COLUMN

2026.09.29

中堅企業が実装すべき財務戦略
~事業承継はなぜ難しいのか~

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中堅企業が実装すべき財務戦略~事業承継はなぜ難しいのか~

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本コラムは、ダイヤモンド社発行の「コーポレートファイナンス戦略」の第6章の抜粋記事です。

事業承継はなぜ難しいのか

それにしてもなぜ、事業承継は難しいのか。よくいわれる「企業寿命30年説」は、実際には会社の生存期間ではなく、「一企業が繁栄を謳歌できる期間」を指すとされる。言い換えると、「既存事業のピークを維持できる期間は30年」ということである。一方、近年はデジタル化の進展や顧客ニーズの変化が早まり、製品・サービスのライフサイクルが短縮化の一途をたどっている。したがって、100年企業を目指すためには少なくとも30年に1回、すなわち3回以上は事業ポートフォリオを組み換える必要がある。当然、それを実現するためには新たな成長エンジンとなる事業と実行する人材が不可欠となる。
他方、日本の社長の平均在任期間(上場企業)を見ると、非同族企業が4.93年、同族企業で10.5年とされている(後藤俊夫/監修、落合康裕/企画編集、荒尾正和・西村公志編著『ファミリービジネス白書〈2022年版〉』、白桃書房を参照)。中小企業の場合は在任期間30年以上という社長も珍しくないが、100年企業を実現するためには少なくとも10人以上の社長でバトンをつなぐことになる。約30年ごとの事業ポートフォリオ転換を視野に入れながら、5~10年のタイミングで社長交代を行うところに事業承継の難しさがある。
経済産業省の資料によると、CEO(最高経営責任者)の在任期間が10年を超える上場企業の割合は、米国が43%であるのに対して、日本は15%と相対的に短い【図表6-1】。
また、CEO在任期間が短い日本企業はPBRが低い傾向にあるという。日本の上場企業は社長交代のタイミングが早いため、短期業績を意識して長期投資やリスクを伴う抜本的な改革を控える傾向が見られるとの指摘がある。
「伊藤レポート」(2014年)でも、「社長の在任期間が暗黙の慣行で4~6年と比較的短くなっており、経営成績にかかわらずこの期間は固定化している」と述べ、これが「経営者の中長期的な判断や必要なリスクを取った改革をしにくくしている可能性はある」と分析している。一方、経営者の在任期間が長い(8~12年)企業は高いROAの水準を示すとのデータもあり、経営者の長期コミットメントが業績や株価パフォーマンスに影響するとの見方がある。
だからといって、在任期間が長ければ長いほどよいということにはならない。過度な長期政権はさまざまな弊害を会社にもたらす。社長自身の老齢による判断能力の低下や過去の成功体験への固執、慢心から生じるガバナンス不全、後継者育成の遅れなどによって組織のパフォーマンスを低下させることがわかっている。経営者が自らの地位に固執して適正な交代を阻害することにより、企業に与えるコストを「エントレンチメントコスト」と呼ぶ。エントレンチメントには「経営者の保身」という意味がある。
社長の在任期間は短すぎても、長すぎてもいけない。自社の最適なタイミングを計りつつ、同時に後継者を育てる必要がある。また、社長自身の在任期間内のことだけを考えてはいけない。中長期的な未来を見据えながら、目の前の短期の成果も追いかけなければならない。
これこそ、事業承継が企業存続の最大の危機たる所以である。いずれにせよ、事業の寿命が企業の寿命になってはならず、社長の寿命が企業の寿命になってもいけない。そのためにも、未来へ経営をつなぐストーリーの構築が急がれる。

▼クリックで拡大します 【図表6-1】日米のCEO在任期間の比較

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