COLUMN

2026.09.30

経営企画の役割とは?
中長期の成長戦略を実現する機能とポイント

経営企画の役割は、資料をつくることではなく、経営判断を変えることです。
今こそ、その本来機能へアップデートすることが求められています。

目次

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経営企画の役割とは?中長期の成長戦略を実現する機能とポイント

経営と経営企画の違いとは何か

(1)経営企画の役割を考える際、まず整理すべきは「経営」と「経営企画」の違いです。私は、経営とは経営者や経営幹部が自社の方向性を決め、最終意思決定を行い、その結果責任を負うことだと捉えています。一方、経営企画とは、その経営者や経営幹部に対して企画すること、すなわち現状の課題提起や分析にとどまらず、わが社の未来をどうあるべきか設計し、その実現をリードする機能であると定義しています。

(2)言い換えれば、経営企画は単なる資料作成部門でも、会議体の事務局でもありません。経営の意思決定の質と速度を高めるために、論点を整理し、選択肢を設計し、全社の実行に接続する機能です。学術的にも、経営企画部門は経営計画や予算管理に加えて、多様な意思決定支援を担う役割へ拡大していると整理されています。また、経営企画を「将来の道筋を描く参謀機能」と捉える見方もあります。こうした整理は、私が実務の現場で感じている経営企画の役割と重なります。

なぜ今、経営企画の役割が改めて問われているのか

なぜ今、経営企画の役割が改めて問われているのか

(1)企業を取り巻く経営環境は、不確実性を増しています。地政学リスク、インフレへの転換、技術革新の加速、人的資本やサステナビリティへの対応など、経営判断の前提は短期間で大きく変わるようになりました。こうした環境下では、従来の延長線上で中期計画を積み上げるだけでは、持続的な成長戦略を描き切れません。

(2)加えて、成長の論点は単一部門で完結しにくくなっています。DX推進、新規事業開発、人的資本投資、ガバナンス強化、M&A活用などは、いずれも部門横断で設計・推進すべきテーマです。だからこそ経営企画には、環境変化を経営課題に翻訳し、どこに経営資源を投じるべきかを設計する機能が求められています。戦略とは資源の再配分であり、この視点を持てるかどうかが、これからの経営企画の質を分けます。

(3)さらに、企業価値の捉え方そのものも変わっています。売上や利益の大きさだけではなく、成長性、収益性、資本効率、持続性をどう高めるかが問われる時代です。そのため経営企画には、財務指標だけでなく、人材、組織、DX、ESGといった非財務の視点まで含めて、経営判断に必要な論点を設計することが求められます。環境変化を情報として理解するだけでは不十分であり、自社の意思決定を変えるところまでつなげてこそ、経営企画の役割を果たしたと言えます。

中長期の成長戦略を実現する7つの機能

中長期の成長戦略を実現する7つの機能

(1)実務では会社ごとに所掌は異なりますが、企業として必要な経営企画機能は、大きく7つに整理できます。長期ビジョン策定、中期経営計画、事業ポートフォリオ管理、M&A・アライアンス、経営管理・KPIマネジメント、組織横断プロジェクト推進、ガバナンス・リスク管理です。

(2)ただし、重要なのは、この7機能をすべて経営企画部門だけで担うことではありません。企業によって、経営者や役員が強く担っている機能もあれば、人事部門や事業部門が十分に担えている機能もあります。したがって、経営企画部門が担うべきなのは、自社の中で不足している、あるいは他部門では充足しにくい機能です。経営者の特性や他部門の役割を踏まえたうえで、どの機能を強化すべきかを明確にすることが極めて重要です。

(3)特に、経営企画責任者や経営者・役員が押さえるべき実務ポイントは、7機能を並列で見るのではなく、優先順位で捉えることです。長期ビジョンが弱い企業もあれば、KPI運用や横断プロジェクト推進がボトルネックになっている企業もあります。重要なのは、どの機能が自社の成長を最も制約しているかを見極めることです。その見極めを誤ると、会議体を増やしても、指標を増やしても、経営の実効性は高まりません。

「全部やる」のではなく「最も弱い1機能」から着手する

「全部やる」のではなく「最も弱い1機能」から着手する

(1)経営企画の進化が進まない理由の一つは、すべてを一気に変えようとすることです。しかし、実務で重要なのは優先順位です。まずは、自社の7機能を棚卸しし、どこが不足し、どこが他部門で補完できているのかを見極めることが出発点になります。

(2)その上で、最も弱い1機能を特定し、3カ月以内に着手できるテーマへ落とし込むべきです。たとえば、事業ポートフォリオ管理が弱いのであれば、主要事業ごとの収益性と投下資本を可視化することから始めます。あるいは、意思決定支援が弱いのであれば、経営会議に上げる論点の整理方法やKPIの見せ方を変えます。こうした小さくても本質的な着手が、経営企画を「管理・調整型」から「価値創造牽引型」へ変える第一歩になります。

(3)重要なのは、全部を平均的に強くすることではなく、自社の成長に最も影響する機能から着手することです。経営者の得意・不得意、役員体制、既存部門の成熟度によって、優先順位は企業ごとに異なります。だからこそ、一般論をそのまま当てはめるのではなく、自社の現在地を可視化した上で、強化すべき機能を絞り込むことが必要です。実務では、インパクト、緊急性、実行可能性の3軸で判断すると、優先順位をつけやすくなります。また、優先順位を決める際は、経営企画部門の理想像から逆算するのではなく、経営トップが何に困っているのか、どの意思決定が遅れているのか、どの機能が現場実行につながっていないのかという現実の詰まりから見ることが有効です。経営企画は、理想論の提示ではなく、経営の詰まりを解消するところから価値を発揮します。

M&Aは案件ではなく、成長を実装する経営システム

M&Aは案件ではなく、成長を実装する経営システム

(1)M&Aは、それ自体が目的ではありません。あくまで、事業戦略を実現するための手段です。つまり本質は、自社の成長戦略を進める上で不足・不在となっている機能、技術、人材、販路、地域基盤を補う・強化することにあります。

(2)この観点で見ると、M&Aは単発の案件対応ではなく、戦略、探索、投資判断、実行、PMI、そして次の成長につなげるまでを一貫して回す経営システムとして捉える必要があります。「買うこと」自体が目的化すると、案件の成立はしても、成長戦略の実現にはつながりません。重要なのは、長期ビジョンと事業ポートフォリオに照らして、なぜ買うのか、何を補完するのか、買収後にどのようなシナジーを生み出すのかを事前に描くことです。経営企画に求められるのは、案件情報を処理することではなく、この設計思想を持って経営判断に接続することです。ここまで踏み込めて初めて、M&Aは中長期の成長戦略を実現する有効な経営技術になります。

まとめ

経営企画の役割は、資料をつくることではなく、経営判断を変えることです。わが社の未来を設計し、その実現に必要な機能を見極め、優先順位をつけ、実行へ接続する。今こそ、その本来機能へアップデートすることが求められています。

【出典・参照資料】
・那須耕三「経営企画部門の機能と役割」
・那須耕三「日本企業における経営企画部門の役割と課題に関するアンケート調査研究」

【図解】
7つの経営企画機能

※横にスクロールします。

機能領域 Before(管理・調整型) After(価値創造牽引型)
中長期戦略の設計 トップダウン型の計画の取りまとめ シナリオプランニング・バックキャストで、
10年先の理想像から戦略・投資・人材を設計する
事業ポートフォリオ見直し 事業別のP/Lの集約 ROIC・資本効率・成長性を踏まえ、事業の選択と集中・
再編を意思決定につなげる
新規事業開発・M&A 新規事業を検討する委員会の事務局/案件の窓口 成長投資の選択肢として新規事業・M&A・アライアンスを位置づけ、
探索からPMIまで設計する
組織デザイン設計 各部門から提出された内容の取りまとめ 戦略実行に必要な組織構造・権限・人材配置を設計し、
部門間連携を促す
中期経営計画と
ROIC・KPIマネジメント
P/L指標のみの目標と実績の取りまとめと定性的な評価 ローリング型中計、非財務KPI、ダッシュボードで戦略と現場実行を接続する
全社横断テーマ推進 テーマの事務局/日程調整と当日の運営および経営会議等での報告 DX・サステナビリティ等の横断テーマをPMOとして推進し、
全社最適を実現する
意思決定支援 トップ、役員の意思決定事項の議事録係 経営会議・投資判断・リスク対応に必要なデータ、論点、選択肢を提示し意思決定を速める

【関連オンデマンド】
経営企画は今こそ変わるとき 7つの機能を武器にする新時代の経企戦略

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
チーフマネジャー

上原 伸也

アパレル製造小売業で販売・店舗マネジメント、大手旅行情報サービス業で営業・マーケティング業務に従事後、当社へ入社。「地域企業を元気にし、地域経済を活性化させる」を信念に、事業戦略構築、新規事業開発、SDGs経営統合を得意分野とし活躍中。顧客の改善活動をワガゴトとして取り組む真摯な姿勢でのコンサルティング展開で、クライアントから高い信頼を得ている。

上原 伸也

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