COLUMN

2023.09.13

新規事業計画書の作り方まとめ。適切な作成手順やポイントを解説

事業の成功は計画から始まります。新規事業計画書は、ビジネスの方向性や目標、そして対策を明文化する重要なツールとして位置づけられます。本コラムでは、その作成方法と注意点を詳細に解説してまいります。

事業計画書とは何か

事業計画書は、事業の方向性、目的、方法、資金計画、リスク管理など、事業を進める上での基盤となる情報を一元的にまとめた書類です。これにより、関係者が共通の理解を持ち、経営資源を適切に配置することが可能となります。
事業計画書の主要な要素は以下の通りです。

(1)事業の目的
事業を開始する主要な動機や、中長期で達成したいゴールの明確化します。ここでの目的設定は、事業の方向性を明確にする基石となります。

(2)市場調査
事業が対象とする市場の規模、成長率、顧客ニーズ、競合状況などを詳細に分析をした上で、市場のポテンシャルやリスクを把握するための基本情報を提供します。

(3)戦略とロードマップ
事業の方向性に基づき、具体的な戦略とその実行のためのステップで計画を立てていきます。この部分は、事業の実際の運営に関する詳細なガイダンスを提供します。

(4)財務計画
予想収益、費用、利益率などの金融指標を含む予算の設定が必要です。資本要件、資金調達の戦略、投資回収期間などの情報もここで計画されます。

このように、事業計画書は事業の概要から具体的な実行計画まで、全体のビジョンを具体化するためのガイドラインとなる文書です。

事業計画書とは何か

新規事業における事業計画書の必要性

新規事業を始める際、新規事業計画書の作成は、事業の方向性を明確にするための非常に重要なプロセスです。
以下の観点から新規事業計画書が必要となります。

(1)不確実性の低減
新規事業は多くのリスクを伴います。事業計画書により、市場の動向、顧客のニーズ、競合の動きなどを予測し、それらのリスクを事前に把握・対策することが可能になります。

(2)戦略的意思決定の支援
新規事業では数多くの意思決定が必要となります。事業計画書をもとに、どの市場に参入するか、どの顧客層をターゲットとするか、どの技術を活用するかなど、具体的な戦略やアクションプランを明記することで、大きな方向性を失わずに進めることができます。

(3)組織全体のアライメント
事業計画書を通じて、組織内の各部署やチームが同じ方向を目指すことができます。目的の共有化により、組織全体の生産性や効率の向上が期待できます。

(4)明確なKPIの設定
事業計画書には、事業の目標とそれを達成するためのKPI(Key Performance Indicator)が含まれます。これにより、事業の進捗を定期的にチェックし、適時な改善策を講じることが可能となります。

新規事業計画書の作成におけるポイント

新規事業の構想を考える上で、以下のポイントを事前に整理することで、戦略的かつ実行可能な事業計画の策定が可能となります。

(1)成長市場分析
新規事業の方向性を決定する上で、市場の成長ポテンシャルの分析は欠かせません。市場の成長ドメインや技術の動向、顧客の真のニーズ、そして関連する企業の成功・失敗事例を深掘りすることで、市場における自社の立ち位置や進むべき方向性を明確にします。

(2)経営資源分析
新規事業を支えるためには、経営資源の適切な配置と活用が不可欠です。企業の根幹である経営哲学やイメージ、現行の収益構造や経営資源、そして企業の強みと弱みを詳細に分析することで、事業展開におけるリスクを最小限に抑えつつ、強みを最大限に活かす方向性を見つけ出すことができます。

(3)新規事業オプション・スクリーニング
市場のポテンシャルと経営資源の分析結果を基に、新しい事業のアイディアやオプションを創出します。事業のプロトタイプを複数案想定し、その中から特に有望と思われるものをピックアップすることを目指します。市場性や優位性、収益性、そして実現可能性といった観点で厳選し、数案に絞り込みます。

(4)フィジビリティスタディ
具体的な事業の立ち上げを視野に入れた調査が行われるステップです。机上のデータ分析だけでなく、実際の現地調査や顧客ヒアリング、関連する事業を行っている他企業の調査を通して、事業の実現性や市場での受け入れ可能性を確認します。

新規事業計画書の作成におけるポイント

新規事業計画書の具体的な書き方

各種分析をした上で、新規事業計画書の作成のステップに入ります。以下が新規事業計画書を具体的に作成する上で網羅すべき項目です。

(1)事業戦略
事業の核となるビジョンを定義します。これは事業が目指す方向性を示すものです。そして誰に・何を・どのようにが事業戦略の骨子となります。「誰に」では、具体的なターゲットとそのペルソナを設計し、「なにを」で自社が提供する価値を定義し、「どのように」で提供方法を明確にします。

(2)収益モデル設計
事業の収益性を決定する重要な部分です。どのようなモデルで利益を上げるのか、その構造を詳細に検討します。

(3)4P (マーケティングミックス) 設計
商品、価格、チャネル、プロモーションの4つの要素を総合的に設計します。これは市場での競争力を高めるための重要なステップです。

(4)アライアンス検討
事業拡大や資源の最適化のために、外部の組織との連携は重要な選択肢です。技術的な協力や販売チャネルの共同利用など、さまざまな形のアライアンスが考えられます。

(5)ブランディング検討
新規事業の成功は、ブランドの認知度やイメージに大きく依存します。ローンチ後の早期の収益化を目指すためのブランディング戦略を策定します。

(6)成功条件の整備・撤退基準策定
事業を進める上での要件を、仕入・開発・販売・組織・財務等の観点で定義します。事業が順調に進まない場合のために撤退基準を定義します。この基準をもとに事業の継続について判断をします。

(7)損益計画・投資計画策定
事業の財務健全性を保つための損益計画や投資計画を策定します。ROIやDCF法など、さまざまな方法でのシミュレーションを行い、最適な計画を立てます。

(8)体制検討
新規事業を推進するための体制を検討します。事業の責任者や担当メンバーの選定、チーム構成など、事業を進める上での体制を明確にします。

(9)テストマーケティングの方向性
市場での反応を事前に予測するためのテストマーケティングの方針を決定します。プロトタイプの製作や検証方法の検討を行います。

新規事業計画書の作成は、事業の未来を形作る非常に重要なプロセスです。各項目を慎重に検討し、関係者全員が共通の理解を持ちながら、経営資源を適切に配置することで、事業の成功を実現するための強固な基盤を築くことができます。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

上原 伸也

アパレル製造小売業で販売・店舗マネジメント、大手旅行情報サービス業で営業・マーケティング業務に従事後、当社へ入社。「地域企業を元気にし、地域経済を活性化させる」を信念に、事業戦略構築、新規事業開発、SDGs経営統合を得意分野とし活躍中。顧客の改善活動をワガゴトとして取り組む真摯な姿勢でのコンサルティング展開で、クライアントから高い信頼を得ている。

上原 伸也

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業66
200業種
17,000社以上
   長期ビジョン・中期経営計画に関する無料相談会開催中!