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新規事業を立ち上げ、成功させることは、ビジネス界における最も挑戦的な試みの一つと言えます。多くの場合、その道のりは困難であり、成功するには努力とリスクを伴います。しかし、その一方で、成功した新規事業は経済や社会に大きな影響を与えることがあります。そこで、今回はいくつかの成功事例を通じて、新規事業の成功について探求してみたいと思います。
新規事業の意義
新しい事業をおこすことは、何世代にもわたり、社会や経済に影響を与える力を持っています。その魅力と意義について考えてみます。
企業において新規事業の意義は自社の競争力の維持/向上です。
まず、新規事業は経済の活性化に不可欠です。新たな企業が市場に参入することで、競争が促進され、消費者にとっては多様な選択肢が生まれます。これは価格競争やサービスの向上を促し、市場全体の活性化につながります。また、新規事業は新しい雇用機会を創出し、地域社会の経済的な発展を支援します。これにより、社会全体の生活水準が向上する可能性が生まれます。
また、新規事業の意義は単なる経済的な側面にとどまらず、イノベーションの推進力としての役割も重要です。新しいアイデアや技術を持つ企業が登場することで、産業全体が革新され、社会に新たな価値がもたらされます。例えば、持続可能なエネルギーや医療技術の進歩など、新規事業は社会の課題に対する解決策を提供する可能性を秘めています。
さらに、新規事業は社会的な意義も持っています。地域社会に根ざした企業が成長することで、地域経済が活性化し、地域住民の生活に直接的な影響を与えます。また、地域の文化や伝統を尊重しながら、新しい価値を生み出すことで、地域社会のアイデンティティを強化する役割も果たします。
しかしながら、新規事業を起こすことは容易なことではありません。リスクや挑戦がつきものですが、その先には大きな成果と意義が待っています。成功するためには、熱意と情熱、そしてビジョンが不可欠です。また、経験豊富なコンサルタントやメンターの助言や支援を受けることも重要です。
新規事業は、単なる利益追求だけでなく、経済、社会、環境の多面的な側面に影響を与える力を持っています。その意義を理解し、挑戦に立ち向かうことで、未来を拓く新たな可能性が広がるでしょう。
それでは、そのような苦労、努力を重ねて新規事業を立ち上げた、企業の事例を見ていきたいと思います。
新規事業の成功事例
(1)株式会社スマイルズ ~無数の新規事業が創出される企業の価値観~
スマイルズは、2000年に三菱商事のコーポレートベンチャー0号として設立以降、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」をはじめ、「PASS THE BATON」「giraffe」「100本のスプーン」「刷毛じょうゆ海苔弁山登り」など、『世の中の体温をあげる』事業を創造してきました。
設立24年を迎えた今でも、既存事業のイノベーションと共に、新たな事業の立ち上げや、外部へのコンサルティング、プロデュースを進めるなど、さまざまなチャレンジを推進するクリエイティブ集団として成長しています。
大企業での新規事業開発によくあるケースとして、①失敗を許されないお題目として取り組んでいる新規事業、②チームメンバーが後ろ向きに進めている新規事業というケースが散見されますが、このようなケースは、失敗できないため誰もやりたがらない、広告頼りでコストばかり増える事業ができてしまう原因となってしまいます。一方で、スマイルズにおいて新規事業は「自分がやりたいこと」が重要視されます。その結果、その事業を率いるメンバーはやらされ仕事ではなく、やりたいからこそ会社としての意義や事業性を後付けでも必死に考えて、実現に向けた行動を行い、粘り強く向き合い続けられます。
上記のように新規事業を生み出せる風土が作りあげられたところでも、同社は満足することなく新たな経験や価値観を取り入れ続けることで、組織・個人に刺激を与え、意識的にできたものを壊して、安定させることなく新たなものを生み出し続けています。
新たな挑戦にはリスクを伴うが、一方で、何もやらないことも将来的なリスクになるということを理解して、自らを自社を陳腐化させないことを重要な価値観として新規事業に取り組み続けています。
(2)ヤマダホールディングス ~「暮らしまるごと」戦略~
ヤマダホールディングスの中核事業であるヤマダデンキは、全国に直営の996店舗(2023年3月末時点)を展開し、2018年には「暮らしまるごと」という戦略を打ち出し、具体的には家電と親和性の高い住宅や家具・インテリア、リフォーム、金融など、衣食住の中の『住』に的を絞り顧客の暮らしを丸ごとサポートできるワンストップソリューションの提供をスタートさせました。
かつては、省エネ家電や地デジテレビが好調となり2010年ごろをピークに家電量販業界は好景気そのものでしたが、その好調は一過性のものであると危機感を抱き当時からピークの先の戦略を描き始めていました。
そうして、導き出された戦略は上記の『住』に的を絞った事業展開でした。
戦略を構想した当初は「暮らしまるごと」戦略は社外に公表していなかったものの、消費者の暮らしを様々な面からサポートするという方向性を定め、新たな事業部を立ち上げたり、M&Aを推進することで少しずつ事業の範囲を拡大していました。
「暮らしまるごと」戦略を打ち出した2018年以降はM&Aの動きを加速させ、住宅事業の強化や、家具・インテリアの品ぞろえを一気に増加させるなど、戦略を着々と形にしていきました。
それとともに、住宅ローンを取り扱うヤマダファイナンスサービスをはじめとして、クレジットカード会社や保証・保険会社、住信SBIネット銀行の設立によって、住宅やリフォームローンなど多彩な金融サービスを展開できる体制を整えてきました。
現在、デンキ、住建、金融、環境、その他という5つのセグメントをもっている同社ですが、「暮らしまるごと」戦略を展開できているのは、コア事業となる家電小売り事業業界最大手という点が大きなアドバンテージとなっています。
今、その軸足となる家電量販店としての認知を拡大するために、新たなコンセプトの店舗としてうまれたのが「LIFE SELECT」です。家電、家具・インテリア、リフォーム、生活雑貨と品ぞろえ豊富な売り場がある新形態の店舗で同社の掲げる「暮らしまるごと」が体験・体感できる店舗として店舗数の増加に取り組んでいます。
それぞれのセグメントでも、ヤマダだからこそできる暮らしの提案としてスマートハウスをはじめとして次世代の暮らしに期待が寄せられています。
まとめ
新規事業の成功のためにはさまざまな成功のためのポイント、失敗しないようにするためのポイントがあるかと思います。
そのため、今回取り上げた事例の中でのポイントを下記の3点にまとめます。
①市場のニーズを正確に把握すること
成功する新規事業を立ち上げるためには、まず市場の成長性、市場のニーズを正確に把握することが不可欠です。
顧客が何を求めているのか、そのニーズを満たすための製品やサービスが何かを理解することが重要です。
②熱意・情熱をもち当事者意識をもったメンバーのけん引
新規事業を成功させるために欠かせないのが「想い」や「情熱」です。
理論や知識などももちろん大切ですが、新規事業を立ち上げる際、必ず困難や問題に直面します。
人が事業を引っ張り上げる以上、情熱をもって最後まで粘り強く新規事業に向き合える人材を育成すること、組織風土の醸成が必要です。
③本業とのシナジー
本業で大きな価値を生んでいる場合、新規事業は本業と関連性がある周辺事業が良いです。
新規事業とはいえ、本業と全く異なった事業に取り組む事はリスクが伴います。本業と近しいほど、今、有している技術やノウハウ、顧客を最大限活用することが出来ます。
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