COLUMN
コラム
SDGsが目指す「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現とユニバーサルデザインとの関連性を見ていきます。
ユニバーサルデザインとは?
ユニバーサルデザインの歴史と意義
ユニバーサルデザイン(Universal Design)とは、Universal=普遍的な、という言葉の意味の通り、すべての人のためのデザインを表しており、障がいの有無や年齢、性別、国籍などに関わらず、すべての人が利用しやすいようにデザインすることをいいます。
ユニバーサルデザインの考えは、1980年代にアメリカのノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏によって誕生しました。アメリカでは障がいのある人の生活の不便を取り除くためバリアフリーの考え方が広まっていたが、自身も車椅子を利用する障がい者であった建築家のロナルド・メイス氏は、バリアフリーで特別扱いされることを嫌い、障がいを持つ人々が差別を受けたり不便さを感じないようにするため、それまでのバリアフリーなどの概念に代わってユニバーサルデザインを提唱しました。日本には1990年代の半ばから広まってきました。
ユニバーサルデザインを実現するのポイントとして、デザインがかかわる幅広い分野での方向性を明確にするため、ロナルド・メイス氏を中心に、工業デザイナー、技術者、環境デザイン研究者などからなるグループが「ユニバーサル7原則」としてまとめています。
ユニバーサルデザインとは
すべての人にとって、できる限り利用可能であるように、製品、建物、環境をデザインすることであり、デザイン変更や特別仕様のデザインが必要なものであってはならない。
ユニバーサルデザイン7原則
原則1:誰にでも公平に利用できること
原則2:使う上で自由度が高いこと
原則3:使い方が簡単ですぐわかること
原則4:必要な情報がすぐに理解できること
原則5:うっかりミスや危険につながらないデザインであること
原則6:無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること
原則7:アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること
ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い
似た意味に「バリアフリー」という言葉がありますが、ここでは簡単にユニバーサルデザインとの違いに触れたいと思います。バリアフリーは、「バリア」という言葉の通り、高齢者や障がいのある方が生活する上での障壁(バリア)を取り除くという考え方です。例としては、階段や段差など昇り降りが難しい場所にスロープを設置したり、公共交通機関であるバスにおいてスロープ板付き車両の導入です。それに対してユニバーサルデザインは、高齢者や障がいのある方はもちろん、子どもや外国籍の方など、すべての人が使いやすいことをデザインの段階で考えています。つまり、対象者(「一部の人」か「すべての人」であるか)と目的(「後から取り除く」か「初めからデザインする」)かの2点が違いといえます。
ユニバーサルデザインの活用
まちづくり
ユニバーサルデザインは様々なまちづくりに活用されています。
ピクトグラム(絵文字)
交通施設、観光施設、商業施設など様々な場所で使われているピクトグラムは、海外からの旅行者や細かい文字の見えにくいお年寄りなどすべての人が伝えたいイメージを一目で理解することができます。
音響・時間表示信号機
音や音声で青信号を知らせて、視覚障害者など安全に横断歩道を渡ることができます。また、青信号までの時間を視覚的に表示することにより、誰にでもわかりやすく、イライラせずに安心して横断できます。
自動ドア
重量センサーや人感センサーで自動的に開閉するため、高齢者や車いす利用者だけでなく、ベビーカーを押したり、子どもを抱きかかえたりする方にも便利です。
駅の改札
通り抜ける幅の広い改札が1か所あることで、車いす利用者や歩行補助を使う方など誰でも利用しやすい例です。
インクルーシブ公園
身体能力や障害の有無を問わず、誰もが楽しく安全に遊べるよう配慮された公園です。
UDフォント(Universal Design Font)
人が生活する上で使いやすさ、見やすさといった細かい部分に配慮・工夫をしたデザインです。
交通標識や各種案内表示・看板、役所・病院など、公共施設の案内表示などに使用されています。
学校教育
日本授業UD学会では、授業のユニバーサルデザインを「特別な支援が必要な子を含めて、通常学級におけるすべての子が楽しく学び合い『わかる・できる』ことを目指す授業デザイン」と定義して、授業づくりを進めています。
また、ユニバーサルデザインの視点を取り入れた環境整備も取り組まれています。
黒板回りをシンプルにする
視覚的な刺激を少なくすることで、学習中、黒板に向かって集中しやすくなる。
椅子の足にテニスボール等をつける
音を出にくくすることで、学習に集中しやすい静かな環境をつくる。
学習中の発言のスタイル
話すときのルールを視覚的に示すことで、理解しやすくなるだけでなく、話し方のスタイルは、子どもが自分の考えを整理し、友達の考えにつなぐことにも役立ちます。
色覚に配慮したチョーク
通常使われているチョークの色は、色覚に障がいのある子どもには、区別がつきにくいケースもあるため、色覚に配慮したチョークが開発されている。
SDGsとユニバーサルデザイン
「誰一人取り残さない」の精神が大切
昨今、国や自治体、企業が取り組むSDGsは、17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。これは、ユニバーサルデザインが目指す、すべての人が使いやすいデザインの考え方と共通するものです。ユニバーサルデザインを活用したまちづくりや教育現場が、SDGs目標11「住み続けられるまちづくり」やSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」に繋がるだけでなく、根底にある考えは、SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」の目標達成にも繋がります。今後SDGsの目標達成において、ユニバーサルデザインの考え方は、重要な要素の1つといえます。
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