ガバメントDX ~デジタル社会の実現に向けて~

コラム 2024.06.12
マネジメントDX 制度教育業務効率組織
ガバメントDX ~デジタル社会の実現に向けて~
目次

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、民間企業に限った話ではなく、国・都道府県・市町村などの自治体においても言えることです。むしろ、官民が一体となった取り組みにならなければ、わが国のDXは進まないと言ってもよいでしょう。ここでは、自治体を中心としたDXを「ガバメントDX」と呼び、その内容や推進上のポイントについて解説していきます。


1.ガバメントDXをめぐる動き① デジタル・ガバメント実行計画

まず大きな方針として、2020年12月、政府が閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針 」があります。この中で、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 ~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」という方針が示されました。

そして同時に閣議決定されたのが、「デジタル・ガバメント実行計画」です。社会全体のデジタル化を進めるためには、まずは自治体が提供する行政サービスにおいてDXを推進し、「あらゆる手続きが役所に行かずにできる」「必要な給付が迅速に行われる」など、利用者目線での改革が必要と位置付けられました。

2020年12月と言えば、新型コロナウィルス感染症が猛威を振るっていた頃です。コロナ陽性患者の報告・集計、特別定額給付金や雇用調整助成金の申請・支払、その他様々な書類の押印・承認など、デジタル化が進んでいないことによる問題が表面化しました。そのような背景からも、ガバメントDXの推進は急務だったわけです。

デジタル・ガバメント実行計画の核となるのが「デジタル3原則」です。これは、

(1)デジタルファースト:個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する
(2)ワンスオンリー:一度提出した情報は、二度提出することを不要とする
(3)コネクテッド・ワンストップ:民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現する

の3つを指しています。こうした取り組みを進めるためには、単に業務を電子化するだけでなく、業務改革(BPR:Business Process Re-engineering)により業務のあり方そのものを見直すことが必要です。それによって前後の業務についても見直し・省力化・自動化が行われ、効果を幅広く享受することが可能になると考えられます。

2.ガバメントDXをめぐる動き② デジタル社会の実現に向けた重点計画

2021年9月、前述のガバメントDXを、さらにはデジタル社会の実現を推進するための司令塔として、内閣直轄の「デジタル庁」が発足しています。また直近では、2023年9月に定められた「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、「デジタル社会で目指す6つの姿」として、

①デジタル化による成長戦略
②医療・教育・防災・こども等の準公共分野のデジタル化
③デジタル化による地域の活性化
④誰一人取り残されないデジタル社会
⑤デジタル人材の育成・確保
⑥DFFTの推進をはじめとする国際戦略

※DFFT:Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通 を掲げています。

出典:デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」

こうした動きを「民間企業」「行政」「市民」という3つの視点で見てみましょう。
まず民間企業においてです。デジタル化の取り組みを推進することが「前提」となり、デジタル技術を積極的に取り入れ、新たな価値を創造していかなければ淘汰されるなど、ますます厳しい時代に入っています。ただそれだけでも生き残れないと考えられます。つまり「地域社会における1企業」として、行政とも連携しながら、市民にも企業価値を提供する、つまり行政・市民と共生することが求められると言えるでしょう。
次に行政においてです。社会課題がより複雑化する中、財政面でも職員数でもリソースが不足し、解決するのがより厳しくなっている状況です。だからこそ、市民の声を直接聞きながら、デジタル技術を取り入れ、民間企業と手を取り合うことで、行政の強みである「市民・企業・団体をつなぐハブとしての役割」を発揮することが求められると言えます。
最後に市民においてですが、デジタル技術によって人と人、人と情報の距離が縮まっていることを理解することが肝要と考えられます。「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉があるように、性別・年齢・国籍の違いを尊重し、受け入れ、市民ひとりひとりが主役であることを自覚することが、豊かな社会の実現に寄与すると言えます。

3.ガバメントDXに向けた、タナベコンサルティングの役割

タナベコンサルティングは、日本の経営コンサルティングファームのパイオニアとして、創業以来66年間で17,000社以上の経営コンサルティング実績を有しています。こうした知見を活かして、ガバメントDXの推進に向けた支援も近年強化しています。ここではその事例を紹介します。

(1)和歌山県 令和5年度DXオンライン入門講習

和歌山県では、県内企業の経営者および従業員が、DX実現に向けて、デジタル技術の活用に関する基礎的な知識やスキルを習得することを目指した、オンライン入門講習を開催し、タナベコンサルティングではその運営を行いました。
内容は2つあります。
1つは「eラーニング形式によるDX基礎講座」で、「DXとは何か」「最新のデジタル技術で何ができるか」「DXを進めていく上でのポイントは何か」など、1本10分程度の動画を30講座制作し、「いつでも」「どこでも」視聴できる仕組みを提供しました。
もう1つは「ライブによる双方向型講座」で、Web会議を活用して1回2時間のライブ型講座を行い、eラーニングで学んだことの理解を深め、参加者同士での情報交換を行う場を提供しました。

▼クリックで拡大します

図:(参考)eラーニング形式のDX基礎講座

図:(参考)eラーニング形式のDX基礎講座

(2)岩手県 令和5年度デジタルリスキリングセミナー

岩手県では、DXの推進によって生産性の向上、業務の効率化、働き方改革等を実現し、業績の向上やビジネスの創造や核心につなげるために、その核となるデジタル人材育成を図るべく、セミナーを開催し、タナベコンサルティングではその運営を行いました。
また「リスキリング」という言葉がありますが、直訳すると「学び直し」というもので、「知識を増やして新しい職業への移行を容易にする、あるいはキャリアアップを実現する」といった意味が込められており、本セミナーにもそういった目的がありました。
前述の和歌山県と違うところとして、DX・デジタル化の潮流を理解することに加えて、デジタルツールを実際に活用することに重きを置き、kintoneで実際に簡単なアプリを製作して早速職場で使ってもらうなど「実践」を意識したコンテンツを提供しました。

図:(参考)kintoneアプリを作成する講義・実習

図:(参考)kintoneアプリを作成する講義・実習

ここで述べた取り組みはその一部ですが、共通しているのは、民間企業向けの研修のような「企業の目指す姿、目指す人物像を実現するためのカリキュラム」ではなく、「デジタル化による地域の活性化を目指した、あらゆる民間企業(場合によっては市民)に向けた、全体のレベルアップを図るためのカリキュラム」であったことです。タナベコンサルティングは今までのノウハウも生かしながら、より洗練されたサービスを提供することで、デジタル社会の実現に貢献したいと考えています。

4.まとめ ガバメントDXの動きを注視し、行動せよ

コロナの影響もあってガバメントDXの機運が高まったことに加え、デジタル技術の急速な進化もあいまって、ガバマントDXの取り組みは一層加速するでしょう。また、先ほど述べた「民間企業」「行政」「市民」の相乗効果により、デジタル化で実現できることも一気に増えるはずです。こうした動きを注視するとともに、一人一人が主役となって積極的に学び、トライすることが肝要と言えるでしょう。

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AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー
田崎 修平

大手酒造メーカーで17年間、工場での製造管理・業務効率化、本社での生産管理・原価管理・事業計画策定など幅広い業務に従事し、当社に入社。DXを取り入れながら、現場やバックオフィスの生産性向上を手掛けている。企業の最前線で働く人の気持ちに寄り添い、現場主義で粘り強く課題と向き合い、クライアントとともに解決に当たるコンサルティングが支持されている。

田崎 修平
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