COLUMN

2022.07.18

スポーツとの連携で叶えるSDGs:スポーツチームのSDGs活動

前回(https://www.tanabekeiei.co.jp/vision/column/detail29.html)は、自社とスポーツチームとのパートナーシップにより、解決可能な社会課題や地域課題があることをお伝えしました。今回は、実際にスポーツチームが取り組んでいる活動についてご紹介します。

時代に合わせて変化するスポーツの在り方

プロスポーツに求められる役割

文部科学省は、「する」「みる」「ささえる」といった多様な形での「スポーツ参画人口」の拡大を通して、全ての人々がスポーツの力で輝き、前向きで活力のある社会、絆(きずな)の強い世界、豊かな未来の実現を目指しています。(文部科学省『令和2年度 文部科学白書』2021年7月)

参照
https://www.mext.go.jp/content/20210720-mxt_soseisk01-000016965_2-8.pdf


プロスポーツは、この三つの中で、主に「みるスポーツ」として多くの人に支持されています。文部科学省は、プロスポーツの役割を次のように示しています。

参照
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/athletic/070817/010.htm


プロスポーツは、「みるスポーツ」として幅広い年齢層に親しまれ、スポーツ全体の振興に寄与しています。とりわけ、青少年に対しては、スポーツに対する夢と感動を与え、自らがスポーツを行うきっかけとなることから、青少年の健全な育成やスポーツの裾野を広げる役割を果たすなど、その意義は、極めて大きいものがあります。(文部科学省ホームページ「我が国の競技スポーツ」)

スポーツチームや所属選手は、応援してくれる人々へ夢や感動を届けるというミッションを実現するため、本業といえる試合以外にもイベントなどを通じてステークホルダーとの接点を持ち、スポーツ振興に努めています。協会やリーグが主導して振興活動を行うケースもありますが、多くは各スポーツチームがそれぞれに活動内容を検討し、役割を果たしています。

スポーツを取り巻く環境の変化

スポーツチームに求められる役割は、今も大きくは変わっていませんが、活動内容は時代の変化に合わせて少しずつ変化しています。

従来のプロスポーツは、「いかに試合の内容で魅せるか」に重点が置かれていました。しかし、最近はアリーナやスタジアムといった施設の整備や演出・イベントなどに趣向を凝らし、試合前後の時間や空間もスポーツの一部と捉えて、「体験価値」を提供するチームが増えています。

また、コロナ禍の影響で変わったことも多くあります。感染対策のため、現地での観戦や声を出しての応援が制限される場合があるようになりました。また、選手の感染を防ぐため、試合前後や地域へ出向いてのファンイベントといった接触を伴う活動は減り、オンラインイベントが拡大しました。

そうした状況でも、というより、むしろそうした状況下だからこそ、プロスポーツは夢や感動を届けるという役割を強く求められます。そこでスポーツチームは、自チームやファンだけでなく、社会や地域に何をもって貢献できるのかをより深く考えるようになり、SDGs活動へ注力し始めました。

プロスポーツのパートナーシップの事例

Jリーグ:広くアイデアを募集し、課題解決に取り組む社会連携活動

スポーツチームによるSDGs活動の特徴は、自治体・地域社会・企業・個人など多くのステークホルダーとの接点を持つという強みを生かし、積極的にパートナーシップの力を発揮していることです。

中でも、ホームタウン制を敷き、地域に根差した活動を長く続けているのがJリーグ・Jクラブです。「世界でいちばん地域を愛するプロサッカーリーグになりたい」と掲げ、地域住民や企業・団体・自治体・学校などと連携。教育、ダイバーシティー、まちづくり、健康、世代間交流など、さまざまな課題に取り組む社会連携活動「シャレン!」を推進しており、特に社会に幅広く共有したい活動を、1年に1度、「シャレン!AWARDS(アウォーズ)」で表彰しています。

シャレン!は、「Jリーグをつかって社会を良くするアイデア」を個人・法人問わず随時募集。そのアイデアを広げ、深める場としてワークショップ「シャレン!キャンプ」を開催しています。活動をJリーグ・Jクラブの外に開くことで、自チームだけでは気付けないような社会・地域の課題にも取り組める仕組みにしているのです。

参照
https://www.jleague.jp/sharen/about/

北海道日本ハムファイターズ:試合がない日にもにぎわいや交流を創出する空間を創出

北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド北海道」を含む「北海道ボールパークFビレッジ」が2023年3月に開業予定です。球場のみではなく、Fビレッジ全体でSDGsに貢献するまちづくりを目指し、「次世代ライブエンターテイメント」「最先端ウェルネスライフ」「未来型リビングコミュニティ」の三つをテーマに、国籍や年齢、性別を問わず、より多くの人が集い、夢や理想を実現していく場にすることを掲げています。

さらにFビレッジは、地域社会の将来を担う子どもの多様な選択肢と成長に寄与することを明言。地域や社会の課題を学ぶ場や職業体験の場を提供するほか、フェーズごとに新施設を開設し、いつまでも完成せず発展し続けるエリアであることを目指しています。

球場と周辺エリアを、試合がない日にもにぎわいや交流を創出するエリアとして開発する「ボールパーク構想」。この考え方は、野球以外のスポーツにも広がりを見せており、今後ますますスポーツと地域の関係が密接になると予想されます。

参照
https://www.hkdballpark.com/

おわりに

今回は、プロスポーツに求められている役割と取り巻く環境の変化を踏まえ、広くパートナーシップを発揮し、SDGsに向き合っている事例を二つご紹介しました。

これまでは「みるスポーツ」とされていたプロスポーツですが、事例のような連携により、企業や個人が「ささえる」立場でプロスポーツに参画できる領域も増えています。
特に、Jリーグの事例のように、スポーツチーム側が広く間口を開いていれば、「自社の強み」「社会や地域の課題」「スポーツチームにできること」を掛け合わせて活動を広げやすいでしょう。
スポーツ業界は近年、SDGsの取り組みを積極的に行い、実績も広く公開しています。パートナーシップにより課題を解決した事例も多いので、参考にしてみると良いかもしれません。

自社だけでは解決が難しい課題であっても、パートナーシップの力で取り組めることは多くあります。視野を広げ、課題の解決に目を向けていきましょう。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部

髙橋 深法

プロスポーツチームへフロントスタッフとして社会課題の支援に取り組む経験を持つ。営業、広報をはじめ、集客・ファンクラブ運営・各市町村との連携など幅広い業務を経験後、当社へ入社。コンサルタントのアシスタントとして、チームコンサルティングの支援をはじめ、クライアントサクセス、ウェビナー運営、顧客への訪問等、幅広くコンサルタントを支援している。

髙橋 深法

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業66
200業種
17,000社以上