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企業に欠かせないビジョンステートメント。作成のポイントを解説
「先が見えない」といわれることが多い世の中でも、企業は将来に向かって邁進しなければなりません。そのためにはビジョンを掲げ、全社で共有することが重要です。経営者・従業員・株主・取引先の、共通認識となるようなビジョンステートメントを掲げ、幅広く周知しましょう。
この記事ではビジョンステートメントを作成するときのポイントや事例を解説します。
ビジョンステートメントとは
ビジョンステートメントとは、企業の経営理念を将来を見据えたかたちで文章化したものです。企業の将来像・到達点が表現された言葉といってよいでしょう。
ビジョンステートメントには企業の目標が含まれており、経営者はもとより従業員やステークホルダー(企業の株式保有者)がイメージする共通の未来が描かれています。「目標としてどの方向を目指すか」について明らかにしたロードマップの意味合いもあり、迷うことなくビジョンを達成するための目印となるものです。
ミッションステートメントとの違い
ビジョンステートメントは5年、10年後にどのような企業になりたいかという将来像を文章化したものです。一方、ミッションステートメントはビジョンを達成するためになすべきこと、使命や存在意義を文章化したものです。ミッションステートメントは現在の在り方を定義する言葉でもあります。
どちらの言葉も経営理念を構成する3つの要素、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)にあたるもので、経営の根幹にある重要な概念を表します。
ビジョンステートメントを作成する目的
ビジョンは企業の将来像であり、目的・方向性を示す概念です。「長期的にどのような企業であり続けるか」というステークホルダーとの約束ともいえます。
ビジョンステートメントを設定する目的は、将来の目標を端的な言葉で表現してステークホルダーと共有し、いつでも参照できるようにすることです。ステートメントに触れるだけで自然に望ましい方向へ行動できるような、魅力のある言葉を設定することが重要です。
ビジョンステートメントを作成する4つのポイント
ビジョンステートメントを作成するにあたって、押さえるポイントを解説します。案出しを行う際や候補を絞り込む際に、これらのポイントを念頭におき、的確なステートメントを構成しましょう。
ポイント①実現性があること
ビジョンステートメントは、実現性を感じさせるものである必要があります。まったくの夢物語や単なる理想にならないようにしましょう。
従業員を始めとするステークホルダーが理解し、自分たちにもできる、あるいは自分たちならできると思えるような、リアルなステートメントを作成します。
ポイント②未来思考であること
ビジョンステートメントを作成するときの、未来の捉え方は2つあります。
1つは、自社が社会・業界においてどのような存在になるかという予測を含むものです。2つ目は、自社の未来の状況・環境を想定し、その時点の立場を踏まえて考えるという捉え方です。 例えば売上や従業員数が倍になってから初めて達成可能になる目標もあるでしょう。
未来思考は将来性のあるビジョンステートメント作成につながります。
ポイント③共感と希望が感じられること
ビジョンステートメントは、従業員を始めとするステークホルダーが共感して、希望を感じたり期待を持ったりするような言葉である必要があります。
「共感」はビジョンを「自分ごとにする」ことです。その結果、自身のなかに希望が湧き上がり、課題に対して主体的に向き合えるようになるでしょう。
ポイント④明快であること
ビジョンステートメントは簡潔で分かりやすい文章にする必要があります。例えば、企業サイトや社内報、経営方針説明資料など、さまざまなシーンで参照するのに都合のよい長さに収まっていることが重要です。
補足的な内容はそれぞれの文脈で適宜、追加して膨らませられます。ビジョンステートメントは本質的な言葉だけに絞り込み、冗長な表現にならないような配慮が求められるでしょう。
ビジョンステートメントを作成するステップ
ビジョンステートメントを作成するポイントを理解したところで、実務の手順を確認していきましょう。自社の現状を把握してからステートメントをまとめるまでの5つのステップを紹介します。
手順①創業の動機を確認する
最初に、自社の現在の立ち位置を明確にするための確認作業を行います。
事業を始めた動機はどのようなものだったか、創業時の理念に照らし合わせて明確にしましょう。もっともシンプルな動機を明らかにすれば、事業の本質にアプローチできます。現在の立ち位置は原点からどのように変わったかという点も把握して、方向性を確認します。
手順②ミッション・バリューと一体的に考える
経営理念の構成要素として、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を一体的に検討します。ミッションは成すべきこと、ビジョンは目標や将来の展望、バリューは価値を意味します。
自社の価値を明確にしたうえで、将来像としてのビジョンを考えましょう。ビジョンが明確になれば、ビジョンを達成するための自社や従業員の在り方、成すべきことを定義できます。
手順③ディスカッションを行う
経営者の思いをビジョンステートメントにするだけでは、企業のビジョンとしては不完全です。よいビジョンステートメントを作るためには、経営に関わる従業員の意思を反映させる必要があります。
ビジョンを策定するときは、経営者と各部門の代表者との十分なディスカッションを行うことが重要です。各部門内においても代表者と従業員との意見交換を行いましょう。
手順④ビジョンを書き出す
ディスカッションでは、ビジョンに関わるキーワードを書き出します。ブレインストーミングを通じて、より多くのキーワードを書き出すことが効果的です。
キーワードは、商品・サービスや経営、従業員・採用に関するものなどがあげられます。具体的な対象をイメージしたものを幅広く集めることが重要です。
手順⑤ステートメントにまとめる
納得できるビジョンが書き出せたら、書き出されたキーワードに重み付けをし、重要なものを抽出します。
キーワードはつなぎ合わせたり、分割するなどして分かりやすくするとよいでしょう。最終的に、3つ前後の短いステートメントになるようにまとめます。使用しなかったキーワードは、部門内やチームのビジョンとして利用するとよいでしょう。
キーワードが関連性を持って相互につながれば、ビジョンステートメントの深みも増します。
ビジョンステートメントの事例3選
記事の最後に、ビジョンステートメントの有名な事例を紹介します。巨大企業のビジョンは壮大ですがシンプルにまとまっています。独自の価値と、その企業だからこそいえる内容が含まれている点は参考になるでしょう。
事例①ファーストリテイリング
ユニクロブランドを展開するファーストリテイリングのビジョンステートメントは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」です。またサステナビリティステートメントとして「服のチカラを、社会のチカラに。」という内容を掲げています。
単に服を提供するだけでなく、事業を通じて、世界にパワーやインスピレーションを与えるような使命を含んだステートメントといえるでしょう。
事例②アマゾン・ジャパン
Amazonのビジョンステートメントは「地球上で最もお客様を大切にする企業、そして地球上で最高の雇用主となり、地球上で最も安全な職場を提供すること」です。
Amazonは、顧客を大切にするという理念がよく知られており、理念は各種のサービスに反映されています。理念の面では雇用を生み出すことも同時に宣言し、SDGsを意識した内容といえるでしょう。アウター・インナー双方のブランディングを見据えたビジョンステートメントです。
事例③ソニー
ソニーのビジョンステートメントは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」です。
このビジョンを支える価値観として以下の要素を掲げています。
●夢と好奇心
●多様性
●高潔さと誠実さ
●持続可能性
クリエイティブとテクノロジーを追及して、目標を実現するシンプルな姿勢と、責任ある企業運営を約束しています。
また、世界の人々が感動で満たされるためには安心して暮らせる社会・健全な地球環境が前提であるということも、このビジョンステートメントに織り込まれています。
まとめ
ビジョンステートメントは、企業の経営理念を構成する概念であるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)のうち、ビジョンを文章化したものです。ビジョンステートメントの作成にあたっては、各部門の関係者を含めたディスカッションを重視しましょう。
顧客・従業員を始めとするステークホルダーの共感を得て、希望・期待を得られるステートメントを作成することが重要です。
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