シェアードサービス化のメリットと
活用のポイント
- グループ経営
![]()
閉じる
シェアードサービスとは、グループ内で共通する業務や機能、システムを集約することで一元管理し、作業効率向上やコスト削減を図る仕組みです。
近年、M&Aによる企業合併や事業ポートフォリオ拡大により、グループ経営に向けた動きが加速している中、経営を効率化するための手段の一つである「シェアードサービス」の導入が注目を集めています。
しかしながら、シェアードサービスは経営課題解決のための手段であり、目的ではありません。
本コラムでは、シェアードサービス化のメリットと活用におけるポイントを整理し、効果的なシェアードサービスについて考察します。
シェアードサービス化のメリット
シェアードサービス導入検討にあたっては、まず自社がシェアードサービス化によりどんな効果を期待するのか、またどんなメリットが考えられるのかを明確にする必要があります。
ここでは一般的なシェアードサービス化のメリットを5つ挙げて解説します。
1.コスト削減
シェアードサービスの最大のメリットの一つは、コスト削減です。
業務を一元化することで、重複する作業や無駄なリソースの削減が図られます。
例えば、複数の事業部を抱える会社で各事業部ごとに経理担当者を配置するのではなく、経理業務を一つの部門に集約することで、必要な人員を最小限に抑えることが可能です。また、システムやツールの統一によって、運用コストも削減できます。これは事業部間に限らず、グループ会社間でも同様のメリットが得られます。
2.業務の標準化と品質の向上
シェアードサービスを導入することで、業務プロセスを標準化することができます。これまで各部署や会社で属人的かつ慣習的に行われていた業務のばらつきを減らし、一定の品質を保つことが可能になります。
例えば、経理業務において、各部門が異なる方法で請求書を処理している場合、ミスや遅延が発生しやすくなります。しかし、シェアードサービスを通じて統一されたプロセスを導入すれば、ミスを減らし、業務のスピードと正確性を向上させることができます。
また、業務の標準化は担当者の入れ替わりの際のスムーズな引き継ぎにも寄与します。
3.専門性の向上
シェアードサービスセンターでは、特定の業務に特化した専門チームが運営を担当します。そのため、各業務における専門性が向上し、より高いレベルのサービスを提供することが可能です。例えば、税務や法務などの専門知識が必要な業務をシェアードサービスセンターに集約することで、専門家による正確な対応が期待できます。
また、社員教育においても、複数の専門分野へ適性が見込まれる人材を配置することで、担当者のキャリア形成にも良い影響を与えるでしょう。
4.コア業務への集中
シェアードサービスを導入することで、各部門は本来のコア業務に集中することができます。例えば、営業部門や事業会社が経理や人事の業務に時間を取られることなく、営業活動に専念できるようになります。これにより、企業全体の生産性が向上し、競争力を強化することができます。
5.データ活用の推進
シェアードサービスを通じて業務を一元化することで、データの集約が容易になります。これにより、企業全体のデータを活用した分析や意思決定が迅速に行えるようになります。例えば、経理データを一元化することで、リアルタイムでの財務状況の把握や、将来の予測が可能になります。
シェアードサービスは、コスト削減や業務効率化だけでなく、品質向上や専門性の強化、さらにはデータの利活用など、多くのメリットをもたらします。これらのメリットを最大限に活用し、企業の成長につなげることが重要です。
シェアードサービス活用のポイント
先述の通り、シェアードサービスは、業務効率化やコスト削減を実現するための有効な手段ですが、導入や運用にはいくつかの課題が伴います。
成功するためには、単に業務を集約するだけでなく、適切な計画と運用が不可欠です。今回は、シェアードサービスを効果的に活用するためのポイントについて解説します。
1.明確な目的を設定する
シェアードサービスを導入する際には、まず「なぜ導入するのか」という目的を明確にすることが重要です。コスト削減、業務効率化、品質向上、グローバル展開の支援など、企業によって目的は異なります。目的が曖昧なまま導入を進めると、期待した成果が得られない可能性があります。導入前に、具体的な目標を設定し、それを達成するための計画を立てることが成功の第一歩です。
2.業務プロセスの見直しを行う
シェアードサービスを導入する際には、既存の業務プロセスをそのまま移行するのではなく、プロセスの見直しを行うことが重要です。業務を一元化することで効率化が期待されますが、そもそも各現場での業務レベルで改善できるポイントがないかを整理する必要があります。非効率なプロセスをそのまま集約してしまうと、逆に問題が拡大する可能性があるため、まずは既存業務の最適化が重要なステップとなります。
3.適切なシステムとツールを選定する
シェアードサービスの運用では、これまで各所に分散していたバックオフィス業務を1箇所に集約するため、業務を効率的に管理するためのシステムやツールが欠かせません。システムには企業の業種特性、規模感、期待メリットに応じて様々な種類があるため、慎重な選定が求められます。
4.専門性の高い人材を確保する
シェアードサービスセンターでは、特定の業務に特化した専門性が求められます。そのため、適切なスキルを持つ人材を確保することが重要です。例えば、税務や法務などの専門知識が必要な業務では、経験豊富なプロフェッショナルを配置することで、業務の品質を向上させることができます。また、シェアードサービスの運用を支えるITスキルを持つ人材も必要です。
5.コミュニケーションを強化する
シェアードサービスを導入すると、業務を担当する部門とシェアードサービスセンターとの間でのコミュニケーションが重要になります。業務の進捗状況や課題を共有し、迅速に対応するための仕組みを構築することが必要です。定期的なミーティングや報告体制を整えることで、円滑な運用が可能になります。
また、導入前のコミュニケーションも重要であり、シェアードサービス化の意義や意味、導入スケジュールの説明、業務内容の変化点の説明などをシェアードサービスに携わるメンバーに限定せず、全社で共通認識を持つことがシェアードサービス活用に大きく影響します。
シェアードサービスを効果的に活用するためには、目的の明確化、業務プロセスの見直し、適切なシステムの導入、専門人材の確保、コミュニケーションの強化が重要です。これらのポイントは最低限意識すべき事項であり、会社特有の検討課題も踏まえて取り組みに移ることが、シェアードサービスの導入効果を最大化し、企業全体の競争力を向上させることにつながります。
シェアードサービスを単なる業務の集約ではなく、企業の成長を支える経営戦略の実装と捉え推進することが鍵になるでしょう。
関連記事
-

組織活性化の手法や生産性を高める実践ステップ
- ホールディング経営
-

効果的なMBOスキームとは?EXIT戦略を成功に導く7つのステップ
- 資本政策・財務戦略
-

企業が行うIR活動の目的と効果を発揮する施策とは
- 企業価値向上
-

ROICを浸透させるためのポイントを探る
- 資本政策・財務戦略
-

PBR向上の意義とPERとの違いを解説
- 企業価値向上
-

ROE ~ 企業価値向上における枢軸
- 企業価値向上
-

-

組織再編の目的や手法、実施する際のポイント
- グループ経営







