COLUMN

2022.12.01

構築だけで終わらない
社員が変わる「ミッション」「ビジョン」運用

近年、当たり前のように使われている、「ミッション」と「ビジョン」。まずはこの2つのワードについて、改めてご説明します。

「ミッション」「ビジョン」とは何か

「ミッション」とは

「ミッション」とは、経営理念を構成する一部です。企業によっては、経営理念とミッションは同義とされます。

その企業・組織や所属する社員が、過去・現在・未来のあらゆる場面においても、「社会に対して果たすべき使命」、言い換えれば「社会に対する存在意義」のことを指します。社会に対しての約束とも言えます。細かな行動や業務に対する指示を、上が出さなくても、「ミッション」を価値判断基準として、社員が行動をする組織が理想的です。逐一指示を出さずとも、共通の価値判断基準を有することで、誤った行動を取りにくく、また社員自身が考えて行動をすることで、社員の成長にも繋がります。

創業者が代表として在籍する企業や、トップダウン型の組織では、「ミッション」「ビジョン」ともに、明文化されていないケースもあります。トップ自身が「ミッション」「ビジョン」を頭の中で明確にしており、自身が頭脳として社員を活用しながら、経営を行っているためです。このような状態の場合には、「ミッション」「ビジョン」が無くとも経営が成り立つケースもありますが、やはり企業・組織・社員の価値判断基準の統一の点においては必要となります。

また「ミッション」は「ビジョン」とは違い、頻繁に変わるものではありません。基本的には不変であり常に変わらないものとなります。

「ビジョン」とは

「ビジョン」とは、同じく経営理念を構成する一部です。「会社が将来目指す、理想の姿」であり、今現在の会社の姿より、成長した姿、変革した姿となります。「ミッション」と同じく企業・組織・社員の価値判断基準の統一にとって重要となります。

例えばですが、会社のビジョンとして、営業社員の提案力・サービス力を向上し、現在販売しているメイン商材よりも単価・利益率を高める方向であったとしても、ビジョンが明文化されていない企業では、社員にビジョンが浸透するはずもなく、現在売れ筋の単価が低い商品を薄利多売し、成果は上げているものの会社の目指す姿とは乖離している社員が出てくることもあります。「ビジョン」を明文化することで、このような方向性の乖離を防ぐことにも効果を発揮します。

また採用活動においては、求職者の視点で見ると、会社の向かう方向性を確認した上で入社したいですし、会社の視点で見るとビジョンやミッションを明確に提示することで、ビジョンやミッションに納得して受け入れる人材を採用することにも繋がります。

ビジョンやミッションは、顧客や社員だけではなく、求職者・取引業者など周囲を取り巻く様々な立場の組織・人が、会社を判断する物差しとなります。

またビジョンには「中期ビジョン」「長期ビジョン」があり、中期ビジョンは3~5年で設定、長期ビジョンは3年×3回転の9年、もしくは10年、で設定されることが多く、一度設定して終わりではなく、ビジョンから落とし込まれた単年度方針の達成要因・未達要因を毎期振り返りながら、修正・変更をしていきます。

各社の「ミッション」「ビジョン」活用事例

では、実際に「ミッション」「ビジョン」を活用している企業の事例を3つお伝えします。

事例1

全国展開している建設業のA社では、数年前に2030年に向けた長期ビジョンを構築し、中途採用に活用しています。A社では支店長がメインで各地の採用を実施していますが、ビジョン構築前は、人材紹介会社の紹介する人材が、求めている人材と違う、また採用しても離職率が高いことが課題でした。ビジョン構築後は、人材紹介会社へ、ビジョンを実現する上で必要な人材について、その能力や性格特性を具体的に共有、月次でミーティングを実施し、紹介予定の人材などについてディスカッションを行うことになり、紹介人材がA社の求める人材と合致しただけでなく、採用後の定着率向上にも繋がっています。

事例2

関西で住宅関連の事業を営むB社では、「ミッション」「ビジョン」を理解し、同じベクトルで考え、行動できる人材に絞って採用活動を行った結果、今までは採用できなかったような高学歴の人材や、優秀な人材が採用できるようになっています。

事例3

関西で公共工事をメインとする建築業のC社では、営業しなくとも特定の自治体から、一定量の案件が受注できるため、営業人員は置かず、受け身体質の企業でした。しかし、長期ビジョンを構築するにあたり、外部環境の調査を行ったことで、メイン事業の市場縮小が浮き彫りとなり、今では営業の採用活動にも注力し、社長を中心に、既存のメイン事業以外のチャネル開拓に経営資源を割いています。

事例企業の様に、構築するだけではなく、活用・運用することに意味があります。ミッション・ビジョンを構築して終わり、になっている企業があれば、ぜひ活用・運用をしてください。

「ミッション」「ビジョン」を運用し、実現する3つのポイント

事例でもお示しした通り、「ミッション」「ビジョン」は構築することに意味があるのではなく、活用・運用しなければなりません。「ミッション」「ビジョン」は全社の価値判断基準となり、実行され、実現することに意味があります。
その上で重要な3点についてお伝えします。

(1)「ミッション」「ビジョン」が全社員に浸透していること

そのためには、経営者から経営幹部、経営幹部から管理職、管理職から部下・社員へと伝え、理解を得て、浸透させることが必要です。各階層が「ミッション」「ビジョン」を咀嚼し、わかりやすい言葉で下へ伝えていく必要があります。経営幹部、管理職においても理解度は人それぞれですので、どのような理解をしているかは、上長が実際に確認することが重要です。管理職がハブ機能を果たすために、管理職の育成が必要になる場合もあります。

(2)人事評価制度と紐づけること

企業によっては、「ミッション」「ビジョン」の設定が無い、または甘いまま、人事評価制度の構築・改修を行うことがありますが、このような場合にはうまくいかないケースが見られます。人事評価制度はビジョン実現のために存在するべきであり、人事評価制度で高い評価を得る社員が増えれば、ビジョン実現に近づく、という建て付けになっている必要があります。

(3)バリューの設定

バリューはクレドと呼ばれることもありますが、社員の行動指針です。「ミッション」「ビジョン」を実現するために、具体的なバリューが設定されていること(トヨタ自動車のトヨタウェイや、ジョンソンエンドジョンソンのアワクレド、リーガロイヤルホテルのリーガロイヤルスタンダードなどが有名)が必要です。新入社員が見ても幹部が見ても、同じ解釈となるレベルの具体的バリューの設定が重要です。

今一度、自社の「ミッション」「ビジョン」の実現に向け、できていないことは何か?新たにやるべきことは何か?を考えてみてください。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
チーフマネジャー

石川 一平

大手リフォーム会社の営業部門にて活躍後、経営企画部門で経営全体の幅広い業務経験を積み、当社に入社。現場主義で成果を生み出すコンサルティングを信条とし、企業のビジョン実現を支援。数多くのコンサルティング経験を通じた事例をベースに、クライアント独自の攻めのビジネスモデル創りの推進を得意とする。特に、経営戦略を踏まえての組織全体への展開、現場への落とし込み・徹底を通じた成果を生み出す取り組みで、お客様から高い評価を得ている。また、業界全体の成長・発展に向けた、企業間のご縁づくりにも注力しており、多くの企業間のマッチングを実現している。

石川 一平

ABOUT

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