COLUMN

2025.12.23

中堅企業が実装すべき財務戦略
~なぜ「ホールディング経営」が注目されるのか~

  • ホールディング経営

中堅企業が実装すべき財務戦略~なぜ「ホールディング経営」が注目されるのか~

目次

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本コラムは、ダイヤモンド社発行の「コーポレートファイナンス戦略」の第3章の抜粋記事です。

なぜ「ホールディング経営」が注目されるのか

(1) ホールディング経営とは

近年、上場大手から中堅・中小企業に至るまで、規模の大小と関係なく「ホールディング経営」に移行する企業が増えている。全体的な傾向としては事業承継や周年記念を機に決断するケースが多い。TCGにおいてもホールディング経営の支援案件が増えている実感があり、企業が成長するためのスタンダードな経営手法として確実に広まりつつある。
歴史をさかのぼると、日本でホールディングス化が進展したのは、直接的には1997年の独占禁止法改正による「純粋持ち株会社の解禁」に起因する。それ以前は1947年施行の独占禁止法により、事業支配力が過度に集中することを防止する目的で禁じられていた。第二次世界大戦後、当時のGHQ(連合国軍総司令部)が財閥解体の流れから持ち株会社の設立を禁止したのだ。逆の見方をすれば、純粋持ち株会社によるホールディング経営は、(多少の誤解を恐れずにいえば)事業支配力を集中させることで飛躍的に成長できるモデルなのである。解禁以降、ホールディング経営スタイルは一貫して増加しており、その流れは当初の上場企業など大手を中心としたものから、現在は中堅・中小企業にも波及している。
ここでいうホールディング経営とは、親会社であるホールディング会社(持ち株会社)を中心に複数の子会社(事業会社)が事業ポートフォリオを形成し、グループで成長する経営体制を指している。ホールディング会社(以降、HDC)が各事業会社の財務リスク管理や戦略立案などを担う一方、各社に権限委譲を進めることで効率的なグループ運営が行える。企業買収や不採算部門の譲渡がしやすく、事業ポートフォリオの最適化(多角化や再構築)をスムーズに行えるほか、親会社が戦略策定や資金調達、人材配置など各事業会社の運営をサポートすることにより、各事業会社は事業に集中できる。事業会社の経営を任せることで、次世代の経営を担う後継者や幹部などの人材育成につなげられるといった利点もある。

(2) 従来型のグループ経営との違い

HDCは「純粋持ち株会社」と「事業持ち株会社」の2つに大別される。純粋持ち株会社は、各事業会社の株式を保有して経営を統括するだけの会社であり、自ら事業を行わない。他方、事業持ち株会社は各事業会社の経営を統括しながら、自らも事業を手掛けるという違いがある(ただ、一般的にHDCは純粋持ち株会社を指すことが多いため、本書ではHDCについて純粋持ち株会社を想定している)。
「ホールディング経営と従来型のグループ経営は何が違うのか」という声がよく聞かれるが、2つは似て非なるものだ。従来型のグループ経営とは「複数の異なる事業を営む単一の企業、または複数の連結事業体から成る多角化企業」である。親会社はグループ全体の統括機能を有しているものの、「本社(親会社)が支店(子会社)を管理する」という関係性であり、あくまで親会社の事業が「主」で子会社の事業は「従」(関連事業や販売・製造機能など)という位置付けにある。そのため、親会社の業績が第一に優先され、子会社の運営は親会社の戦略に左右される傾向がある。
それに対し、ホールディング経営は「企業グループを統括する持ち株会社と、その傘下に並ぶ複数の事業会社により構成される経営スタイル」をいう。グループ本社機能と事業会社の運営を分離し、HDCは事業の推進に必要な経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を事業会社に提供するプラットフォームとしての機能・役割に専門特化する。特定の事業の利益ではなく、グループ全体の利益を最大化させる判断が可能となる【図表3-1】。
ホールディング経営はさまざまな業界で採用されており、多角化戦略を推進する企業にとっては特に有効である。とはいえ、なかにはHDCを設立したものの機能や組織がなく、事業会社の株式を保有しているだけで、実体は株式承継での税務対策という単目的のための「ペーパーカンパニー」になっているケースも散見される。正直にいって、これは〝宝の持ち腐れ〟といわざるを得ない。ホールディング経営というプラットフォームによりグループを効果的・効率的に運営できれば、節税効果などはるかに上回る利益が得られるからである。

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図表3-1 ホールディング経営体制

(3) ホールディング経営の目的と本質

「(ホールディングス化は)デメリットが多いからやめるべき」「意義がないとは思わないが時期尚早ではないか」「やってもやらなくても何も変わらない」「ぜひ積極的に推し進めるべきだ」など、ホールディング体制構築のコンサルティング現場ではクライアント企業の経営陣の間で意見が割れ、何度議論を重ねても合意形成に至らないケースが多々発生する。このような状況は、そもそもホールディング経営の本質に対する共通認識が形成されていないことから生じるものである。
ホールディング経営の目的は一般的に、企業の所有者(株主)と経営者(代表取締役)を切り離す「所有と経営の分離」にあると説明されることが多い。ただ、これは1つの目的でしかない。TCGが考えるホールディング経営の本質は、「未来に向けて持続的に企業価値向上を目指す組織モデル」である。あくまでホールディングス化はそのための手段であり、HDCを設立することがゴールなのではない。今も昔も組織戦略の基本は「組織は戦略に従う」である。ホールディング経営も目指すビジョンと戦略が先にあり、その実現に最適な組織形態として選択されるべきである。
「多くの経営人材を育てたい」「複雑化するグループ資本系列を整理したい」「M&A戦略を展開するための受け皿にしたい」「資本である自社株を円滑に承継したい」など、企業がホールディング経営に移行する目的はさまざまである。後継者の育成、事業ポートフォリオの最適化(多角化、M&A)、グループの意思決定迅速化、権限委譲による組織活性化など、目的を挙げ出すときりがない。企業を取り巻く経営環境やグループが抱える事情によっても目的は異なるのだ。ホールディングス化という経営技術を用いて自社は何を達成したいのか。そのビジョンと戦略を整理・再認識することから始め、その後にホールディング経営のメリットとデメリットを比べて検討する必要がある。
自社をホールディングス化するメリットとしては、目に見える形で権限委譲が仕組み化され、自律性の高い事業運営が期待できるほか、HDCが戦略立案、事業会社は実行推進という分業制により、意思決定の迅速化や経営(業績)責任の明確化、経営効率の向上が見込めることだ。また、M&Aを活用した新規事業の買収や不採算事業の売却など事業ポートフォリオ戦略(複数事業の組み合わせによる相乗効果で持続的成長を目指す戦略)を機動的に推進し、成長スピードを加速することができる。財務面では、連結納税制度によって法人税額を低く抑えられるほか、非上場企業の場合は、株価高騰を抑制できるため事業承継対策になる点もメリットといえる。さらに人材の観点では、優秀な役員や社員に事業会社社長という経営者登用の機会を与えることで組織が活性化されることに加え、「社長」をゴールとした人材育成や採用が可能になり、リーダーが育ちやすい風土を醸成できる【図表3-2】。
一方、デメリットとしては、意思決定が事業会社に委ねられるため、各社がサイロ化してグループでの連携を取りにくく、一体感も生まれにくい点が挙げられる。また、会社間で部門が重複してコストアップしやすいこともデメリットである。

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図表3-2 ホールディング経営の効果

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