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2024.07.12

企業再生とは?注意点やポイントを解説

  • 資本政策・財務戦略

企業再生とは?注意点や成功ポイントを解説

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企業再生とは、経営が困難な状況に陥った企業を立て直し、再び健全な経営状態に戻すプロセスを指します。経済環境の変化、競争激化、内部の不祥事など、様々な要因で企業は経営危機に直面します。そのような状況下で、企業再生は生き残りと持続可能な成長を実現するための重要なステップです。本コラムでは、企業再生の基本概念、注意点、そして成功のためのポイントについて解説します。

コロナ禍以降に急増したゾンビ企業

コロナ禍で多くの企業が経済的な困難に直面しました。この状況を受けて、多くの政府は企業を支援するために大規模な経済対策を講じました。特に注目されるのが、日本における実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」です。2022年9月末時点で約245万件、実行額約43兆円にのぼる資金が中小企業の資金繰りを支えました​​。
しかしながら、これらの支援策は一時的な救済には有効でしたが、長期的にはゾンビ企業の増加を招く結果となりました。帝国データバンクのデータによれば、2022年度のゾンビ企業率は17.1%に達し、前年から3.6ポイント増加しました​​。この急増は、コロナ支援策の影響が長期的に現れていることを示しています。
業種別の動向でみると、2022年度時点の業種別では「小売業」が最も高いゾンビ企業率を記録しており、27.7%に達しています。次いで「運輸・通信業」が23.4%、「製造業」が17.8%と続いています​​。これらの業種は、特にコロナの影響を大きく受けた分野であり、その回復が遅れていることが伺えます。
地域別では、東北地方のゾンビ企業率が21.3%と最も高く、次いで中国地方が20.2%となっています​​。特に東北地方では、東日本大震災以降の金融支援策の影響もあり、依然として借入れ負担が重くのしかかっている状況です。
ゾンビ企業の増加は、経済全体にさまざまな悪影響を及ぼします。非効率な企業が市場に残ることが、資源の無駄遣いや競争力の低下を招きます。健全な企業が市場から締め出されるリスクも高まります。
金融システムにも大きなリスクが生じます。ゾンビ企業に対する追加融資が増加すると、銀行の貸倒れリスクが高まり、金融システム全体の安定性が損なわれる可能性があります。これにより、不良債権の増加が金融危機を引き起こす一因となることもあります。

企業再生の基本概念

■定義と目的
企業再生の目的は、財務的、経営的に困難な状況にある企業を救済し、再び利益を生み出せる状態にすることです。具体的には、負債の整理、事業の再編、コスト削減、新たな収益源の確保など、多岐にわたる対策が講じられます。

■再生のプロセス
1.現状分析:経営状況の詳細な分析を行い、問題点を特定します。現状分析を正しく行えなければ、素晴らしい計画を立てても、企業再生はうまくいきません。
2.再生計画の策定:具体的なアクションプランを策定し、目標を設定します。目標は定量的にする必要があります。
3.実行:計画に基づき、具体的な実行可能な手段を見える化し、会社全体で行動していくことです。具体的とは、誰が見ても同じ行動が取れる内容であることです。
4.進捗管理と評価:定期的に進捗を評価し、必要に応じて計画を修正します。

企業再生の注意点と成功のポイント

■企業再生は容易ではなく、多くの注意点があります。以下に主な注意点を挙げます。
(1)経営陣の覚悟とリーダーシップ
再生には経営陣の強いリーダーシップと覚悟が不可欠です。経営陣が一丸となって再生に取り組む姿勢が求められます。また、従業員の信頼を得るために透明性を保ち、コミュニケーションをしっかりと取ることが重要です。

(2)ステークホルダーの協力
金融機関、取引先、株主などのステークホルダーの協力が不可欠です。特に、銀行からの融資条件の緩和や取引先からの支援を得るためには、信頼関係の構築が重要です。

(3)コスト削減と効率化
再生の過程では、コスト削減と業務の効率化が重要なテーマとなります。無駄な経費を削減し、業務プロセスを見直すことで、生産性を向上させる必要があります。

(4)法的手続きの遵守
企業再生には法的手続きが伴います。特に、会社更生法や民事再生法などの法的枠組みを適切に利用することが求められます。法的なアドバイスを受けながら、法令遵守を徹底することが重要です。

■正確な現状分析
再生の第一歩は、正確な現状分析です。財務状況、業務プロセス、マーケット環境など、多角的な視点から現状を把握し、問題点を洗い出すことが不可欠です。

■成功のためのポイントは以下の通りです
(1)明確なビジョンと戦略
再生の成功には、明確なビジョンと戦略が必要です。短期的な課題の解決にとどまらず、長期的な視点で企業の方向性を定めることが重要です。市場のトレンドを見据えた戦略を策定し、それに基づいたアクションプランを実行します。

(2)人材の活用と育成
再生には優秀な人材の活用が不可欠です。既存の社員のスキルを最大限に活用し、必要に応じて外部から専門家を招くことも検討します。また、社員のモチベーションを高めるための研修やキャリアパスの明示など、長期的な視点での人材育成も重要です。
財務の健全化は再生の基盤です。負債の整理や資金調達の見直し、キャッシュフローの改善など、具体的な財務対策を講じる必要があります。特に、資金繰りの改善は再生初期の重要な課題となります。

(3)持続可能なビジネスモデルの構築
再生後の持続可能な成長を実現するためには、収益性の高いビジネスモデルの構築が不可欠です。新たな収益源の確保や事業ポートフォリオの見直しを通じて、競争力のある事業基盤を築きます。

さいごに

企業再生は、多くの困難を伴うプロセスですが、適切な戦略と実行力があれば成功を収めることができます。経営陣のリーダーシップ、ステークホルダーとの協力、コスト削減と効率化、法的手続きの遵守など、様々な要素が再生の成否を左右します。最終的には、持続可能なビジネスモデルを構築し、長期的な成長を目指すことが重要です。企業再生は一筋縄ではいかない課題ですが、その成功は企業の未来を大きく左右するものであり、その重要性は言うまでもありません。

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