COLUMN

2026.05.27

中小・中堅企業でも取り入れたい
TOBとは?
仕組み・義務化要件・目的と
最新動向を解説

  • ホールディング経営

中小・中堅企業でも取り入れたいTOBとは?仕組み・義務化要件・目的と最新動向を解説

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企業の成長戦略や事業再編において、TOB(株式公開買付け)は重要な手法として注目を集めています。特に近年、TOBは大企業だけのものではなく、非上場企業や中堅企業にとっても有効な経営手段として活用されるケースが急増しています。本コラムでは、TOBの基本的な概念、中堅企業がTOBを検討する意義まで、実例を交えながら解説します。

TOB(株式公開買付け)とは?

1.TOBの基本概念

TOB(Takeover Bid:株式公開買付け)とは、上場企業などの株式を不特定多数の株主から株式市場外で買い集める手法です。買付者は、買付期間・買付価格・買付予定株数などを公告し、株主に対して株式の売却を呼びかけます。金融商品取引法に基づく制度であり、上場企業などの株式を一定割合以上取得する際には、TOBの実施が義務付けられています。

2.件数の推移と非上場企業の存在感

TOB件数は近年、増加傾向にあります。2025年は年間136件(届出ベース)に達し、2007年以来18年ぶりに最多を更新しました。東京証券取引所による企業価値向上要請や、親子上場解消の流れ、そして非公開化トレンドの加速が背景として考えられます。注目点は、非上場企業がTOBの実施主体として過半数を占めている実態にあります。2025年データによると、上場廃止を前提としたTOBの80件のうち、ファンド(PEファンド、アクティビスト含む)が22社(27.5%)、その他のMBO目的会社など非上場企業が多数を占めています。※2 TOBは上場企業同士の制度という認識は誤りであり、実際には非上場企業が主要なプレイヤーとなっています。
※東京商工リサーチ:https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202318_1527.html

3.非上場企業によるTOB事例

近年の代表的な事例として、以下が挙げられます。

【事例1】KKRによるマンダムへの対抗提案(2025年)

化粧品大手のマンダムは2025年9月、英投資ファンドCVCキャピタルと連携したMBO(経営陣による買収)を発表し、1株2,520円でTOBを開始しました。しかし同年12月、米投資ファンドKKRが1株3,100円での対抗TOBの提案を行い、最終的にマンダムはTOB価格を2,600円に引き上げました。この事例は、非上場のPEファンドが上場企業の買収に積極的に関与する現状を示しています。

【事例2】日本産業パートナーズ(JIP)による三菱ロジスネクストのTOB(2025年)

非上場の投資ファンドJIPは、三菱重工業の子会社である三菱ロジスネクスト(フォークリフト大手)に対し、買収総額約1,300億円のTOBを実施しました。2025年9月に発表され、12月下旬にTOBを開始する予定です。JIPは三菱重工が保有する約64%の株式も買い取り、完全子会社化を目指しています。これらの事例が示すように、非上場企業は、豊富な資金力と専門的なM&Aノウハウを活用し、上場企業を積極的に買収しています。

TOB(株式公開買付け)の目的

企業がTOBを実施する目的は多岐にわたりますが、主に以下の5つに大別されます。

1.経営権の取得・支配権の強化

他社の経営権を取得し、グループ化や事業統合を進めるためにTOBが活用されます。特に上場企業の株式を短期間で大量に取得する際、株式市場での買い集めよりも効率的です。

2.親子上場の解消・完全子会社化

東京証券取引所の改革により、親子上場の解消圧力が高まっています。親会社が上場子会社をTOBで完全子会社化することで、利益相反の解消や経営の一体化を図ります。2025年には親会社系によるTOBが18件(22.5%)を占めており、この傾向は今後も続く見込みです。

3.非公開化(MBOを含む)

上場維持コストの削減や、短期的な株価変動に左右されない経営を実現するため、企業が自ら非公開化を選択するケースが増加しています。2025年には上場廃止を前提としたTOB・MBOが合計112件に達し、過去最高を記録しました。このうちMBOは32件で、経営陣がPEファンドと連携して自社株式を買い取る方式が主流です。

4.事業再編・シナジー創出

異業種や関連業種の企業を買収し、事業ポートフォリオの再構築やシナジー効果を狙うケースです。技術力や販売網の獲得、規模の経済の実現などが目的となります。

5.敵対的買収への対抗

アクティビスト(物言う株主)や競合他社による敵対的買収に対抗するため、友好的な第三者や経営陣がTOBを実施することもあります。

中堅企業(非上場含む)がTOB(株式公開買付け)を検討するメリット

従来、TOBは大企業の専売特許と考えられてきましたが、近年のデータは、中堅企業や非上場企業がTOBの主要なプレイヤーとなっている現実を示しています。2025年には、TOBの実施主体の過半数を非上場企業が占め、その中には中堅規模の事業会社やPEファンドとの協働案件が多数含まれています。

中堅企業がTOBを検討すべき5つの理由

1.上場子会社の完全子会社化による経営効率化

中堅上場企業が上場子会社を保有している場合、親子上場解消の流れに乗り、TOBで完全子会社化することで、利益相反の解消や意思決定の迅速化を図れます。

2.技術・人材の戦略的獲得

DX推進や新規事業展開に必要な技術や人材を、上場企業の買収を通じて獲得できます。
自社で育成するよりも短期間で競争力を強化できる点が魅力です。

3.PEファンドとの協働による資金調達

中堅企業単独では資金力に限界がありますが、PEファンドと共同でTOBを実施することで、大型買収が可能になります。
ファンドの専門知識やネットワークも活用できます。

4.事業承継・後継者問題の解決

中堅企業が同業の上場企業を買収し、事業規模を拡大することで、後継者にとって魅力的な経営基盤を構築できます。
また、自社がTOBの対象となり、PEファンドに経営を委ねることで、円滑な事業承継の実現も選択肢となります。

5.非公開化による経営の自由度向上

中堅上場企業が自らMBOを実施し、非公開化することで、上場維持コストを削減し、短期的な株価変動に左右されない長期的な経営戦略を推進できます。

東京証券取引所の改革、親子上場解消の流れ、非公開化トレンドの加速により、中堅企業がTOBの当事者となるケースは今後さらに増加する見込みです。特に、地方銀行や地域有力企業による地域内上場企業の買収、中堅製造業による同業・関連企業の統合、中堅企業とPEファンドの協働による非公開化案件などの分野で、TOBの活用が一段と進むと考えられます。

TOBは、もはや大企業だけの手法ではありません。中堅企業にとっても、成長戦略や事業再編の有力な選択肢として、積極的に検討する価値があります。近年では、非上場企業や中堅企業がTOBの実施主体として過半数を占め、親子上場解消や非公開化、事業再編などの多様な目的で用いられており、中堅企業にとっても成長戦略の重要な手段となっています。
今後TOBを戦略的に活用できる中堅企業が、競争優位を確立していくでしょう。

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