COLUMN

2022.07.15

成果につながるSDGs研修はこのように実施する~SDGsの取り組みにおいて重要なSDGs研修のポイント~

皆さんはSDGsへ取り組むにあたって、このような困りごとや課題はないでしょうか。

SDGsへ取り組みたいが何から始めたらよいか分からない
どのように目標を設定したらよいか分からない
SDGsの取り組み対して社内の理解が不足している
SDGsを社内に理解・浸透させたい などなど。

これらはSDGsへ取り組んでおられるまたは取り組もうとされておられる企業の方々とお話しする際に、まず間違いなく出てくるキーワードです。
これらの困りごとや課題を解決する手段として「SDGs研修」をおすすめします。しかし、どのような研修でも良いというわけではありません。

成果につながるSDGs研修には押さえるべきポイントがあります。
Ⅰ.SDGs研修が必要な3つの理由
Ⅱ.SDGs研修の対象
Ⅲ.SDGs研修のスタイル
Ⅳ.SDGs研修を成功させる3つのポイント
これら4つの観点でポイントをお伝えします。

Ⅰ.SDGs研修が必要な3つの理由

まずSDGs研修がなぜ必要なのか、その理由から考えてみましょう。
その理由は3つあります。
1.SDGsの取り組みにおける第一歩
2.社内へSDGsを浸透させる
3.企業価値を向上させる

1.SDGsの取り組みにおける第一歩

SDGs研修が必要な理由の1つ目は、SDGsに取り組むにあたりまずは研修を行って全員のSDGsに対する認識を一定レベルで持ってもらおうというものがあります。研修はSDGs実装への第一歩だということです。SDGsプロジェクトを開催するにあたりキックオフで研修を行う事例が多いです。

これはまさにSDGCompassにも定められている「SDGsを理解する」というファーストステップにあたります。このSDGCompassでは「はじめに、SDGs について知り、企業活動にとってSDGs がもたらす機会と責任を理解することが大切である。」としています。

またSDGsの理解を促すための「企業がSDGs を利用する理論的根拠」として5つ挙げています。
・将来のビジネスチャンスの見極め
・企業の持続可能性に関わる価値の増強
・ステークホルダーとの関係の強化、新たな政策展開との歩調合せ
・社会と市場の安定化
・共通言語の使用と目的の共有
このような項目を理解することでSDGsへの取り組みをスタートさせることができます。

※SDGCompassとは、企業がいかにしてSDGsを経営戦略と整合させSDGs への貢献を測定し管理していくかに関する指針

2.社内へSDGsを浸透させる

SDGs研修が必要な理由の2つ目は、SDGsへ取り組む意志を社内へ浸透させることで全員参加を促し取り組みの効果を最大化させる必要があるということです。SDGsは「誰一人として取り残さない」ことを宣言しています。企業としての取り組みにおいても全員参加・全員貢献を前提と考えるべきです。ただ、このように全社の取り組みとする重要性は理解するものの、やはり意識の差や知識の差が大きく存在するという現実があります。これらの解消は一朝一夕にはいかない部分が多々ありますが、研修がその方法の一つにはなり得ます。

また、SDGs研修は取り組みの導入部分のみ必要ということでもありません。マテリアリティ・KPI・アクションプランを策定し経営統合するにあたり、全社員への再度の周知、取り組み意識の醸成などにも研修は有効です。SDGsの新しい潮流や新しい取り組み事例などの情報を定期的に収集し、毎年研修を通して情報共有することも良いのではないでしょうか。新入社員研修に取り入れるのも有効的です。いわば定期的な研修が社内への浸透を促しSDGs実装を推進する原動力になると言えます。

SDGs研修を実施すべきタイミングは以下となります。
・SDGsプロジェクトのキックオフ
・SDGs経営統合の段階
・毎年のSDGs報告会
・新入社員への研修

3.企業価値を向上させる

SDGs研修が必要な理由の3つ目は、SDGsへの取り組みが企業価値の向上につながるということを真に理解する必要があるためです。企業の価値を測るモノサシが近年変化してきています。財務情報重視の考え方から非財務情報も重視する考え方が高まってきています。この傾向は今後もさらに加速していきます。上場企業などが報告する統合報告書においても非財務情報を含めた情報開示の重要性が認識されています。こうした潮流を考えるとSDGsへ真剣に取り組むことが企業価値の向上に直結するということが容易に理解できると思います。これも研修を実施すべき理由の一つであります。

また、自社のSDGsの考え方や取り組みを全員が語れるということも非常に重要です。自分事として理解し、自らの言葉で語れるようになってこそ初めて「誰一人として取り残さない」取り組みになります。このレベルを目指して研修を組み立てることをおすすめします。

※非財務情報とは、企業が投資家や株主などに対して開示する情報のうち、財務諸表などで開示される情報以外の定性情報

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Ⅱ.SDGs研修の対象

SDGs研修は受講する対象者によって内容を変える必要があります。それは知識レベルやSDGsへの貢献方法がそれぞれ違うためです。効果的な研修を行うためには誰にどのような内容を学んでもらいたいかをしっかり組み立てることが重要になります。

今回は、以下の5つの分類で内容とポイントを見ていきます。
1.役員向けSDGs研修
2.経営幹部向けSDGs研修
3.全社員向けSDGs研修
4.部門特化型SDGs研修(製造部門)
5.部門特化型SDGs研修(管理部門)

1.役員向けSDGs研修

役員を対象とした研修のテーマは「ステークホルダーと取り組むSDGs経営の本質」などがあります。 目的は、自社にとってのSDGs経営とはどのようなものか、何に取り組み何を実現するかを明確にすることです。 SDGs経営に取り組むにはステークホルダーを巻き込んだ取り組みが必要となります。 役員の皆さんとその要諦を学びます。

2.経営幹部向けSDGs研修

経営幹部を対象とした研修のテーマは「社会性と経済性を両立したSDGsビジネスモデルとは」などがあります。 目的は、社会課題を解決することと、事業が成長し持続的に収益を上げ続けるためのSDGsビジネスモデルとは何かを理解することです。 SDGsを持続的な取り組みとするためには社会性と経済性が両立している必要があります。 経営幹部の皆さんとその要諦を学びます。

3.全社員向けSDGs研修

全社員を対象とした研修のテーマは「身の回りの事例からSDGsを分かりやすく理解する」などがあります。 目的は、SDGsについて理解し関心を持ち、自身に何ができるのかを理解することです。 SDGsは「誰一人として取り残さない」という精神での取り組みが必要で、全員が自分事として捉えることが重要です。 社員の皆さんとその要諦を学びます。

4.部門特化型SDGs研修(製造部門)

製造部門を対象とした研修のテーマは「生産性向上と環境負荷低減を両立させるポイント」などがあります。 目的は、製造部門として環境・社会・経済にどのように貢献できるかを理解することです。 製造現場における取り組みが環境負荷低減へ大きく貢献できることは多々あります。 製造部門の皆さんとその要諦を学びます。

5.部門特化型SDGs研修(管理部門)

管理部門を対象とした研修のテーマは「社員の働き方改革と地域社会との共生をSDGsで実現する」などがあります。 目的は、社員が安心して働ける環境づくりや地域社会への貢献や連携で取り組めることがあるということを理解することです。 管理部門のリーダーシップで全社を巻き込んだ取り組みはSDGsに取り組むうえでの推進力になります。 管理部門の皆さんとその要諦を学びます。

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Ⅲ.SDGs研修のスタイル

SDGs研修を実施するスタイルにおいて組み立てなければいけない内容を記載します。研修開催を主導する方には意識していただきたいポイントとなります。

3つのポイントで研修のスタイルを確認します。
1.カリキュラム
2.開催方法
3.準備事項

1.カリキュラム

研修のカリキュラムは大きく2つあります。講義とワークショップです。講義を聞くインプットだけの研修というのもありますが、やはりインプットを活かしてワークショップでメンバーとディスカッションすることで考え方ややるべきことを明確にしていくことが研修の魅力と言えます。そういったことか、これらの組み合わせて実施することが多くなっています。

ワークショップの内容としては、まず実施するグループの人数が大切です。多すぎても少なすぎても有意義なディスカッションができなくなります。多くのワークショップを見てきた実績より5~8名をおすすめしています。そしてワークショップのカリキュラムは、事前課題を持ち寄りフォーマットに合わせてディスカッションをすることが一般的です。また付箋を使いながらブレーンストーミングを行うこともよくあります。

研修の目的と目指す成果を明確にし、それを達成するためのカリキュラムを検討するということが重要です。

2.開催方法

研修の開催方法としまして大きく3つの形式があります。

1つ目は集合型、メンバーが全員同一会場に集合して開催する形式です。 メリットは一堂に会すためディスカッションが盛り上がりやすいこと、デメリットは全員を集めるための調整が必要になることです。

2つ目は集合+WEB型、メンバーの一部が会場に集合し、集合できないメンバーはWEBで参加するというハイブリッドの形式です。 メリットはディスカッションしやすいという集合型の良い点と参加しやすいというWEB型の良いところを合わせられること、デメリットはファシリテートの良し悪しで会場だけで盛り上がりWEB参加者が参加しにくいという事象が発生する可能性があることです。

3つ目はオールWEB型、メンバー全員がWEBで参加する形式です。 メリットはメンバーが研修に参加しやすいこと、デメリットは自由闊達に意見を出し合いにくい可能性があることです。

コロナ禍の中で研修の実施方法も多様化しました。WEB型での研修にもかなり慣れてきたのではないでしょうか。上記の3パターンでメリット・デメリットを記載しましたが、必ずしも全員が一堂に会さなければならないということはありません。皆さんWEBでのディスカッションも大変上手になってきています。新しい研修の形を採用することは、SDGsに取り組むという観点からも積極的に検討いただきたい項目です。

3.準備事項

研修を成功させるには事前の準備が大切です。ここでは研修を成功させるために準備しておくべき事項を纏めます。

⑴参加者名簿
部門・役職・ワークショップのグループが記載された参加者名簿を準備します。この段階で目的にあわせてグループを分けておくことです。
⑵スケジュール
研修の流れ、時間配分、主担当を記載したスケジュール表を準備します。
⑶レジュメ
インプットのための講義で使用するレジュメを準備します。プロジェクターやWEB画面で投影するレジュメと手元に配布するレジュメが違う場合はそれぞれを準備します。投影するレジュメの注意点としては文字を少なめに全体を大きく見やすく工夫されたものを準備するということです。
⑷ワークショップフォーマット
ディスカッションする目的に合わせてフォーマットを設計することが重要です。思考の順序に合わせて設計するのか、できるだけ自由にアイデアを出すために自由度を増したものとするのかをしっかり設計します。
⑸次回までの課題
研修を複数回実施する際には次回の研修までに取り組む課題を準備しておくことが重要です。研修を点とするのではなく線や面で捉えた取り組みとすることが重要です。
⑹参加ノベルティ
参加者の意識を向上や継続のためにSDGsバッジやエコバッグなどを配布することも有効的です。

【関連ページ】: SDGs研修

Ⅳ.SDGs研修を成功させる3つのポイント

SDGs研修を実施するためのポイントを様々紹介してきました。最後は研修を成功させるためにぜひ実施いただきたい3つのポイントをご提案します。

ポイントは以下の3点です。
1.目的を十分理解したうえで研修に臨む
2.複数回実施し自ら考える時間をつくる
3.研修の効果測定を行う

1.目的を十分理解したうえで研修に臨む

研修を成功させるポイントとして、何といっても研修の目的の共有が最も大切です。参加者全員が目的を理解し参加することで研修の効果は高まります。また研修に参加したあとどのように活かすのか、何を実践するのかというアウトプットを意識することで研修の効果がさらに高まります。ぜひ参加者全員に自分の言葉で研修の目的を記載することから研修をスタートしてください。

自社のSDGsの取り組みがSDGsウォッシュで終わらないようにするため、参加メンバーにはその本質についてしっかり学んでいただくことが重要になります。そのためにも目的の理解と対象者層にあった内容の研修を実施することです。それが誰一人取り残すことなくSDGsの本質をしっかり理解することにつながります。

※SDGsウォッシュとは、SDGsへ取り組んでいるように見せているにもかかわらずうわべだけで実態が伴っていないこと

2.複数回実施し自ら考える時間をつくる

単発の研修ではどうしても聞いて終わりという受け身的な研修になりがちです。それを防ぐためには、複数回研修を実施することで研修を点とするのではなく線や面で捉えた取り組みとすることです。研修と研修の間で自分で考える時間を設けることにより研修の効果は格段に上がります。少なくとも2回以上の研修の実施をおすすめします。

ある企業で実施した事例を紹介します。第1回は「自社の事業と社会課題の関係性について」を広く検討するテーマとなっています。ここで関係性の深い社会課題を明確にします。第2回までの間で、ではその社会課題について企業としてどのようなことができるかを各自考えるという課題を出します。それをもって第2回では「環境・社会・経済視点での重点ポイントの落とし込み」として、重点課題に対しての具体的な取り組みについて事前課題で準備してきたものをもとに意見を出し合い、ステークホルダーにおける重要度と自社における重要度で絞り込みを行います。2回という限られた時間であるため、マテリアリティの詳細検討までには至りませんが、自ら考えることでSDGsの重要性への気づきをもたらすことには十分な内容となりました。

3.研修の効果測定を行う

研修を受けたメンバーがどのように変わったか、効果を測定したいというのは当然の考えだと思います。しかしながらこの効果測定がなかなか難しいものがあります。そこで研修の開催前後でアンケートを実施することをおすすめします。

ある企業で選択式のアンケートを実施した項目の事例を紹介します。
・SDGsという言葉を知っていますか?
・SDGsは重要な取組みだと思いますか?
・個人的にSDGsへ貢献できそうなことは何ですか?
・企業としてSDGsへ貢献できそうなことは何ですか?
・関心の高い社会問題は何ですか?
・SDGsや社会課題に対して何らかの行動を起こそうと思いますか?
などがあります。

このようなアンケートを通して参加者の意識の変化を見える化することができます。 また参加者はこのアンケートに答えることで自分のSDGsに対する考え方を改めて認識することができます。

【関連ページ】: SDGs研修

まとめ

これまで筆者はSDGsに先進的に取り組んでおられる多くの企業の方々とディスカッションをしてきました。SDGs先進企業の特徴の一つが、経営トップが誰よりも本気でSDGsに向き合い、取り組みを先導しているということです。ぜひ経営トップを中心としてSDGsを経営統合していただきたいと考えます。

また、経営トップが本気になっていないSDGsでは成果は出ませんが、経営トップだけが本気でもダメです。誰一人取り残さないの精神で、全社員を巻き込んだSDGsの取り組みとなるように、要所要所で成果につながるSDGs研修を取り入れることをおすすめします。

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著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
エグゼクティブパートナー

巻野 隆宏

専門分野は事業戦略の立案をはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたる。企業の持続的な変化と成長のサポートに取り組み、志ある企業・経営者のパートナーとして活躍中。「高い生産性と存在価値の構築」を信条とし、明快なロジックと実践的なコンサルティングを展開。建設業、製造業を中心に中・長期ビジョン構築において事業の選択と集中で高収益ビジネスモデルへの変革を数多く手掛けてきた。

巻野 隆宏

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