COLUMN

2025.01.20

新規事業立ち上げにおける課題とその解決策
事例をまじえてご紹介

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新規事業立ち上げにおける課題とその解決策|事例をまじえてご紹介

新規事業の立ち上げは、企業の成長と競争力を維持するために重要な要素です。しかし、新しいビジネスを始めることは多くの課題を伴います。本コラムでは、新規事業の重要性とその課題を認識し、具体的な課題の見つけ方や解決策について考察します。さらに、成功事例を通じて実践的なアプローチを学ぶ一助となれば幸いです。

新規事業による効果(期待)

新規事業は、企業が市場での地位を強化し、持続的な成長を遂げるための手段の1つです。既存の事業が成熟期に達し、成長が鈍化する中で、新たな収益源を確保することは企業の存続に直結します。また、技術革新や市場の変化に迅速に対応するためにも、新規事業の立ち上げは現実的な選択肢となります。新規事業による効果(期待)としては、例えば次のように挙げられます。

①市場の変化への対応

市場環境は常に変化しています。消費者のニーズや嗜好の変化、技術の進化、競合他社の動向など、さまざまな要因が市場を動かしています。新規事業を立ち上げることで企業はこれらの変化に迅速に対応し、新しい機会を捉えることができます。

②収益源の多様化

既存の事業が成熟期に達すると、成長は鈍化し収益力は頭打ちになる可能性があります。新規事業は企業にとって収益源の多様化、すなわち経済的な安定性向上とリスク分散をもたらせる可能性があります。

③イノベーションの推進

新規事業は、企業内でのイノベーションを促進する手段でもあります。新規アイデアや技術の導入により、企業は競争優位性を高め業界内でのポジショニングを確立できる可能性があります。

新規事業による効果(期待)

新規事業の「タネ」の見つけ方

新規事業の「タネ」を見つけるためには、外部環境(市場、トレンド、他社動向など)と内部環境(自社の強み、バリューチェーン、リソースなど)の両面を正しく捉えることが非常に重要です。

(1)外部環境

①顧客ニーズの把握

市場調査を通じて、顧客が何を求めているのかを明確にします。アンケートやインタビューを通じて、顧客が抱える問題や求めている価値を直接聞くことが有効です。これにより、顧客のニーズに合致した製品やサービスを提供することが可能になります。

②競合分析

競合他社の動向を分析することで、自社がどのように差別化できるかを考えます。競合の強みや弱みを把握し、自社の強みを活かせる戦略を立てることが重要です。

③市場トレンドの把握

市場のトレンドを把握することで、将来的な市場の変化に対応する準備をします。技術革新や消費者の嗜好の変化など、長期的な視点で市場を見据えることが求められます。

(2)内部環境

①自社の強みの評価

自社の強みを把握し、それを最大限に活用できる事業領域を見極めます。その強みに競争優位性を認めることができる場合、それを活かした新規事業の立ち上げは効果的と言えます。

②資金力の評価

新規事業に必要な資金をどのように調達するかを考えます。自社の資金力を評価し、必要に応じて外部からの資金調達を検討することは、事業のステップ(立上げ~スケール化)検討にも必要な要素となります。

③人材のスキルセットの評価

社内の人材のスキルセットを把握し、新規事業に必要なスキルを持つ人材を育成するプログラムを導入します。これにより、組織全体のスキルアップを図ります。

新規事業の「タネ」の見つけ方

新規事業立ち上げの具体的な課題(リスク)

一方で、新規事業の立ち上げには、具体的に以下のような課題(リスク)が存在します。新規事業により得られる効果(期待)とのバランスで、これらについても見極め、評価する必要があります。

①市場の不確実性

新しい市場に参入する際には、その市場の発展性の予測が難しいことがあります。市場の不確実性は、事業の成功を左右する大きな要因の1つです。また、新しい市場に参入する際には、既存の競合他社との競争や、顧客の認知度を高めるためのマーケティングが必要となるなど、その市場における具体的な参入障壁の理解が必要です。

②資金調達の難しさ

新規事業には多額の初期投資が必要な場合が多く、資金調達は大きな課題の1つです。特に、リスクが高いと判断されると、投資家からの資金調達は難しくなります。

③適切な人材の確保

新しい事業に必要なスキルセットを保持した人材の適切な確保と育成が重要となります。

④組織内での抵抗

既存の事業に注力し成果が出ているように見える組織では、新規事業へのエンゲージメントは低下する可能性があります。これを乗り越えるためには、組織文化の変革、社員の巻き込みが必要です。

新規事業立ち上げの具体的な課題(リスク)

課題解決のための戦略とアプローチ

新規事業の課題を解決するためには、以下のような戦略とアプローチが有効です。

(1)市場調査とプロトタイピング

市場調査を徹底し、顧客のニーズを正確に把握します。その上で、プロトタイプを作成し、顧客からのフィードバックを得ることで製品やサービスを改善します。

(2)資金調達の多様化

クラウドファンディングやベンチャーキャピタル、政府の助成金など、多様な資金調達手段を検討します。また、事業計画を明確にし、投資家に対してリスクとリターンをしっかりと説明することが重要です。

(3)人材戦略の強化

新規事業に必要なスキルを持つ人材を外部から採用するだけでなく、社内の人材を育成するプログラムを導入します。これにより、組織全体のスキルアップを図ります。

(4)組織文化の変革

新規事業を推進するための組織文化を醸成します。ここで重要なのは、トップが自ら率先して新規事業の重要性を訴え、全社員が一丸となって取り組む環境を整えることです。

課題解決のための戦略とアプローチ

新規事業の立ち上げに成功した企業の事例

最後に、新規事業の立ち上げに成功した企業の事例を紹介します。

由紀ホールディングス株式会社/由紀精密株式会社
同社は、創業以来ネジや電気部品の細かいパーツなどを製造していましたが、時代の流れの中で売上が減少。この機に、自社部品が取引先からは「高品質」と評価されていることから、高品質が求められる市場=航空宇宙業界への参入を決意しました。当初は旅客機の一部品からのスタートでしたが、その後は多種多様な部品の量産対応ができるまでに成長しました。そこから宇宙関連部品への展開も進め、現在では担当した10基以上の小型衛星が軌道上を飛んでいます。自社の強み=精密加工技術を深く理解し、他分野に応用展開することで成功を果たした事例と言えます。

参考:ものづくりの力で世界を幸せに~中小製造業を輝かせる事業承継

さいごに

新規事業の成功には外部・内部双方の環境を的確に捉え、実行に当たっては集中的に取り組む決断力が重要です。
新規事業の立ち上げは決して容易ではありませんが、適切な戦略とアプローチを用いることで、成功の可能性を高めることはできます。企業は常に新しい価値を提供し続けることでこそ、競争力を維持し、成長を続けることができるという点で、新規事業立ち上げの検討は企業価値を高める戦略オプションの1つなのです。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
チーフコンサルタント

金岡 史樹

大手総合電機メーカーにて機種拡販・製販連携業務に従事。新規参入市場での拡販による売上拡大及び販売スキーム転換による利益率改善等の事業推進、受注プロジェクトのQCD管理支援に携わった後、当社へ入社。営業と製造の繋ぎ目を担った経験を活かし、クライアントが抱える課題の本質に向き合うとともに、現場で働く人々が活かすことのできる戦略実装を信条とする。

金岡 史樹

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