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タナベコンサルティングが2022年12月に実施した企業経営に関するアンケート調査によると、中期経営計画の策定における課題について聞いたところ(アンケート①)、「目標数値を掲げているが具体的な戦略が不足している」が54.4%と圧倒的に多く、次いで「計画・ビジョンを定めているが推進できていない」が34.4%という結果になりました。
【関連ページ】
①企業経営に関するアンケート調査レポート 2023年
https://www.tanabeconsulting.co.jp/vision/document/detail14.html
②中期経営計画検討に役立つメソッド&テンプレート
https://www.tanabeconsulting.co.jp/vision/column/detail70.html
戦略の具体化と実行推進に共通する課題
戦略の具体化が弱く実行推進力が伴わないケースの共通点
戦略の具体化と実行推進のポイントとは?
タナベコンサルティングが2022年12月に実施した企業経営に関するアンケート調査による中期経営計画策定の課題で多かった「戦略の具体化が弱い」、「実行推進力が伴わない」という2つのケースに共通する主な原因は、戦略が総花的になり重点テーマが分散してしまっていることです。
ではどうすれば良いでしょうか。外部・内部の環境分析を踏まえて、わが社が取り得る戦略オプションに展開し、最後に重点テーマの絞り込みが必要です。外部・内部環境分析のフォーマットは、以前、ご紹介したこちらの記事「中期経営計画検討に役立つメソッド&テンプレート」を参照してください。ここでは、自社が取り得る「戦略オプションの展開フォーマット(図1)」及び、これらの戦略オプションを絞り込むための「事業性評価フォーマット(図2)」をご紹介します。
戦略オプションの展開フォーマットは、米経営学者イゴール・アンゾフが提唱した「アンゾフの成長マトリクス」をベースに作成しています。市場軸と商品軸をそれぞれ新規と既存で区分することで戦略を具体化させることができます。4つの戦略パターンをA・B・C・Dと整理することで、戦略のバランスや抜け漏れを確認します。
次に、アンゾフの成長マトリクスで検討した戦略アイデアを事業性評価フォーマットにより絞り込んだあとは、実行できる推進体制を作ることが大切です。実行推進には明確な役割分担と期日の設定も不可欠です。戦略重点テーマ、アクションプラン、担当、期日、PDCAマネジメントがセットになった「アクションプランフォーマット」をご紹介します。
中期経営計画策定でフォーマットを活用するメリット
前述のタナベコンサルティングが2022年12月に実施した企業経営に関するアンケート調査によると、中期経営計画を策定していない企業も少なからず存在します。それらの企業に策定していない理由を聞いたところ(アンケート②)、「今まで策定したことがないため」が40.2%、次いで「策定する組織・メンバ―が社内に存在しないため」が25.0%という結果となりました。
中期経営計画策定においてフォーマットを活用する真の意味は?
中期経営計画策定でフォーマットを活用するメリットは、大きく分けて2つあります。
まず1点目は、中期経営計画策定のステップ(プロセス)を正しく進めることが出来るという点です。仮に、中期経営計画を策定した経験がない企業においても、フォーマットに沿って検討することで、「中期経営計画」の骨子を構築することが可能です。
では、どのようなステップ(プロセス)で中期経営計画を策定すれば良いのでしょうか。タナベコンサルティングでは、戦略策定のプロセス(図3)として、以下の流れを提唱しております。
・ステップ1 「自社の存在価値の明確化」
・ステップ2 「顧客・市場の選定」
・ステップ3 「製品・サービス戦略」
・ステップ4 「組織体制」
・ステップ5 「実行推進」
さて、メリットの2点目は、社内メンバー同士が、同じフォーマットを活用してディスカッションすることで、様々な意見が生まれて、最後は共感・納得が生み出されるなど、中期経営計画策定プロセスを経て、社内に一体感を醸成することができます。この一体感こそが、中期経営計画を実行推進する力の源泉となります。
おすすめのフォーマットを紹介
戦略策定のプロセス 5つのステップで活用できるフォーマット
具体的なフォーマットの事例と活用方法
前述した戦略策定のプロセスを5つのステップ毎で活用できる代表的なフォーマットをご紹介します。
・ステップ1 「自社の存在価値の明確化」のフォーマット
自社の経営理念、行動指針など脈々と受け継がれているエッセンスから自社の存在価値や取り組むべき事業ミッションを明確化します。
・ステップ2 「顧客・市場の選定」のフォーマット
自社の存在価値を発揮できる真の顧客は誰なのか・どのような市場が今後伸びるのか、世の中が求めているものに、自社の強みや持ち味で勝負する勝てる場を発見します。
・ステップ3 「製品・サービス戦略」のフォーマット
顧客や市場を選んだ次のステップは、何を自社の事業の中心にするのかという製品・サービスを検討します。
・ステップ4 「組織体制」のフォーマット
選んだ製品・サービスを実現するための組織体制を考えます。
・ステップ5 「実行推進」のフォーマット
戦略はうまくいかないことの方が多いのですが、中期経営計画を掲げる真骨頂はまさにここからです。計画と実績差分を分析し、対策するマネジメントを事前にセットしておくことでリカバリーを速やかに行います。
中期経営計画を社内に浸透させる方法
中期経営計画を社内に分かりやすく伝えるパワーポイント書式
フォーマットから伝えたいことを抽出して中期経営計画のプレゼン資料としてまとめる
冒頭にお伝えしたように、中期経営計画策定のステップ(プロセス)では、自社の現状や課題・前期の反省点などを整理分析することからはじまり、その対策となる戦略オプションも多岐に渡ることが多くなります。あれもこれもやろうとすると重点テーマが曖昧となり、現在の人員体制では、カバーできない業務量となってしまいます。
そこで、重点テーマを絞り込んだ中期経営計画を策定し、社内・チーム内にこれだけはやり切ってもらいたいことが何かを浸透させることが求められます。お勧めの手法としては、中期経営計画の発表会を開催し、リーダー自らが中期経営計画については熱量を込めてプレゼンテーションを実施します。プレゼンテーションの際に使用する中期経営計画のパワーポイントのフォーマットをご紹介します。パワーポイントの構成は以下のような内容で作成すると良いでしょう。
・経営理念
・中期経営計画のコンセプト
・重点テーマとKGI/KPI
・事業戦略の中身
・数値計画
・戦略ロードマップと部門別アクションプラン
・組織体制
・中計ビジョンの浸透とマネジメント方法
最後に、中期経営計画は、あくまでも長期ビジョンを実現するために策定するものだとご理解ください。10年後の未来を描くなど、ある程度の中長期スパンで、自社がどの分野・領域においてNo.1になれるのかという真剣な問いかけからスタートします。戦略策定の正しいステップ(プロセス)を踏まえた上で、フォーマットを活用すれば貴社にフィットした中期経営計画を形作ることが可能です。
しかしながら、最も肝心なことは、中期経営計画を実現するのは社員ということです。社員が中期経営計画の実現に向けて一体となることです。そのためには、単にフォーマットを埋めるのではなく、これらのフレームワークを活用し、社員同士で議論を展開することが重要です。
本章の内容を整理すると、
①中期経営計画策定で起こり得る課題を解決するポイント
②戦略策定の5つのステップで活用できるフォーマット
③中期経営計画の社内プレゼンテーションに活用できるパワーポイントフォーマット
をご紹介してきました。これらが貴社の中期経営計画策定の参考になれば幸いです。
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