中堅企業が実装すべき財務戦略
~経営スタイルと組織成熟度に合わせた
機能構築ステップ~
- グループ経営

閉じる
本コラムは、ダイヤモンド社発行の「コーポレートファイナンス戦略」の第4章の抜粋記事です。
グループ経営システムの構築は、現状の経営スタイルや組織成熟度によって制約される。単純に規定やルールをつくっても、適切に運用されなければ無理・無駄が生じ、本来の目的である「グループ経営による競争力発揮」は実現できない。グループ経営システムの構築のポイントを段階別に解説する。
(1)導入段階
グループ経営システムの導入段階では、社長が自らの経営判断に基づいて意思決定を行う、いわゆる「ワンマン型意思決定スタイル」であることが多い。ワンマンの意思決定自体が悪いわけではないが、経営判断を社長に依存してしまうことはリスクである。そのため、組織で経営する体制の整備を考えなければならない。
この段階でのグループ経営システムの構築コンセプトは、「組織経営に向けたグループ経営機能の強化」である。まず、社長に集約されている権限と責任を役員陣・経営幹部に委譲するため、ガバナンス機能・マネジメント機能を整備していく。また、社長のビジョンを組織で具現化するための経営企画機能を設計し、社長の判断基準を組織や機能に移植することがポイントである。
第1ステップは、グループ理念体系の再定義である。経営理念に基づいたパーパス、ミッション、ビジョン、バリューを、グループ全体を包括した体系へと昇華させる必要がある。社長の思いをグループの理念体系として可視化し、組織に共有することから始まるのである。第2ステップでは、トップが担っているガバナンス機能を経営システムへ移管していく。ワンマン経営ではすべての情報がトップに集約され、トップが判断し、マネジメントコントロールもトップ主体で遂行されるため、運用レベルの決裁権限を幹部メンバーへ委譲することを前提とした仕組みに変更していく。この際、価値判断基準のずれを不安視する社長は多い。そのためトップの価値判断基準を「経営者憲章」として可視化することも重要である。
(2)初期段階
ワンマン型意思決定スタイルから組織経営へと移行させ、役員・幹部の意見を交えた経営判断に基づいて社長が意思決定を行うという、いわゆる「参画型意思決定スタイル」へ進化した次の段階は、「スタッフの充実とグループ経営システムのプラットフォーム化」をコンセプトに体制を構築していく。
この初期段階では、これまでの延長線上の仕組みではなく、新たな組織体制を導入することになる。まず、経営企画やガバナンス、マネジメントなどグループ経営の強化すべき業務に対して専任担当者を配置し、各業務内容をアップデートして人材のプロフェッショナル化を図る。各機能担当者には他の業務を兼任させない。安易に兼任で担当させてしまうとどちらの業務も中途半端になり、うまく機能しないからである。
とはいえ、重点業務に既存の人員を当てはめていくと、どうしても人材不足に直面する。そのため、どのような業務を任せる人材が不足するかを明確にして、人員を補充することが重要になる。しかしながら本社費の負担増加につながる本社管理部門の人員補充を避ける企業が多く、本社の人材不足は既存人員の兼任で業務を回そうとしがちである。だが、グループ経営システムを推進する人材は全社の成長と安定を担うコアパーソン(中核人材)であり、人員補充なくして推進はできないといっても過言ではない。
一方、スタッフの専任化・補充を進めた後に仕組み化を進める。つまり、運用のルール、マニュアル、チェックリストをつくるなどして、「特定の誰か」しかできないことを「誰でも」できるようにする。また、グループ内の間接業務を可視化し、業務プロセスの標準化を前提に業務を受託するシェアードサービス体制を整えていく。
(3)推進段階
グループ経営がさらに進むと「分権型の意思決定スタイル」が定着する。この段階のグループ経営システムの構築コンセプトは「人に依存しないプラットフォームの厳格運用」である。初期段階においては専任化と人員補充・仕組み化を進め、人に依存してでもプラットフォームとして立ち上げることをまず優先させるが、この推進段階では担当部門・チームがプラットフォームとして専門価値を発揮している状態をつくらなければならない。
この段階で重点的に強化すべき機能は、グループ経営企画とグループガバナンスである。経営企画機能としては、M&Aを含む成長戦略の設計・評価・支援、デジタル戦略の検討、マーケティング、ブランディング、デザイン経営などの強化を図り、グループの中枢機能として進化させていくことが重要になる。またガバナンス機能としては、コーポレートガバナンス・ポリシーの可視化、事業会社への監査体制の整備、コンプライアンス推進体制の強化など、健全な企業経営を推進するための社内管理体制を整備していく。併せて、シェアードサービス機能の効率化・専門化を図り、費用対効果を最大化させることも欠かせない。
(4)発展段階
グループ経営システム構築の最終段階は、経営を監視するコーポレートガバナンスの仕組みをつくることである。上場する、しないにかかわらず「上場企業レベルのグループ経営システムプラットフォームの運用」をコンセプトに整備を図る。
特にポイントとなるのは、コーポレートガバナンス・コードやデジタルガバナンス・コードの原則に基づく運用状況のフィードバックや適切な情報開示、役員会監査・取締役監査体制の整備など、経営にけん制がかかる状態を整えることである。
各段階でのグループ経営システム構築のコンセプトとポイントを参考に、複数の企業がグループとして活動することで競争力を高める「真のグループ経営」を推進してほしい。
関連記事
-

-

中堅企業が実装すべき財務戦略~グループ経営とは~
- グループ経営
-

中堅企業が実装すべき財務戦略~成長と存続の技術としてのホールディング経営~
- ホールディング経営
-

中堅企業が実装すべき財務戦略~ホールディング経営のタイプ~
- ホールディング経営
-

中堅企業が実装すべき財務戦略~ホールディング経営を機能させるステップ~
- ホールディング経営
-

物流業のシェアードサービス展開|背景と成功のポイントを解説!
- 資本政策・財務戦略
-

製造業における管理会計導入の目的とは?成功のポイントについても解説!
- 資本政策・財務戦略






