COLUMN

2025.12.23

製造業における収益改善の2つの視点と
5つのステップを徹底解説!

  • 資本政策・財務戦略

製造業における収益改善の2つの視点と5つのステップを徹底解説!

目次

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先の見えない原材料費の高騰、労働人口の減少、そして激化するグローバル競争。
製造業を取り巻く環境は、かつてないほどの高い不確実性に覆われています。
こうした時代を勝ち抜き、持続的な成長を実現するためには、漠然とした「頑張ろう」ではなく、明確な戦略に基づいた着実な収益改善が不可欠です。
本コラムでは、経営者の皆様が今すぐ実践できる収益改善の切り口と、それを確実に実現するためのステップを、具体的な視点を交えて解説します。

1.収益改善、2つの視点

収益改善と聞くと、多くの経営者はまず「コスト削減」を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、コスト意識は重要です。
しかし、それだけでは限界に達する場合が多くあります。
収益改善には、「売上増加」と「コスト削減」という、車の両輪を回すような相互補完的で持続可能な戦略が求められます。

(1)売上増加──「どう売るか」から「何を売るか」への深化

単なる値上げや数量を追うだけの売上拡大には限界があります。
真の売上増加とは、顧客が心から価値を感じる「付加価値」を提供することです。

①高付加価値化と製品の差別化

a.技術の深掘り
自社が持つ独自の技術やノウハウを再評価し、他社には真似できない製品やサービスを創出できないか検討します。
例えば、特定の素材に特化した加工技術を応用し、高機能な新製品を開発するなどが考えられます。

b.ソリューション提案型ビジネスへの転換
製品を売るだけでなく、顧客の課題解決を支援するソリューションを提供します。
製品の保守サービスを充実させたり、IoT技術を活用した稼働状況の可視化サービスを提案することで、新たな収益源を確保できます。

②販路拡大と新たな市場への挑戦

a.デジタルチャネルの強化
BtoBビジネスにおいても、オンラインでの情報発信や商談はすでに不可欠な手段となっています。
ECサイトの活用やWebマーケティングを強化することで、既存の営業網ではリーチできなかった顧客層を開拓できます。

b.ニッチ市場への集中
全方位で戦うのではなく、特定の業界や顧客に特化することで、市場でのプレゼンスを高めます。
例えば、収益性の高い特定の業界にターゲットを絞り、専門的な製品を提案する戦略も有効です。

③価格戦略の再構築

a.価値に見合った価格設定
単に価格を上げるのではなく、高付加価値化によって得られた顧客メリットを明確に伝え、値上げ交渉を成功に導きます。

b.製品ポートフォリオの見直し
プレミアム価格帯のハイエンド製品と、普及価格帯のスタンダード製品を明確に分け、多様な顧客ニーズに対応します。

(2)コスト削減──「無駄をなくす」から「体質を改善する」へ

コスト削減は短期的な効果が見込まれますが、持続的な改善には「無駄をなくす文化」を組織に定着させることが重要です。

①生産性の抜本的向上

a.工程の見直しと自動化
作業動線を分析し、無駄な動きを排除します。
ロボットや自動化設備を導入することで、人件費を削減しつつ、生産量を増やすことができます。

b.IoT・データ活用
センサーやカメラで製造現場のデータをリアルタイムで収集・分析します。
これにより、非効率な工程やボトルネックを特定し、改善のサイクルを回すことができます。

②原価管理の徹底

a.仕入れ先の最適化
複数の仕入れ先から相見積もりを取る、あるいは調達先を集約して交渉力を高めることで、材料費を削減します。

b.徹底した在庫管理
需要予測の精度を高め、過剰在庫を削減します。
在庫は「費用」であることを再認識し、キャッシュフロー改善につなげます。

c.エネルギーコストの削減
省エネ設備の導入や電力契約の見直しなど、見逃されがちなコスト項目も対象とし、継続的に削減を図ります。

③間接費の削減と業務効率化

a.業務フローのデジタル化
受注から請求までのプロセスをデジタル化し、ペーパーレス化や事務作業の削減を進めます。

b.ITツールの活用
クラウドサービスやSaaSを導入することで、初期投資を抑えながら、管理部門の業務効率を向上させます。

2.収益改善を実現する5つのステップ

描いたビジョンを現実にするためには、計画的で着実なステップが不可欠です。

ステップ1:現状の可視化と課題の特定

まずは、自社の収益構造を徹底的に分析します。
製品別、顧客別、工程別の利益率を可視化し、どこに問題があるのか、どこに改善の余地があるのかを明確にします。

①財務データの深掘り

単に売上や利益を見るだけでなく、粗利益率や営業利益率を製品・部門ごとに算出します。

②現場からのヒアリング

現場の従業員から、作業上の非効率や無駄に関する意見を吸い上げます。
経営者だけでは気づけない課題が見つかることもあります。

ステップ2:具体的な改善策の立案と優先順位付け

現状分析の結果をもとに、売上増加とコスト削減の両面から改善策のアイデアを幅広く洗い出します。
その上で、「効果の大きさ」と「実現可能性(費用・期間)」を基準に、優先順位を付けます。

①費用対効果の評価

短期間で成果が見込める「クイックウィン」施策から、中長期的な体質改善につながる施策まで、バランスよく計画します。

②KPI(重要業績評価指標)の設定

改善策ごとに、具体的なKPIを設定します。
例えば、「不良品率を1%削減」「新規顧客獲得数を月10件増加」など、社内で共有可能な指標とします。

ステップ3:スモールスタートによる実行

大規模な投資や組織改革には一定のリスクが伴います。
まずは、特定の製品ラインや部門、あるいは小規模なプロジェクトとして改善策を試行します。

①PDCAサイクルの実践

計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)のサイクルを高速で回します。

②失敗から学ぶ文化

試行段階での失敗を責めるのではなく、その要因と対策をチームで議論する文化を醸成します。

ステップ4:全社展開と組織への定着

スモールスタートで効果が確認できた施策は、全社に展開します。
この際、なぜその改善が必要なのか、どのような効果があるのかを丁寧に説明し、全従業員の理解と協力を得ることが重要です。

①成功事例の共有

成功した取り組みを社内で共有し、他部署や従業員にも「自分たちにも実現可能である」という実感を広めます。

②標準化とマニュアル化

有効なプロセスやノウハウはマニュアルとして標準化し、組織資産として蓄積します。

ステップ5:継続的なモニタリングと改善

一度きりの取り組みで終わらせず、常に改善のサイクルを継続します。
デジタル技術により収集したデータを活用し、定期的に収益状況をモニタリングします。

①経営情報の共有

経営層のみならず、部門長や現場のリーダーもリアルタイムで経営指標を把握できる仕組みを構築します。

②新たな課題の発見

改善が進めば、新たな課題が浮き彫りになります。
それらに対し、再びステップ1から改善プロセスを回すことで、企業はさらなる高収益体質へと進化していきます。

3.まとめ:経営者のリーダーシップが未来を拓く

収益改善は、決して簡単な取り組みではありません。
しかし、現状に安住せず、自社の強みと弱みを深く見つめ直し、社員と共に未来を切り拓こうとする経営者の主体的なリーダーシップこそが、不確実な時代を生き抜くための最も強力な武器となります。
本コラムで紹介した「売上増加」と「コスト削減」という2つの視点と、5つの実現ステップが、皆様の経営の一助となることを願っています。

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