中堅企業が実装すべき財務戦略
~ホールディング経営のタイプ~
- ホールディング経営

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本コラムは、ダイヤモンド社発行の「コーポレートファイナンス戦略」の第3章の抜粋記事です。
ホールディング体制とは、「企業グループを統括する持ち株会社とその傘下に並ぶ複数の事業会社により構成される組織形態」のことを指す。ホールディングス化はあくまで手段であり、目的ではない。同じホールディング組織であったとしても、その目的や組織デザインは企業固有のものとなる。そのため、ホールディングス化で目指すコンセプトを明確にし、それに沿った組織デザインを行うことが重要である。
ここではホールディング経営のタイプとして、目的別に6つのモデルに分けて紹介していく。(図表3-4)
(1)ビッグビジョンを追求する
「ビジョナリーホールディングス」
ビジョナリーホールディングスとは、グループでより大きなビジョンを追求するホールディング組織のことをいう。事業会社は顧客・マーケットと直接の接点を持ち、自社の固有技術を磨き上げることが求められるため、そのビジョンは事業固有のものになりやすい。一方、ホールディング組織で描くビジョンは、事業単体ではなくグループ経営体として目指す姿を描くこととなり、事業会社が持つビジョンよりも壮大になる。その視座は社会全体を見渡すレベルまで高まり、視野も既存ドメインやエリアを超越した広がりを持つ。事業会社単体では描けない〝ビッグビジョン〟を、ホールディングス化によるグループ組織で追求することが、このモデルのコンセプトである。
(2)事業と経営者を育成・輩出する「インキュベーティングホールディングス」
ビジョンを実現するためには、新たな事業を生み出し続けることが必要である。また、事業の数と合わせてグループ内の経営者人材の数を増やしていくことも当然求められる。
このモデルを構築するうえでのポイントは、多くの事業と同時に経営者を輩出するプラットフォームとしてホールディング組織を機能させることである。事業開発機能をホールディングカンパニー内に組成することや、グループ人事制度や教育制度の構築による経営者育成の仕組み化などが具体策として挙げられる。
(3)事業ポートフォリオを再構築する「リビルディングホールディングス」
ホールディング組織は、多くの事業体がポートフォリオを構成することで成長していくモデルであるが、単に事業の数を増やしていくだけでは全体の生産性は高まらない。事業ポートフォリオを常に最適化し続けるためには、自社での事業開発やM&Aによる事業の増加だけではなく、ときには外部への事業譲渡・撤退という決断も必要となる。
(4)垂直統合でバリューチェーンを最大化する「バーティカルホールディングス」
製品やサービスの外注工程を、M&Aやアライアンスの活用によって自社のグループ内に取り込み、事業のバリューチェーンの川上から川下まで一気通貫する形で垂直統合し、付加価値を最大化するモデルである。例えば、川下の小売り企業が川上のメーカーや川中の卸問屋をM&Aで買収し、物流会社とアライアンスを提携して「適品・適時・適量」の流通体制を整えるなど、すべて自社で完結できるようにすることが挙げられる。
(5)イノベーションを共創する「コ・クリエイティブホールディングス」
イノベーションは、既存のものと既存のものを組み合わせて共創(コ・クリエイティブ)することで生まれる。事業レベルでも同様に、事業同士の組み合わせによって新たな技術や商品が生まれ、グループとしてのバリューシナジーが高まっていく。コ・クリエイティブホールディングスとは、ホールディングスを触媒として、共創によるイノベーションを創出する仕組みを構築するモデルである。
(6)事業承継を機に進化する「サクセッショナルホールディングス」
会社を継いだ後継経営者が、祖業の重みと強みを守りながらもそれを進化させるフレームとして、ホールディング組織を活用するモデルである。
ホールディング経営における重要なコンセプトとして「不易流行」が挙げられる。これは、創業者の哲学に近い経営理念という思想を不変のものとして受け継ぎながら、次代の経営者は新たなビジネスモデルを打ち出して革新していくという考え方であり、企業が長期的に存続する条件である。
不易流行は、「変えてはいけないもの」と「変えなければならないもの」という対極を同時に追い求める矛盾した構造にある。この矛盾を昇華することがホールディング経営の重要なコンセプトになる。理念という「不易」の価値判断基準をホールディングカンパニーが承継し、変化する顧客価値に柔軟に対応するという「流行」の領域を事業会社が受け持つ構造である。
事業承継という大きなイベントを機にホールディングス化し、不易流行体制を構築することにより、新たな企業価値の創造に挑戦する経営スタイルといえる。仮に、引き継いだ事業がレガシー事業であったとしても、新たな事業や企業と組み合わせてブランドを刷新し、オンリーワンの価値を追求することも可能となる。
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