COLUMN

2026.05.27

製造業の資本効率改善
設備投資が多い企業こそ
ROIC経営が必要な理由

  • 資本政策・財務戦略

製造業の資本効率改善|設備投資が多い企業こそROIC経営が必要な理由

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世間では物価高や人件費増加の影響で、従来と同等以上の利益を計上するためには生産性の向上が必要です。いかに少ない投資で最大の利益を得られるか、すなわち資本効率性が求められています。また、2023年3月に東京証券取引所が資本コストや株価を意識した経営の実現を企業に要請したことを契機に、その流れは加速しており、現在では上場企業だけでなく中堅企業を含むさまざまな企業で資本効率性を意識した経営が求められています。特に、多額の設備投資の結果として資産規模が大きい製造業では、この改革が求められており、資本効率性を測る指標を会社の重要経営指標として新たに設定する企業が増えています。なお、資本効率性を測る指標にはROEやROICなどがありますが、本コラムでは、製造業におけるこれらの指標の導入の重要性と活用方法を事例を交えて解説します。

ROEとは自己資本利益率のことで、株主が出資したお金(自己資本)を元手として、企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す財務指標です。計算式は当期純利益÷自己資本×100%です。ROICとは投下資本利益率のことで、企業が事業に投じた投下資本(株主資本および有利子負債)に対して、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す財務指標です。計算式は税引後営業利益÷投下資本×100%です。

資本効率性による経営判断

資本効率性を表す経営指標を経営判断に活用した事例としてA社を紹介します。
A社は業界トップクラスの製造業企業でさまざまな用途向けの製品を製造しており、毎年多額の設備投資を行っていました。一方で、収益性が低下しており、さらなる成長に向けて現行の製品構成の見直しと今後の重点投資先の選定が必要でした。
そこで、用途別に損益計算書だけでなく貸借対照表も切り分け、投下資本効率を測定することにしました。すなわち、事業別にROICを算出しました。なお、同社はすでに中期経営計画で全社ROICの目標を掲げていたため、全社ROIC目標との比較と時系列での改善または悪化傾向の確認を比較軸として、事業別ROICを検証しました。
その結果、赤字の製品もあれば、黒字でもROICが悪化傾向にある製品があることが判明しました。赤字の製品については今後さらなる改善策が見込めなければ撤退を検討し、ROICが悪化傾向にある製品については在庫の増加が主因と考えられたため、在庫圧縮を重要施策として掲げました。
このように、事業別ROICを用いることで、表面的な収益だけでなく投下資本を加味した収益性を評価できるため、今後の追加投資の可否や撤退の要否をより適切に判断でき、既存事業と新規事業を問わず投資判断や経営判断に活用できます。

投資効率を意識した仕組みへの改善

続いて、投資効率性について解説します。先述した資本効率性を高めるためには、投資効率を意識した投資を積み重ねていくことが必要です。すなわち、コストに対してリターンが大きい効率的な投資を積み重ねることで、資本効率性は向上します。
ここでは、投資効率を意識した経営へと転換したB社の事例を解説します。
B社は業界トップクラスの製造業企業であり、毎年多くの設備投資や広告宣伝を実施してきました。しかし、収益性が悪化したため生産性の改善が急務となり、投資の進め方についても従来のやり方を見直すことになりました。投資前には投資効果の予測を作成し、投資の承認を得た後に投資を実行していました。しかし、実態として期待された投資効果を得られたかどうかの検証は十分にできておらず、今後の投資判断に生かすことができませんでした。そこで投資後のモニタリングを社内ルールとして制度化し、投資前に期待していた効果を実際に得ることができているかを検証することにしました。
上記モニタリングルールを制度化することで、期待された収益を本当に得ることができるかを投資申請段階でより慎重に検討するようになり、投資効率の向上が期待されています。
B社のように、投資前にどれくらい投資効果が期待できるかを検証する企業は多い一方、投資後に実際にその効果を得ることができたかどうかをモニタリングしている企業は少なく、ここを強化すれば投資効率が以前より改善すると想定されます。また、投資判断を検討する際には、将来の利益を現在価値に割り引き、投資資金を何年で回収できるかを算出する割引回収期間法を用いることで、より厳密に実態に即した投資効率を検証することができます。結果として投資効率の向上が期待されます。

まとめ

本コラムでは、製造業における資本効率性を意識した経営の推進について、A社とB社の事例を用い、事業別ROICの活用による経営判断の高度化と投資効率向上に向けたモニタリングルールの制度化について解説しました。
冒頭に記載したとおり、昨今は上場企業だけでなく、中堅企業でも資本効率性を意識した経営が求められています。資本効率性は上場企業にのみ関係するものではなく、中堅企業においても生産性の向上が求められているため、いかに少ない投資や資本で最大の利益を得られるかという視点は非常に重要です。しかし、中堅企業では、依然として資本効率性を意識した経営の推進が十分ではなく、損益計算書のみに焦点を当てた経営にとどまっているのが実態です。今後さらなる成長のためには、資本効率性を意識し、貸借対照表の観点も踏まえた経営の推進が非常に重要です。本コラムで示した内容や事例を、今後の経営の参考にしてください。

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