COLUMN

2026.03.10

物流業のシェアードサービス展開|
背景と成功のポイントを解説!

  • 資本政策・財務戦略

物流業のシェアードサービス展開|背景と成功のポイントを解説!

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物流業界は構造的な課題に直面しています。
国土交通省の試算によると、現状のまま適切な対策を講じなければ、2030年度には輸送力が約34%不足する可能性が指摘されています。
また、企業においては、売上高に占める物流コスト比率が上昇しており、荷主側が一定程度物流コストアップを受け入れている状況にありますが、物流業の企業においても値上げに依存し過ぎず、顧客から評価されるような自助努力が必要です。
本コラムでは、物流業の持続的な競争力の確保に向け、業務の集約と標準化を軸としたシェアードサービスの活用を経営戦略として位置づけ、そのあり方について考察します。

物流業におけるシェアードサービスとは

物流業は、近年のデジタル化やグローバル化の進展に伴い、効率化やコスト削減が求められています。
こうした中で注目されているのが「シェアードサービス」です。
「シェアードサービス」とは、複数の事業部門やグループ会社で共通する業務を一箇所に集約し、標準化・効率化を図る運営形態を指します。
元は製造業や金融業から発展した仕組みであり、近年では物流業にもその考え方が徐々に浸透しつつあります。
一般的には経理・人事・情報システム・法務などの事務系機能を対象とすることが多いですが、物流業においては、倉庫管理・輸送・在庫管理などの機能を共有することで、運営コストの削減や、サービスの向上を目指す取り組みとなります。
物流業の場合、出荷管理や倉庫オペレーション・輸配送スケジューリング・受発注管理などの実務領域にも応用が可能です。
単にトラックや倉庫を「共同利用する」だけではなく、データ・ノウハウ・オペレーション、さらには人材までを共有し、全体最適の実現を目指すことも可能な取り組みであり、個社の課題にとどまらず、経営戦略としての取り組みが求められるテーマです。
この背景には、「競争から共創へ」という発想の転換があります。
物流業が直面する、急速な外部環境の変化や人手不足、コスト高騰への対応といった現状を踏まえ、個社最適を追求する時代から、物流業界全体での効率化を目指す(目指さないと成り立たない)時代へと変わりつつあります。

物流業におけるシェアードサービスの展開における着眼点

物流分野でシェアードサービスを展開する際、以下の着眼点が重要です。

①業務プロセスの共通化

シェアード化の前提は、各社の業務を標準化し、共通プラットフォーム上で運用できるようにすることです。
例えば、入出庫の検品ルールや伝票処理の手順を統一することなどで、共同運営がスムーズになります。

②デジタル基盤(情報の共有基盤)の拡充

物流業は伝票・倉庫管理システム(WMS)・輸配送管理(TMS)など多岐にわたるシステムを使用していますが、部門や拠点ごとに異なる仕組みが使われているケースが多いです。
これを共通デジタル基盤(クラウド)上に統合することで、業務フローの標準化とデータの一元管理が実現できます。
リアルタイムで在庫や配送状況を共有できる環境が整えば、輸送効率の可視化や需要予測の精度向上が図れます。

③コストと成果の見える化

シェアードサービスは複数の関係者が関与するため、費用負担や成果配分の透明性が求められます。
KPI(主要業績評価指標)を明確に設定し、業務効率やコスト削減効果を定量的に評価することが不可欠です。

④人材と知識の共有

各拠点で培われたノウハウを中央のシェアードセンターに集約し、社内教育やリスク管理に活用できます。
AIやRPAを活用して定型業務を自動化し、熟練者の判断が必要な領域はナレッジデータベースとして整理することで、全体の品質向上につながります。

⑤パートナー選定の視点

単なるコストシェアではなく、ビジョンを共有し、長期的に価値創出を目指すパートナーシップの構築が必要です。
物流事業者、荷主、ITベンダーがそれぞれの強みを持ち寄る「共創型シェアードサービス」が理想です。

物流業におけるシェアードサービスの展開のポイント

物流業におけるシェアードサービスの成功には、いくつかの重要な展開のポイントがあります。

①機能と責任の明確化

誰が何を担当し、どこまで責任を負うのかを曖昧にしたまま運営を始めると、トラブルが発生した際に原因追及が難しくなります。
業務範囲や責任分担を契約段階で明確に定義しておくことが不可欠です。

②段階的な導入

いきなり全業務を共同化するのではなく、まずは共通性の高い領域から始め、効果を確認しながら範囲を広げていくのが現実的です。
例えば、輸配送の共同化からスタートし、次に在庫管理、さらには需要予測や調達まで拡張していくアプローチが考えられます。

③データドリブン経営の推進

シェアードサービスの最大の強みは、複数企業のデータが集約される点にあります。
このデータをAIや機械学習で分析すれば、需要変動の予測精度向上や在庫削減、配送効率化といった新たな価値を生み出せます。
シェアード化は、単なるコスト削減策ではなく「経営の高度化」を実現するための重要な基盤と位置づけるべきです。
個別の機能の課題ではなく、経営課題と捉えて取り組む必要があります。

④ガバナンスの設計

共同運営では、利害関係者が多いため、意思決定の仕組みを整える必要があります。
運営委員会や合意形成のルールを明文化し、透明で公正な管理体制を築くことが長期的な信頼関係の鍵となります。

法規制や今後の人材動向を踏まえた物流業におけるシェアードサービスの在り方

物流業界では、2024年問題をはじめとする労働規制の変化やトラックドライバー不足が深刻化しています。
労働時間の上限規制に加え、働き方改革関連法や運行記録の義務化など、現場の負担を軽減する体制整備が急務となっています。
このような状況下で、シェアードサービスは「非物流部門の効率化」と「現場支援力の強化」という二面性を持つ施策として位置づけられます。
バックオフィス業務を集約することで、ドライバーや倉庫担当者が本来の業務に専念できる環境を整えつつ、分析や改善提案につながるデータを収集して還元する体制が構築できます。
また、AIによる配車最適化やロボットによる自動仕分け、遠隔監視による倉庫管理など、テクノロジーとシェアードサービスの融合が進み、少人数でも高効率な物流運営が可能です。
さらに、業務の一部を地域センターや外部の専門BPO企業と連携して運営する「ハイブリッド型シェアード」も増加する見込みです。
これにより、地域雇用の拡大やテレワーク人材の活用促進にもつながります。
加えて、外国人労働者の受け入れ拡大や高齢者雇用の推進といった人材多様化の流れの中で、教育や安全管理、評価制度を共有する仕組みの整備が必要です。
AI翻訳ツールやバーチャルトレーニングの活用により、国籍や経験を問わず共通基準で運用できる環境設計が将来的な業務標準となることが見込まれます。

まとめ

物流業におけるシェアードサービスは、単なるコスト削減策ではなく、業界構造そのものを変革するアプローチです。
個社最適の限界を超え、業界全体でリソースとデータを共有し、新たな付加価値を生み出す時代が到来しています。
成功の鍵は、共通化・可視化・協働化の3点にあります。
「共通化によって標準化を進め、可視化によって公正な成果配分を実現し、協働化によって新たなイノベーションを生み出す」、このサイクルを回すことで、物流業はより持続可能で強靭な産業へと進化していくことができます。
シェアードサービスの推進は、社会インフラとしての物流を次世代に引き継ぐための「共創の挑戦」であり、これからの日本物流の競争力を強める鍵となり得ます。

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