります。

ホールディングス化のメリット・デメリット

企業がホールディングスへ移行する目的は、「多くの経営人材を育てたい」「複雑化するグループ資本系列を整理したい」「M&A戦略を展開するための受け皿にしたい」「資本である自社株を円滑に承継したい」など企業によって様々です。
自社をホールディング化する主なメリットとしては、目に見える形で権限移譲が仕組み化され、自律性の高い事業運営が期待できるほか、ホールディング会社が戦略立案、事業会社は実行推進という分業制により、意思決定の迅速化や経営(業績)責任の明確化、経営効率の向上が見込める点です。また、M&Aを活用した新規事業の買収や不採算事業の売却など事業ポートフォリオ戦略(複数事業の組み合わせによる相乗効果で持続的成長を目指す戦略)を機動的に推進し、成長スピードを加速することができます。
財務面では、連結納税制度によって法人税額を低く抑えられるほか、非上場企業の場合は、株価高騰を抑制できるため事業承継対策になる点もメリットと言えます。さらに人材の観点では、優秀な役員や社員に事業会社社長という経営社登用の機会を与えることで組織が活性化されることに加え、「社長」をゴールとした人材育成や採用が可能になり、リーダーが育ちやすい風土を醸成できます。
一方デメリットとしては、意思決定が事業会社に委ねられるため、各社がサイロ化してグループでの連携を取りにくく一体感も生まれにくい点が挙げられます。また、会社間で部門が重複してコストアップしやすい点もデメリットと言えます。

ホールディングス戦略立案・財務管理 出所:タナベコンサルティング

物流業界におけるホールディング化のポイント

ホールディング化の概要・メリットデメリットについて説明してきましたが、物流業界においてもホールディング化へ移行する企業が増えています。2022年には日本通運がNIPPON EXPRESSホールディングス株式会社を設立し、ホールディングス化を行っています。NIPPON EXPRESSホールディングスのニュースリリースでは、ホールディングス化移行の目的を、「物流事業を取り巻く環境は、新型コロナウイルスの影響により、世界的に不安定かつ予測困難な状況にあることに加え、SDGsやDXへの対応など、グローバルレベルで取り組むべき課題が山積しています。こうした中にあっても、現経営計画で掲げる長期ビジョン「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」の実現に向けて、スピーディーな意思決定と企業グループとしての価値最大化を図るため、経営体制の再編を実施致しました。」と発信されています。先述の通り、ホールディングス化のメリットとして意思決定の迅速化が挙げられます。NIPPON EXPRESSホールディングスにおいて、事業会社各社が自律した経営を推進していく手段として企業組織をホールディングス化されています。
また、少子高齢化による物流業界の従業員不足や長時間労働は将来に渡る課題です。近い将来労働集約型産業である物流業界は労働集約型から装置産業型(大規模な投資により、固有の機械設備や大きな設備を有する産業で、工程の大部分が装置によって処理される)へ変革していくことが迫られている状況です。装置型産業へ移行していくにあたっては、財務基盤の強い企業体力のある企業が投資余力を有することで有利となっていきます。従って、ますます業界再編(M&A)が促進されていく可能性があり、M&Aを推進しやすい企業体はホールディングスのメリットを享受しやすいと言えます。

最後に

物流業界は2024年問題もあり、課題のある業界と思われがちです。ただ、この経営環境をチャンスと捉え、組織再編を行う企業が生き残っていけると考えます。物流機能の一部を担うのではなく、企業のロジスティクス戦略を一手に担うことで高付加価値の事業体へアップデートが持続的な企業発展のポイントになります。
ホールディングス化することで、物流機能のみならず倉庫機能・サプライチェーンの司令塔として活躍する可能性を広げることができます。事業会社が専門化を図るとともに、ホールディングス会社が事業会社をグループ一体となるよう束ねることでグループ全体で付加価値を高められる体制の構築が今後求められます。
M&A戦略を成長戦略に活用する場合は、ホールディング会社が事業会社の経営サポートを担いますが、①グループ理念、②グループ経営企画機能、③グループガバナンス機能、④グループマネジメント機能、⑤シェアードサービスセンター、の5つの機能を自社にどのように実装するかがホールディング会社の充実化を図るポイントです。自社・グループにあったホールディングの構想を描き、変化の激しい物流業界に環境適応できる経営体制を構築していきましょう。

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