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2025.12.25

製造業におけるバリューチェーン分析とは？付加価値を高める活用法

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製造業では昨今、顧客ニーズが多様化し、以前のような"モノ売り"から、個別対応やカスタマイズを含めた"コト売り"が求められています。それに伴い、効率化やコスト削減、顧客の期待に応えるためのバリューチェーンの再構築、適正コストの見直しが重視されています。また市場環境としては、「原材料価格（資源価格）の高騰」、「エネルギー価格の高騰」に加え「労働力不足」も加速しており、DX・GXの活用も重要なポイントとなっています。本稿では、製造業におけるバリューチェーン分析による付加価値向上のポイントを重点的に解説します。製造業の皆様の戦略策定における一助となりましたら幸いです。

バリューチェーンとは

バリューチェーン（価値連鎖）とは、企業の様々な活動がどのように繋がり、付加価値の創出へどのように貢献しているのか、という関係を示したものです。これは米国の経済学者マイケル・E・ポーター（ハーバード大学経営大学院教授）が1985年の著書『競争優位の戦略』の中で提唱したフレームワークであり、今日に至るまで広く活用されています。

バリューチェーンとは

バリューチェーン分析とは

(1)分析目的と得られるメリット

バリューチェーン分析は、企業が製品を供給する各活動において、どのような付加価値が生み出されているのかを把握し、その付加価値を最大化するための改善点を特定し、戦略策定に活かすことを目的としています。分析過程において、各活動でのコストが明らかとなり、不要コストを顕在化する為、コストマネジメントに繋がる点や、自社の強み・弱みを明確化し、競合他社との差別化ポイントを明確にする点がメリットです。

(2)分析における構成要素

下記図のように、バリューチェーンは『主活動』と『支援活動』に大別できます。
事業活動を、付加価値向上に直結する『主活動』と、それを支える『支援活動』に分解し分析することで、各工程の課題を可視化します。これにより、効率化・付加価値の最大化を実現し、競争力の向上、そして利益へと繋げていきます。

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出所：タナベコンサルティング作成

企業のそれぞれの活動が、全社の付加価値にどのように関わっているのか。
バリューチェーン分析は、その関係を明確にするフレームワークです。
単に「競争力がない」「他社と比べてコストが高い」など、ざっくりとした問題点を議論しても根本解決に繋がりませんが、バリューチェーンを分析することで、競争力に欠けるプロセスを可視化し、根本的解決へ繋げます。

(3)業界毎のバリューチェーンの形

製造業とひとえに言っても、事業モデルによってそれぞれ特徴が異なります。まずは自社のバリューチェーンがどのような構造になっているのかを把握することが重要です。一般的な製造業の場合、設計→調達→生産→物流→販売→アフターサービスとなりますが、企業によっても異なる為、自社にとってのバリューチェーンを考えることが肝要です。

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出所：タナベコンサルティング作成

バリューチェーン分析の具体的な手法

製造業のバリューチェーン分析は、以下のプロセスで進めます。

(1)自社のバリューチェーンを整理・把握する

第一にすべきことは、自社のバリューチェーンを正しく把握することです。上記で示している図のように、技術開発や調達などの支援活動と主活動を合わせたバリューチェーンを構成することが近年では一般化しています。自社の事業に伴う機能を一覧化し、それをバリューチェーンに落とし込んでいきます。

(2)自社の強みと弱みを分析する

各バリューチェーンにおける自社の強みと弱みを分類していきます。この時点では自社のみを捉えた視点で可能な限り多くの項目を列挙していくことがポイントです。

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出所：タナベコンサルティング作成

(3)各バリューチェーン活動のコストを把握する

「主活動」において、各バリューチェーン上でのコストをできるだけ正確に算出していきます。製造業においては原価管理が複雑化しやすい傾向もある為、人(マンレート)や機械(マシンレート)の活動において、どこにどれだけのコストが投下されているかを算出し、明確化することも重要です。データの蓄積環境が整備されている場合は、データをいかに利活用するかが算出コストの妥当性や整合性を高めるポイントです。

(4)バリューチェーン×VRIOを分析する

応用編として、VRIO分析で列挙した強み・弱みの妥当性を確認していきます。

① Value(価値）：その強みは外部環境の機会や脅威に適応する
② Rarity(稀少性)：その強みはごく少数の企業が有しているか
③ Imitability(模倣困難性)：その強みを競合他社が模倣するのは困難か
④ Organization(組織)：その強みを有効活用する方針や手続きが整っているか

VRIO分析では、競合他社と比較しての優位性や付加価値を分析します。そのため、外部環境分析や競合他社分析も行うことが得策です。自社を取り巻く環境や市場の正しい理解が、競合他社が今後見据える戦略の把握を可能にし、自社の次期戦略の解像度を向上させます。

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出所：タナベコンサルティング作成

バリューチェーン分析を踏まえた戦略への落とし込み

分析を終えたら、戦略の立案を進めていきます。分析結果を基に競合他社との差別化戦略を策定していきます。まずは自社の強みを最大化し、競争優位性を確立するための具体的な戦略を定めていきます。事業部毎に自社で行うべき領域、アライアンスで補完する領域、M&Aで強化する領域を整理します。自社の強みはそのまま活かし、弱みを補う為に部分的な外部リソースを活用することで、効率的な事業運営が可能となります。
次に、外部環境の変化から市場を捉え、具体的な戦略に落とし込んでいきます。現在の製造業において求められている戦略として『人材育成の取り組み』と『デジタル技術の活用』が大きく挙げられています。製造業の持続的成長には、デジタル技術や成長分野に対応した人材育成が不可欠であり、人的資本経営への取り組みが年々加速しています。DX（デジタルトランスフォーメーション）の推進は製造業の稼ぐ力向上や脱炭素（GX）の推進に寄与する重要な取り組みであり、データやデジタル技術の活用によるサプライチェーンの強靭化や事業効率の向上が期待されています。労働力不足への対応として、ロボットやAIの活用も推進されている為、バリューチェーンの中でいかに活用するかが鍵となります。

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出所：タナベコンサルティング作成

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出所：タナベコンサルティング作成

まとめ

本稿では、製造業におけるバリューチェーン分析の重要性とその具体的手法についてご紹介しました。自社の強み・弱みを分析し、競合との優位性を把握し、業界の中での位置付けをどう図っていくか。『差別化』『人材育成』『デジタル』をキーワードとした戦略への落とし込みが肝要です。次期戦略策定の一助となりましたら幸いです。