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VUCA【Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語】と呼ばれる昨今の経営状況において企業が貢献価値を発揮し生き残るためには、自社の強みを再認識した上で既存事業の枠に囚われないボーダーレスな新規事業展開や新規顧客開拓が必要となる場合があります。新規事業展開や新規顧客開拓を行う上で欠かせない事前準備の一つとして、市場調査があげられます。本コラムは市場調査についてそのやり方を4つのステップにてご説明し、実際に行う際の注意点もお伝えいたします。市場調査を行う際に、ご参考にいただけますと幸いです。
市場調査のやり方 4STEP
(1)PEST分析
市場調査において最初に取り組むべき分析はPEST分析です。PEST分析とは該当する市場を取り巻く外部環境が、現在もしくは将来的にどのような影響を市場に与えるかを把握・予測するためのフレームワークです。PESTとは「Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)」の4つの頭文字を取ったものであり、「マクロ経済環境」とも呼ばれます。市場調査においてはまず大枠の外部環境(マクロ外部環境)を押さえた上で、より詳細な分析(セミマクロ・ミクロ分析)を行わなければ市場調査の前提条件を見失う可能性があるため、このPEST分析は欠かすことできません。
PEST分析を行う上で必要なステップは以下となります。
①情報を集める
PEST分析を行う上でまず必要となるのが情報の収集です。矢野経済研究所や富士経済研究所等のシンクタンクが発表している資料・各業界団体が発表している資料・政府統計資料・株式会社ユーザベースの経済情報プラットフォーム「SPEEDA」等から情報収集することをオススメいたします。ここでの注意点はあまり深掘りしすぎないことです。PEST分析の目的はあくまでの該当する市場の大枠の外部環境(マクロ外部環境)を押さえることが重要ですので、要点を押さえることに注力しましょう。
②情報を分類する
各コンテンツから収集した情報を「事実」と「解釈」に分類した上で、その情報(状況)が該当市場にとって「機会」なのか「脅威」なのかに分類します。これにより、該当市場にとって現在・将来の外部環境は「追い風」なのか「逆風」なのかを判断することができます。
以上2点のステップでPEST分析を行いましょう。
(2)商流分析
市場調査において2番目に取り組むべき分析は商流分析です。商流分析は「セミマクロ分析」に該当します。
商流とは「自社の商品・サービスの所有権の流れ(取引の流れ)」であり、物流(商品の物的な移動)と対比されることが多くあります。この商流分析は行う理由は、該当業界がどのような商習慣でビジネスを行っているのかを把握するためです。
各業界によって商品(サービス)の所有権の流れや慣習が異なるため、「見える化」することが重要となります。
商流分析を行う上で必要なステップは以下となります。
①該当業界の上流から下流までの一般的な商流(製造業であれば仕入~販売・アフターサービスまで)を把握する
②各商流における主要プレイヤーを押さえる
特に各商流における主要プレイヤーは該当業界における影響度が大きいため、必ず押さえるようにしましょう。
主要プレイヤーについては後述の市場構造分析において詳細をお伝えいたします。
(3)市場構造分析
市場調査において3番目に取り組むべき分析は市場構造分析です。市場構造分析はミクロ分析に該当します。市場構造分析の目的は該当市場の現状・将来予測をPEST分析よりも詳細に行うことです。市場構造分析についてはM.E.ポーター氏が提唱する「5つの競争要因」のフレームワークを活用いたします。「5つの競争要因」とは該当業界を「新規参入業者」・「現在の競争業者」・「代替品」・「供給業者」「買い手」の5つの観点から分析するフレームワークとなります。
この5つの観点で分析する際に必要となるポイントは以下となります。
①新規参入業者分析
新規参入業者分析を行う際は「参入障壁の有無」と「既存業者の反撃」について着目してください。
参入障壁は業界によって観点が異なりますので、分析をした上で最終的には「参入障壁は高いor低い」「参入障壁は○○」とまとめることをオススメいたします。また、既存業者の反撃(対抗施策)も検討して下さい。迎え撃つ体制は整っているのか、または受け入れざるをえないのかは業界によって異なります。
②現在の競争業者分析
この分析はライバル分析となります。ライバル分析においてのポイントはライバルの「強み・弱み」「将来の方向性」について着目して下さい。「ライバルの強み・弱み」については様々なフレームワーク等がありますので分析をし、将来の方向性については上場企業であればIR資料(中期経営計画等)を参考にしてください。
③代替品分析
代替品分析を行う際は、代替品に対して「対抗手段があるのか否か」に着目してください。迎え撃つ体制は整っているのか、または受け入れざるをえないのかは業界によって異なるため詳細な分析を実施してください。
④供給業者分析
供給業者分析を行う際は「供給業者と該当市場プレイヤーどちらの方がパワーバランスが強いのか」について着目してください。このパワーバランスが業界の動向に大きな影響を与える場合があります。
⑤買い手分析
買い手分析を行う際は「買い手と該当市場プレイヤーどちらの方がパワーバランスが強いのか」について着目して下さい。このパワーバランスが業界の動向に大きな影響を与える場合があります。
最終的にはこの5つの競争要因のうち、最も該当業界へのインパクトが大きい要因を整理してください。
(4)市場規模・成長率分析
市場調査において4番目に取り組むべき分析は市場規模・成長率分析です。市場規模・成長率分析はセミマクロ分析に該当します。市場規模・成長率分析の目的は該当市場の現在の市場規模・成長率を定量的に把握することで、自社が進出する余地があるのかを判断することです。
市場によっては各シンクタンクや各業界団体が市場規模・成長率を発表しているケースもありますが、発表されていない場合は自社にて算出する必要があります。自社にて市場規模を算出する場合は、ロジックツリーを用いて市場規模を算出しますが難易度が非常に高いため、経営コンサルティング会社に依頼し実施するケースが非常に多くなってきます。
ロジックツリーを用いた市場規模の算出を行う上で必要なステップは以下となります。
①該当市場の市場規模を数量(販売台数・顧客数等の母数)×顧客単価にて分解する
②数量・顧客単価を(2)の商流分析に基づいて分解する
③分解した各項目の数値を各情報ソースから収集し数値を当てはめ、市場規模を算出する
ここでの注意点はロジックツリーの根拠が正しいかをしっかりとチェックすることです。
ここでのロジックの相違があると市場規模を見誤り、該当市場への進出が頓挫する可能性があります。
実際にロジックツリーを算出した事例を掲載しましたので、ご参考にいただけますと幸いです。
ロジックツリーを用いて市場規模を算出した後は、市場成長率を算出します。
市場成長率を算出する上で必要なステップは以下です。
①ロジックツリーの各項目において変数(将来的に変化する項目)を押さえる
②変数の将来予測を各情報ソースから収集し、数値を掛け合わせる
ここでの注意点は変数の特定を間違えないことです。業界によってどの項目が変数となるのかは異なります。
PEST分析・商流分析・市場構造分析を押さえた上で変数を特定しましょう。
まとめ
以上4点の市場調査のやり方とその注意点をご説明いたしました。市場調査の目的をしっかりと認識した上で、自社へ落とし込みいただけますと幸いです。
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