COLUMN

2026.09.30

生産管理の効率化はどう進める?
事例から読み解く、2つの課題と解決策

生産管理の効率化は工場だけでは完結しません。
2つの課題と解決策を、製販連携の事例から読み解きます。

目次

閉じる

生産管理の効率化はどう進める?事例から読み解く、2つの課題と解決策

「生産管理の効率化」という言葉の危うさ

(1)生産管理とは

「生産管理を効率化したい」というご相談をいただくとき、その本質は生産現場だけの話ではないケースがほとんどです。生産管理とは、販売から生産、そして出荷に至る情報とモノの流れを統制する機能であり、工程の一部を切り取って改善しても、川上・川下との接続が崩れていれば効率化は実現しません。実際に多くの製造業で起きているのは、「生産計画そのものの精度が低い」という問題ではなく、「生産計画に必要な情報が、必要なタイミングで、必要な精度で届いていない」という情報連携の断絶です。

(2)筆者の経験から

筆者自身、前職であるメーカーの工場に勤務していた時代に生産管理・原価管理を担当していましたが、当時痛感したのも同じことでした。工場の中でどれだけ計画精度を上げようとしても、営業からの受注情報や販売計画が的確に届かなければ、計画は最初から前提が崩れた状態でスタートしてしまうのです。この断絶は、システムとヒトという2つの側面に分けて捉える必要があります。片方だけを改善しても、もう片方が追いつかなければ、効率化は長続きしません。そしてこの課題を突き詰めていくと、生産管理は工場の中だけで完結させるものではなく、営業・開発・生産を含めた全社の取り組みとして初めて、より高いステージに引き上げられるものだと見えてきます。

見えてくる2つの課題

見えてくる2つの課題

(1)システムの分断

多くの製造業では、販売管理・生産管理・在庫管理・出荷管理がそれぞれ個別のシステムやExcelで運用され、データ連携が手作業に依存しています。受注情報が生産管理システムに反映されるまでにタイムラグがあり、その間に需要変動が起きれば、生産計画は前提が崩れた状態からの再調整を強いられます。

さらに厄介なのは、システムが分断されていること自体よりも、「どのシステムのどのデータが正なのか」というマスターの一元化ができていないケースです。品目コード、単位、リードタイムの定義が部門ごとに微妙に異なり、同じ製品でも部署によって在庫数量の解釈がずれる。これでは、いくら生産管理システムを導入しても、投入データの精度が低ければ、出てくる計画も精度が低くなってしまいます。

(2)ヒトの介在による情報の劣化

システムが仮に統合されていたとしても、実際の意思決定は人が介在します。営業が受けた「特急対応してほしい」という一言が、正式な受注情報として生産管理側に伝わるまでに、口頭連絡やメール、あるいは属人的なExcel管理を経由して劣化することは珍しくありません。特に、営業・生産・購買それぞれが「自部門の都合」を優先して情報を発信すると、全体最適ではなく部分最適の連鎖が生まれてしまいます。

事例紹介:営業の個別最適から、全社最適・工場全体最適への転換

事例紹介:営業の個別最適から、全社最適・工場全体最適への転換

筆者がコンサルティングを行った事例では、ある精密機械メーカーA社では、まさにこの「部分最適の連鎖」が起きていました。A社は約10名の営業担当者を抱えており、それぞれが個々の商談・引き合いに対して、工場と直接やり取りをして納期や見積を確定させる進め方を取っていました。

一見スピーディーに見えるこの体制には、大きな落とし穴がありました。営業本部としての関与が希薄なため、複数の案件が同時に舞い込んだ際、単品では生産可能でも全部同時にはこなせない、といった場面で優先順位付けができなかったのです。営業担当者ごとに「自分の案件を通したい」という力学が働き、工場の稼働状況や負荷状況が全社で共有されないまま、個別最適の受注判断が積み重なっていきました。結果として、どの商品群に生産リソースを振り向けるべきか、逆に生産に余裕がある商品群に対してどう販売をテコ入れすべきか、といった全社的な打ち手にはつながりにくい状態になっていたのです。

そこで私たちがご支援したのは、営業から生産への伝達ルートを一本化することでした。具体的には、営業担当者が個々に工場と折衝する従来のやり方を改め、「製販連携会議」という会議体を新たに設け、案件審査の状況や見込み案件の情報、工場の稼働状況を定期的に全社で共有する仕組みを構築しました。これにより、個々の営業担当者の思惑ではなく、全社の事業計画・工場全体の負荷状況を踏まえたうえで、どの案件を優先し、どの領域に生産リソースを配分するかを組織として判断できる体制へと変わっていきました。

この事例が示しているのは、生産管理の効率化とは工場内の改善だけでは完結しないということです。営業が持つ情報を、工場だけでなく全社で活用できる形に変えて初めて、生産管理は「言われたものを作る機能」から「全社の事業戦略を実行する機能」へと一段高いステージに進化できるのです。

事例から導かれる2つの解決策

事例から導かれる2つの解決策

(1)情報の「一気通貫」を設計する

まず取り組むべきは、販売・生産・出荷にまたがる情報の流れを可視化し、どこで断絶・遅延・重複が発生しているかを特定することです。そのうえで、S&OP(Sales and Operations Planning)のような、需要と供給を統合的にすり合わせる仕組みを、企業規模に応じた形で構築します。大掛かりなシステム統合が難しい場合でも、需要情報・在庫情報・生産進捗情報を共通のデータ基盤(クラウドDB、BIツールなど)に集約し、各部門がリアルタイムに同じ数字を見られる状態を作るだけでも効果は大きいものです。

重要なのは、「システムを入れること」がゴールではなく、「意思決定に必要な情報が、必要な人に、必要なタイミングで届く状態」を設計することです。ツール導入は、あくまでその手段の一つに過ぎません。

(2)組織とルールでヒトの連携を支える

システムを整えても、それを使う人・組織の運用ルールが伴わなければ機能しません。A社の事例のように、営業が受注情報を正式なフォーマットとタイミングで生産管理に連携する、生産管理が変更内容を関係部門に即座にフィードバックするといった、部門をまたいだ業務ルールの明文化が欠かせません。

同時に、属人化した判断基準をできる限り言語化・標準化し、若手や他部署のメンバーでも一定レベルの需給調整ができる体制を整えることが、中長期的な組織力の底上げにつながります。

まとめ:生産管理は工場だけのものではない

今回ご紹介したA社の事例が示す通り、生産管理を一段高いステージに引き上げるカギは、工場の中だけでなく、営業を含めた全社の情報連携にあります。最後に、皆さまの会社に向けて3つの問いを投げかけたいと思います。

(1)あなたの会社の営業担当者は、工場全体の稼働状況・負荷状況を踏まえたうえで、個々の商談を進めていますか?

(2)受注情報や見込み案件の情報は、特定の担当者や部門にとどまらず、全社で共有・活用できる仕組みになっていますか?

(3)あなたの会社の生産管理は「言われたものを作る」機能にとどまらず、全社の事業戦略を実行する機能として位置づけられていますか?

一つでも「できていない」と感じた項目があれば、そこに生産管理を一段高いステージへ引き上げる伸びしろがあるということです。目先のツール導入や部分最適な改善に飛びつく前に、自社の情報とモノの流れがどこで途切れているのかを、今一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。

【関連サービス】
製造業における技術・設備・DXの課題
製造業・工場DXコンサルティング

著者

タナベコンサルティング
インダストリー&ドメインコンサルティング
ゼネラルパートナー

田崎 修平

大手酒造メーカーで17年間、工場での製造管理・業務効率化、本社での生産管理・原価管理・事業計画策定など幅広い業務に従事し、当社に入社。DXを取り入れながら、現場やバックオフィスの生産性向上を手掛けている。企業の最前線で働く人の気持ちに寄り添い、現場主義で粘り強く課題と向き合い、クライアントとともに解決に当たるコンサルティングが支持されている。

田崎 修平

WEBINAR

一覧ページへ

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
69年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
22,100社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業69年
約200業種
22,100社以上