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物流業界が直面する「物流の2024問題」に対し、SDGsを改善の切り口として解決を進めるためにはどのようなステップが必要になるのかをお伝えしていきます。
SDGsを入り口として荷主と物流会社が2024問題と向き合う
荷主・物流会社の両者が直面!?このままではモノが運べなくなる
2024問題とは、2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働時間の上限が年間最大960時間に制限されることを指します。令和3年度トラック輸送状況の実態調査結果によるとトラックドライバーの1日あたりの平均拘束時間は12.26時間(荷待時間のある運行)です。労働時間の内訳で大きな割合を占める一つに「荷待時間」が挙げられ、平均で1時間34分にのぼるとされております。これは物流会社だけでなく、荷主の都合によって発生する問題でもあります。
2024問題の時間外労働時間の制限によって物流会社は収益悪化すると同時に、荷主が今までムリをさせて依頼をしていた案件は運べなくなるケースが出てくる事が予測されます。
【出典】
国土交通省 トラック輸送状況の実態調査結果
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001409523.pdf
2024問題の取り組みはSDGsの取り組みに直結する!
SDGsの17のゴールの一つである目標⑧「働きがいも経済成長も」は、「包摂的かつ持続可能な経済成⻑及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用 (ディーセント・ワーク)を促進する」のテーマのもと、12個のターゲットが設定されています。
2024問題の解決に向けて物流会社・荷主が解決に向き合う事は「ドライバーの長時間労働」の是正によるSDGsのゴール達成に貢献します。
2024問題は自社だけで解決するのは難しいです。他社(荷主・物流会社)を巻き込み、歩み寄った対話形式の検討が求められます。その際には、SDGsのテーマを入り口に対話をすることで短期的な利害調整にとどまるのではなく、長期的な視点で「2030に向けたのサステナブルなサプライチェーン」を構築するためにはどうすればいいかをコンセプトにおいたうえで解決策を模索することが必要です。
物流会社・荷主が自社の見える化を行うことが第1STEP
【物流会社】トラックドライバーの生産性を見える化し改善箇所の見える化
トラック運送業の生産性を向上させる視点として、実働率の向上、実車率の向上(時間・距離)、実車率・積載率の向上の3つについてご紹介いたします。
まずは定量的に生産性指標の切り口で自社の状況を見える化し、改善領域を削減できるように施策を検討していきます。実車率(時間)であれば、「荷待時間の削減」、「付帯業務の効率化及び削減」などが課題として挙げられ、荷主との対話すべき一つのテーマになると考えられます。積載率の向上であれば、「共同配送」など荷主間で取り組むべきテーマに対しても課題を浮き彫りにする事ができます。
出所:タナベコンサルティングにて作成
【荷主】自社のサプライチェーンを見える化して運送リスクの見える化
自社の商品がどうやって運ばれているのかを正確に把握することが必要になります。自社のサプライチェーンを詳細に確認していくと、どこに問題があるのか、どこを短縮できるのかは明確になると考えられます。
また物流業界は多重下請け構造であり、委託物流会社と実物流会社が違うケースが見受けられます。物流会社の中には、自社で運ぶとコンプライアンス上厳しいエリアに対して下請けの物流会社に委託しているケースもあるので注意が必要です。
ぜひ自社のサプライチェーンを可視化して問題点となる箇所を把握、優先順位の高いところから企業間を通じて解決を目指してもらいたいと考えています。
改善箇所例としては先着順での積み込み、積み降ろしによる荷待ち時間の増加要因の削減や即納体制・翌日配達など本来必要のない案件までさせているケースは見直しが必要です。
サステナブルなサプライチェーンを担い、ステークホルダーから選ばれる
SDGsと通じた2024問題の取り組みをブランディングに活用
2024問題は自社だけの個別最適ではなく、サプライチェーンを作り上げている当事者としての全体最適の視点から解決策を模索しなければ根本的な解決にはなりえません。しかし、短期的に利益を追求すると施策によるコストアップなどを懸念し、総論賛成各論反対で進まない可能性があります。そこでサプライチェーンを作り上げている当事者がSDGsの2030というバックキャスティングの視点から対話を行うことで長期的に起こる「運べなくなるリスク」を十分に認識できます。
そして取り組みの実行推進と社外への積極的なアウターブランディングを行うことで、SDGsを推進している企業として認知され、ステークホルダー(顧客・社員・社会)から選ばれる会社になると考えます。
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