CASE 事例
創業者からの経営を後継者へグループ経営として引継ぎ成長を続けている医薬品卸グループA社の事例
A社は1990年に医薬品卸として事業をスタートしました。その後、調剤薬局事業、医薬外品製造や付帯事業としての倉庫業や保険代理店など、医療および医療周辺分野へ事業の多角化を図り、神奈川県内において独自の地位を確立してきました。創業者も60歳を超えてバトンタッチの時期を迎えるものの、次世代への承継体制は手つかずのままという状況でした。
創業者の経営から2代目の経営へに向けた課題の洗い出し
ゼロから1を生み出す創業者の経営は、時代やマーケットのニーズを鋭く捉える事業センスと事業構想力、そして、ヒト・モノ・カネといった限られた経営資源を最大限生かして事業として確立してゆく経営センスと事業立ち上げ力が大きな特徴です。A社においても創業者であるX氏が事業を一から立ち上げてきました。事業の立ち上げ期には資金繰りの問題や人の採用や退職、取引先との交渉など様々なことが起きるものです。創業者は事業全体を俯瞰しながら、持ち前のリーダーシップと調整能力で困難を切り抜け、事業を確立してきました。問題は、多くの場合このプロセスが創業者の頭の中だけで行われ、組織としての行動や記録、ノウハウとなっていない点です。会社で起こることの全てが創業者の頭の中にあるというブラックボックスで経営が行われるため、創業者がいないと物事が進まない状況が出ていました。
後継者であるY氏は入社して数年経過しているものの、ブラックボックスが多く、創業者の号令で動く社風に不安を感じていました。そこで、次世代に向けて事業を引き継げる環境をつくる必要があると、創業者であるX氏へ相談を行ったのです。創業者であるX氏も同様の課題を感じており、メインバンクの担当者へ知見のある外部コンサルタントの紹介を依頼し、相談を実施しました。グループ各社の経営やマネジメント上の問題点、マーケットを踏まえた将来予測、資本政策上の課題と対策など様々な視点からアドバイスを受け、本格的に次世代における組織経営体制への転換を図ることとしました。
総合ヘルスケア企業グループとしての存在価値を明確にし、組織として運営できるグループ経営体制へ移行
外部コンサルタントによる客観的な調査・分析の結果、大きく3つの課題が浮き彫りとなりました。
1つ目は(良い意味での)ワンマン経営により、事業規模に比して組織経営の仕組みが不在であることです。そして、経営情報がブラックボックス化されていて制度や仕組みも不十分なため、社員が自主的に動けない指示待ち体質が蔓延していました。
2つ目は、社員数が100名を超えるようになったものの、組織として1つの方向を向くための、理念・ビジョン・計画が不在でバラバラ集団となっていたことです。
そして3つ目は、資本政策とバトンタッチスケジュールの不在です。事業の立ち上げに集中してきた創業者は株式対策やバトンタッチスケジュールを考える時間がなく、計画的な承継を行うための準備が全くてきていなかったため、ズルズルと今日を迎えていました。
そこで、A社の後継者であるY氏は社内において次世代経営への移行プロジェクトを組成し、外部コンサルタントと一緒になって課題の理解と解決に向けたプロジェクトをスタートさせました。立ち上げたプロジェクトは全部で3つです。
1つ目のプロジェクトは「グループ理念・ビジョン・ミッションづくりプロジェクト」。グループとしての事業の価値を再定義し、これまでの医薬品卸を中心とした企業グループから、総合ヘルスケア企業グループとしての立ち位置を明確にして、各社がシナジーを発揮できるよう理念・ビジョン・ミッションを明確にしました。最終的にクレドとしてまとめ、全社員への浸透も図っています。
2つ目のプロジェクトは「組織経営への移行プロジェクト」。社内制度の整備やルールの決定、責任と権限の明確化や評価と分配のルールまで、外部コンサルタントの知見も得て整備を行いました。組織として経営を行うための基盤ができました。
3つ目のプロジェクトは「事業承継プロジェクト」。こちらは、創業者であるX氏と後継者のY氏に加え、外部コンサルタントの責任者の3者によるプライベートなプロジェクトです。ここで組織体制、次世代経営幹部の登用についての議論、株式の移転に向けた資本政策の立案、そしてバトンタッチまでのスケジュール設定を慎重に行いました。
新型コロナへの対応を機に3年前倒しでバトンタッチを実行
次世代経営への移行に向けて様々な準備を行ってきたA社ですが、これらの制度の定着作業を始めて1年ほど経過したところで、新型コロナが発生しました。世間はロックダウンによる苦境を迎えていましたが、総合ヘルスケア企業グループであるA社にとっては、まさに本領発揮の場面です。医薬品外製品を製造するグループ会社は、いち早くマスクや消毒液の増産を決めて生産と市場への投入を進めました。普段から医療機関に接点のある医薬品卸会社、そして、ドクターとの連携により事業を進めている調剤薬局はグループ一丸となって総合ヘルスケア企業グループとして商品供給を進めました。コロナ禍にもかかわらず、全員が使命感を持って地域医療や新型コロナ対策へ貢献するという、まさに全社員が一体となって総合ヘルスケア企業としての総合力を発揮した瞬間でした。陣頭指揮を執る後継者 Y氏が、一気に社員の心をつかんで後継者としてのポジションを確立しました。後継者であるY氏の活躍を見た創業者のX氏も、後継者が組織を上手にコントロールしている姿をみて、予定よりも3年前倒して事業を承継することを決意しました。その年の経営方針発表会の場で、翌年のバトンタッチを宣言するという状況になりました。
今回はタイミングよくグループ経営や組織経営への取り組みが新型コロナへの対応を機に進みましたが、創業者のX氏も、後継者のY氏も、グループ経営や組織経営への事前準備なくしてこの難局は乗り切ることもできなかったと回顧されています。バトンタッチを踏まえた早めの準備が大切なことの好事例でした。
会社プロフィール
業種 | 医薬品卸、調剤薬局運営、 医薬品外製品製造、倉庫業、保険代理店業 |
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所在地 | 神奈川県 |
売上高 | グループ年商約170億 |
従業員数 | 180名 |
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